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💾 ハルクウーべン奇譚:レンデゴイル夜話(8)再会

* 第8話 *
再会

「ここからが旧市街だ。古都らしい街並になるぞ」

アーレクに言われるまでもなく、フロスガルは驚いていた。どの家の屋根からも大きな樹木が生えている。それは屋根に根を張っているのではない。屋根を突き抜けて幹と枝を伸ばしているのだ。樹の生えた家の並ぶ街路。南方慣れしているフロスガルですら、今まで見た事のない光景である。家々の煙突からは細い煙が上がっている。空を見上げれば、太陽はすでに傾きつつあるようだ。

「まったく凄いな。〈緑壁〉といい、レンデゴイルでは、生きている樹木を建物と混ぜ合わせているのか。よくも樹木に潰されないものだ」

「調和、と言ってもらいたいな、フロスガル。いかにも我らの家は、生(き)のままの樹木と共にある。だが、想像通り、これには大変な労力を伴うのだ。樹木の成長とともに、家もまたそのつど修繕せねばならない。家も樹木と共に成長し、姿を変えてゆく。〈家の樹〉が歳経るほどに、家も大きく、また立派になる、というわけだ。長きに渡って栄える家では〈家の樹〉を分け、新たな家を建てたりもする。外辺部の家には、旧家からの分家も多いぞ」

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