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発音力の鍛え方 #3 『リンキング』を追求しない

これまで、『発音力向上』について、「1. よい発音ってつまり何?」と、「2. 日本語スピーカーにありがちな発音の課題」について取り上げました。

今回の Part 3 では、英語の発音レベルアップに取り組んでいる人の間でよく聞かれる「リンキング」や「リエゾン」について取り上げます。

結論から言ってしまうと、これ、練習すると発音をかえって悪くしてしまう場合があるので、あんまりオススメできないのです。
リンキングはあくまでも「正しい発音をすると勝手に起こるもの」であり、「意識的にやると失敗しちゃうかも…」&「じゃどうすれば?」というのが今回の内容になります!

「リンキング」とは?

英語の会話では、前の単語のおしりと次の単語の頭の音が溶け合って(=リンクして)聞こえることがよくあります。
「リンキング」とは、この現象を元に、「じゃあ、あえてそれを実行するようにすれば発音よく聞こえるんじゃない?」というコンセプトを形にして、あえて言葉の境目をリンクさせて発音するようにするテクニックの事を指します。

例えば「cup of tea」だったら「カッパティー」、「get up」だったら「ゲラップ」、「give me」だったら「ギミー」といった感じにする、ということですね。

このテクニック、ある程度は実際に役に立つし、これによって本当に発音がよく聞こえるケースもたくさんあります。
ただし、これによって逆に発音が悪くなるケースもあり、英語スピーカーから「ずいぶん癖の強い発音の人だな」と思われてしまったり、逆に理解してもらえなくなったりすることも…。

なぜそうなってしまうかというと、ネイティブスピーカーの場合、リンキングは意図的にするものではなく自然に起こること。
この『自然に起こる範囲』を越えてしまうと、リンキングは逆に違和感を生み出してしまう、ということなんです。

日本語でも、超だらしなく発音すると「ありがとうございます」 → 「あぁ〜す」、「お願いしまーす」 → 「おなぁ〜す」みたいな発音になりますよね。
でも、最初から「あーす」「おなーす(またはおなしゃーす)」と発音しに行くと、やっぱりちょっと違う発音になり、日本語ネイティブはそれをちゃんと聞き取ることができます。

英語スピーカーにとってのリンキングもこれと同じ感じ、ということですね。

なお、英語でも訛りによってリンキングのパターンや度合いは様々で、すごくリンキングが多い話し方の人と、リンキングが少なく単語を切り離しがちに発音する人まで、幅広くいろいろなスタイルが存在します。

「意図的なリンキング」と「自然に起こるリンキング」の違い

さて、「リンキングは自然に起こりますよ」と言われても「え そんなこと言われても」ですよね。
おっしゃる通り「え」だとは思うんですけれども、実は、日本語スピーカーでもほとんどの方が、意識せず自然なリンキングは起こせているケースが多いです。

例えば「Yes, I am」…これをできるだけ早く音読してみてください。

「イエス・アイ・アム」よりは「イエサィアム」に近く聞こえる発音になりませんか?
これが自然に起こるリンキングで、ほとんどの日本語スピーカーが、意識せずもうできているものになります。

次にこれを「イエサィアム」と意図的にリンクして発音してみましょう。
気づかない程度かもしれませんが、さっきとは何か、音の出し方が微妙に違いませんか?

これが自然なリンクと意図的なリンクの差で、まあ「Yes I am」程度の短い文ならさほど大きな違いはありませんが、文章の長さや単語同士の相性などによって、この小さい差が目立ってくるケースが多く見られます。

ついでに、「s → a だからここでリンキング!」なんていちいちやっていたら、ただでさえ高い話すハードルも、考えずに話す時に比べてより高くなってしまう。
人と会話するのに、会話の内容以外に考えなくちゃいけないことは少ない方がいいので、そういう余計なことは考えないですむのが一番。

また、これはしょうがないと思うんですが、リンキングを意識しながら話すとリンク部分を強調してしまうことが多く、結果としてちょっと粘着質な話し方になっちゃうことが多いです。
無理に日本語で表現するなら「先週ゥ〜家族とおォ〜キャンプにいィ行きましてえェ〜」っぽい感じに聞こえちゃう、というか。

別にそれでいいよ、という方はそれでいいのですが、純粋に「発音をよくしたい!」と思っている方は、リンキングに力を入れすぎるリスクを意識しておくとよりよいかと。
英語を口にして、「あ、自分、自然とリンク起こるようになってるじゃん!」って思う、そんな方向を目指して方向転換していきましょう。

自然に起こるリンキングへの近道

自然に起こるリンキングへの近道、それはとにかく英語の各『音』の『正しい舌と口の動き、位置をマスターすること』です。

そして、ここで最も、とっても、何よりも重要なのが、これが「動きや位置をマスターする」ことであって「正しい音を出す」ことではない、というポイント!!

これがどういうことか、『ハンドバッグ handbag』という単語を例にとって見てみましょう。

この単語のリンキングポイントは真ん中の d。
子音ー子音タイプのリンキングによりこれが融合して、『はん(d)ばっぐ』と、d の存在感が極端に薄くなります。

ただ、存在感が薄いからといって d を完全無視して、d の分の舌の動きを全くゼロにしてしまうと、もうこれは同じ音には聞こえないです。

ちゃんと d を音にする必要は全くなく、実際ほぼ誰も出さないんですが、でも『はんばっぐ』と『はん(d)ばっぐ』はやっぱり違うのです。
たぶん、これは皆さんもマスターするとちゃんと違って聞こえるようになると思うので、それまではとりあえず「へー、違って聞こえるんだ」と思っておいて、音は出さなくていいので、舌だけ一応動かしときましょう。

特にイギリス英語だとこの「気持の上では言ってるかもしれないけど音出てない」現象は非常によく見られます(『a cat and a dog』なら『a ca(t) an(d) a do(g)』のように()の音がなくなって、代わりに間が入る)。
ちなみにこれは glottal sound と言われるものなので、興味ある方は調べてみてください。

もちろん、リンキングは子音ー子音以外にも色々パターンがあるし、glottal sound  以外の要因も山程あるんですが、大事なのは『音は出てなくていいから、舌を口はとりあえず動かしとく』こと。
これをきちんとやると、リンキングはしたくなくても勝手にしちゃうくらい、自然に起こるようになります。

最初はゆーーーーっくりで全く問題ないので、単語の音の確認 → 用例を文として読んでみる、これを繰り返しているうちに、語彙力もつき、「この単語は発音知ってる」というものが増えていきます。

最初は大変に感じられるかもしれませんが、ある程度基礎力がつくまでは興味のあるもの(4 コマ漫画とかで OK)を使って、とにかく「嫌いにならない、興味を持ち続ける」を優先しながら楽しく英語に触れ続けてみましょう。
そのうち、いつの間にか「あれ?前よりわかるようになってきてる気がする」って思える瞬間がきますよ!

ではそんな瞬間を目指して、happy learning, everyone :)

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