絵本賞落選　その２「ただいま」

昨年某出版社のかいだん絵本に応募して落選したもの。
子どもがこわいと感じることと、親にとっての怖いこと
両方の目で描いた。

「ただいま」

ただいま。
ママ、いないの？
ママ、どこ？おなかすいたよ。
はやくかえってきてよ。

あ、ママおかえり。
ねえママ、なにおこってるの？
ぼく、わるいこ？
ごはんはまだ？おへんじして！

あ、パパおかえり。
ママとなにおはなしてるの？
ママにおこってるの？
ねえ、けんかしないで！

パパとママ、くるまでどこいくの？
ぼくをおいてかないで！
こうえん？
よるはあそんじゃいけないんだよ。

おはようママ。そふぁーでねてたの？
ちゃんとおふとんでねなさいって
ママいつもいうのに。パパはどこ？

ママ、きゅうにおもいついたみたいに
ぼくのおさらにぼくのすきなもののせて、
おうちとびだして、はしってどこにいくの？
おいてかないで！まってよママ！

ねえママ、そこはいけないとこでしょ？
さくがこわれてるからだめって。
ママ、さくにのぼっちゃあぶないよ！

ねえ、ママ、なにさけんでるの？
なにみつけたの？
ママがないてだっこしてるの、
それだれ？
それ……ぼく……な、の？

いま、ぼくやっとわかった。
ママがぼくをよぶこえ、ママのめからぼくにこぼれるなみだ、
ぼくをだきしめるママのむね、あったかくてきもちいい。
ママがぼくをみつけてくれたんだね。

ぼく、からだがふわふわういてきた。
ママがしたのほうにみえる。
うえのほうはきらきらひかってる。
ぼく、てんごくにいくんだね。
ママをおいていってごめんね。

パパがきてママをだきしめたね。
よかった。なかよくしてね。
ママ、いつかきっと
またママのところにくるから。
ママをなかせたりしない、いいこになって。
ただいまっていうから。
ママはおかえりっていって、
ぼくのだいすきなごはんつくってね。