まちへ

うそとオトナの責任

さて、困ったもんです。

自分が自由に使えるお金を稼ぎたくてバイトした高校生の
うそと経営者として、そしてオトナとしての責任の天秤が……

一般家庭の子どもだって、
バイトで稼いだ給料を全額親に預けるなんて稀でしょう?
わけあって全額家に入れる子もなかにはいるのでしょうが……

児童養護施設ではバイトは担当の職員に申請して
お給料は全額手渡さなければならない。
それはその子の口座に入れるなどして管理され、
進学の時や退所した後の生活費や、何か必要の時に戻される。
施設では各自にお小遣いが渡されるので
多額のお金を持ってる子、持ってない子の差が生まれたり
まして盗難などのトラブルが起きてはいけないから。

それを知ったのは施設の子がバイトに来るようになって
何年も過ぎてから。
歴代何人もの子がバイトに来たけれど、
どの子がちゃんと決まりを守っていたのか、
そうでなかったのかはわからない。
だれもそんなこと言わなかったし、施設の人公認と思っていた。

ただ、みんな元気によく働いたし、来店するお客様や
地元の人たちからもよくやっているねと声をかけられた。
地元のイベントではゆかたの着付けをしてもらったり
プロモーションのためのモデルにしてもらったり、
地域社会の中で活躍の場を与えることは
いいことだと信じてきた。

先日のお祭り営業の時には施設から3人の女子高校生が来て働いてくれ、
バイト代は最低賃金にほんの少し色を付けた額を手渡した。
それを、食事だけ出してお手伝いをしてくれたということにしてほしい。
そう彼女たちに言われた。
学校に行けば普通の女子高校生の付き合いがある。
おしゃれもしたいし、一緒に遊ぶだけのお金が欲しいのだ。

施設に内緒に来ているのはどうかと思うけれど
一日二日働いて得た額ならそんなにたいしたことはないから
まあ、しょうがないかと思っていたら、
今日、施設から問い合わせがあった。
給料は支払ったのかと。
その問いに対し、
経営者の責任としてうそをつきたくない気持ちと、
彼女たちと口裏を合わせてやりたい気持ちと
揺れて、結局、お小遣い程度あげたと、半額位を
伝えてしまった。微妙なうそ……

施設の職員の中には面識がある人もあり、
これまで、バイトさせたい子の依頼を受けたこともあった。
しかし、正式に施設から紹介されてきた子は
すぐに辞めてしまう。
働く体験が必要と思われる子は自ら飛び込んでくる子とは違う。

施設に内緒で、しかもうそをついてでもお金を稼ぎたい子は
エネルギーがある。

店にとってはイベントでは欠かすことのできない
貴重な働き手であり、
地域社会への参加は彼女たちにとっても貴重な体験だ。

本当は本人たちが施設にもきちんと伝えてきてほしい。

しかし、自由になるお金がエネルギー源の大部分を占めるなら
そうはいかないのかもしれない。

私がオトナの責任と言っても、
そもそも、彼女たちの親がそれを示せていない。
それが根本にあって施設に入っている子がほとんどなのだ。

昨夜TVで『万引き家族』を観て
そして、これまで施設からバイトに来ていた子どもたちを思い、
なんだかとても重い、やるせない気持ちになった。

けれども、子どもたちの生きるエネルギーを信じる。
多少のうそはついても……


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