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かすかべ思春期食堂~おむすびの隠し味~【連載終了】

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『かすかべ思春期食堂~女剣士ミズキの旅~』の続編です。 ハルの下宿の住人、みちるとありさ、姉妹の現実のお話とハルの過去がからみます。
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2017年5月の記事一覧

かすかべ思春期食堂~おむすびの隠し味~目次

【Page1】一、ありさの家出 ① 【Page2】一、ありさの家出 ② 【Page3】一、ありさの家出 ③ 【Page4】一、ありさの家出 ④ 【Page5】一、ありさの家出 ⑤ 【Page6】一、ありさの家出 ⑥ 【Page7】二、ハルと学校 ① 【Page8】二、ハルと学校 ② 【Page9】二、ハルと学校 ③ 【Page10】二、ハルと学校 ④ 【Page11】二、ハルと学校 ⑤ 【Page12】二、ハルと学校 ⑥ 【Page13】三、奥多摩で 

かすかべ思春期食堂~おむすびの隠し味~【Page7】

    前ページへ    目次へ 二、ハルと学校 ①  その朝ミズキは急いで青梅の家に戻りました。  ありさと再会すると、無事な様子にほっとする一方で、ありさにはもう少し時間をかけてここで心を回復してほしいと感じ、両親に相談すると、昨晩のありさの様子を目のあたりにした二人もミズキと同じことを思っていたのでした。 「ありさちゃん、足のけがの容態も経過を見ないといけないから、しばらくうちに泊まってくれないか?」とミズキの父。 「え?いいんですか?でも迷惑じゃ……」 「

かすかべ思春期食堂~おむすびの隠し味~【Page8】

        前ページへ    目次へ 二、ハルと学校 ②  校舎の廊下に下校する生徒や部活に向かうジャージ姿の生徒の声がにぎやかに聞こえてくる中、ようやく受付に男性教師らしい人が姿を現しました。  この人がありさの担任なのかな?と会釈をするハルに 「ご苦労様です。教務担当の石川です。1年D組の藤崎ありささん、本日欠席ですね。今日は退学されたいというご相談ですか?」 (もう……ちゃんと伝わってない!)  ハルはいらだちを極力抑えなくてはと思い、ゆっくりと言葉を選

かすかべ思春期食堂~おむすびの隠し味~【Page9】

     前ページへ   目次へ 二、ハルと学校 ③ (ああ、また自己紹介からしなくちゃいけないのか……)  ハルは学年主任の豊田に会釈してから 「あの、私は……」と言いかけたとき 「すみません、今日のお話は録音させてもらっていいですか?」  豊田はボイスレコーダーをテーブルに置きました。 「本来は二人以上でお話を聞くのが決まりなのですが、今日はあいにく皆部活や出張に出払っていて、担任もいないことですし、行き違いや間違いがあってはいけないので。まずお名前からお話

かすかべ思春期食堂~おむすびの隠し味~【Page10】

        前ページへ   目次へ 二、ハルと学校 ④  ハルが学校を出ると、部活を終えて下校する生徒たちがニ、三人ずつ連れ立ってしゃべりながら歩いていました。日暮れの早い晩秋、自転車もライトをつけてハルの横を通り過ぎていきます。ヒュ~ッと冷たい風が校庭わきの樹木の葉をかさかさ鳴らし、ハルの首を撫でていったとき、ハルは目が覚めたような気がしました。 「いけない、こんな時間になっちゃった。夕飯の支度してないのに」  それからは急いで帰ることしか考えられませんでした。

かすかべ思春期食堂~おむすびの隠し味~【Page11】

    前ページへ    目次へ 二、ハルと学校 ⑤ 「あら、いらっしゃい、須藤さん。みちるちゃんの就職先のお世話をいただいたそうで、ありがとうございます。さ、上がってください。そうだ、須藤さん、夕飯は?おむすびでよかったらありますけど」 「ありがとうございます。でも、すましてきましたから」 「じゃあ、リビングでお茶でも。みちるちゃんといっしょに」 「あの、玉置さん、みちるとありさが本当にお世話になっています」と頭を下げる須藤に 「あら、お世話だなんてとんでもない

かすかべ思春期食堂~おむすびの隠し味~【Page12】

   前ページへ    目次へ 二、ハルと学校 ⑥  須藤を玄関で見送ったハルは、涙をぬぐって赤い目をしたみちるの肩に手を置いて言いました。 「ちゃんと見ていてくれる人がいるって、ありがたいね」  みちるは、また泣き出しそうになりながらうんうんとうなずきました。 「面接がすんだらいっしょに奥多摩のありさに会いに行こうか?それまではね、ミズキちゃんのご両親にお任せしようよ。なあに、一週間や二週間休んだってどうってことないよ。うちには何年も休んだつわものがいるんだから。

かすかべ思春期食堂~おむすびの隠し味~【Page13】

    前ページへ    目次へ 三、奥多摩で ①  その日の朝、青梅のミズキの家の食卓で 「あの、お母さん、今日私、学校休みます。お父さんもお母さんも仕事で忙しいでしょ?ありささん、一人になっちゃうから……」そう言うミズキにありさが慌てて片手を振りながら 「ミズキちゃん、あたしは大丈夫だから。ほんと、ほんと。学校行って!」  陽子は 「今、インフルエンザの予防接種でたくさん来るから、ここに一緒にいてあげられないけど、お昼は一緒に食べられるし、診療所は目の前だし、

かすかべ思春期食堂~おむすびの隠し味【Page14】

           前ページへ     目次へ 三、奥多摩で ②  夕方、ミズキは息を切らして帰宅しました。 「ありささん、ただいま~!ありささ~ん!」 部屋に行っても、リビングにもどこにも家の中にありさはいません。 (えっ?まさか……やっぱり、家にいればよかった) 外に出て近くをうろうろしましたが、思い直し、家から内線で診療所に電話しました。 「あの、あの、ありささんがいないんです!」  電話に出た陽子は 「ああ、こっちにいるわよ。お手伝いしてくれてね。

かすかべ思春期食堂~おむすびの隠し味~【Page15】

    前ページへ   目次へ 三、奥多摩で ③  いつもより少し遅めの4人揃っての夕食は、昼に陽子とありさが作っておいたカレーでした。食べながら陽子は 「ありさちゃんね、手際がいいのよ。助かっちゃった。それだけでなくね、今日は午前中も午後も患者さんたくさんだったから待合室が混んでいたんだけど、ありさちゃんが小さい子の相手やお年寄りのお世話をしてくれて、ほんと助かったの。ありさちゃん子どもあやすのも上手。保育士さんになったらいいんじゃない?」 「あたし、子ども好きなん

かすかべ思春期食堂~おむすびの隠し味~【Page16】

   前ページへ    目次へ 三、奥多摩で ④  ありさはミズキが学校に行っている間は診療所の待合室でお年寄りや小さな子の世話をし、合間に家事を手伝い、ミズキの帰宅後は一緒に過ごす生活、スマホはほとんど見ない生活に心地よさを感じていました。  木曜日の午後はミズキの両親と一緒に大きな総合病院に行き、ミズキの父が何かの会合に参加している間、心療内科の八木原先生に会い、近況などの話をしました。それが終わって、病院のフロアの椅子に腰かけて、今度は陽子が八木原先生に呼ばれて話

かすかべ思春期食堂~おむすびの隠し味~【Page17】

   前ページへ    目次へ 三、奥多摩で ⑤  ありさが心療内科を訪れていた日の夕方、春日部のハルの下宿では月に一度の「くらやみ鍋」の準備をしていました。何種類かの野菜の入ったコンテナを見て考えている様子の長島にハルは 「長島君、今日の鍋は何?」 「あ~、農家さんからもらった里芋でいも煮をしようと思ってるんですけど、何味がいいですかね。味噌もいいけど、しょうゆもいいし、たまには塩味なんていうのもいいかと……」 「ふ~ん、肉が豚なら味噌はいいね。牛ならしょうゆかな

かすかべ思春期食堂~おむすびの隠し味~【Page18】

   前ページへ    目次へ 三、奥多摩で ⑥  ゆいは言葉を選びながら、断片的に話していきます。 「あ、あたしもほんとはここに戻ってBBQ食べるって思ってたんですけど……途中でしおりが松田にLINEしてて……あ、松田ってクラスの男子ですけど……来るって返信が来て……クラスが違う男子が一緒に来るって……ありさを紹介してっていう男子で……それからミズキちゃんが別行動になって……ありさは来たけど、松田たちに会ったらすぐ……ミズキちゃんが心配だから帰るって……松田たちとしお

かすかべ思春期食堂~おむすびの隠し味~【Page19】

    前ページへ   目次へ 三、奥多摩で ⓻  金曜日の朝食の時、陽子が 「昨日、春日部のハルさんから電話があって、ありさちゃんの姉のみちるちゃんも就職が決まってやっと落ち着いたからそちらに伺いたいけど、日曜はどうですかっていうから、もちろんお待ちしてます!って伝えておいたわよ。ぜひ昼ごはんまでに来てくださいって言っておいたの。お祝いの食事、何がいいかしら」 「そんな、お姉ちゃんのお祝いなんて……気を遣わないでください」  姉と喧嘩して家を飛び出して以来、電話も