札幌岳でのんびりスキー登山
ムズムズする鼻と止まらないくしゃみの季節がやって参りました。関東の春は桜こそ綺麗ですが、スギ花粉の飛散には毎年遺憾の意を表明せざるをえません。
さて関東はすっかり春ですが、亜寒帯気候である北海道という土地ではどうやらまだ雪が降っているようでしたのでそれなら、と友人と2人で登山をして参りました。
この度登ったのは札幌岳。標高1293m。札幌市内に位置し、定山渓温泉・豊平峡温泉の近くです。
今回は雪上歩行の道具としてスキー板を使いました。雪が深い場合、靴だけでは深く沈んでしまうため歩くだけで途方もない作業になりますが、輪かんじきやスノーシュー、スキー板などの道具で随分と歩きやすくなります。
スキー板を使った登山ではもう一つメリットがあって、それは下りがとても速いことです。登って稼いだポテンシャルエネルギーを滑って効率よく使うことができます。
スキー板を使った登山は1年位前からずっと憧れていて、ようやく道具を揃えて実現することができました。
登山で使うスキー板は、太めのもの(センター100cm前後)を用いることが多いです。また、かかとの部分が浮くような機構のビンディングでないと登りでは使えません。スキー靴は、登山靴の機能も兼ねたものが売っていますが、予算不足なので元々持っていた普通のスキー靴を使いました。また、登るときにはスキー板の滑走面にシールという高級絨毯をつけます。これは、小学生の頃よく遊んだエノコログサ(猫じゃらし)のように毛が一方向に揃っていて、後ろ向きには雪に毛が刺さって進まないような仕組みになっています。
前置きもこの程度にして早速登りましょう。登山口まで本来は車で行けるのですが、今回通行止めとなってしまっていたため登山口から2kmほど離れた豊平峡温泉に車を停めてそこからスタートです。スキー靴で2km舗装された道路を歩くのは拷問に近い所業でした。
登山口到着。除雪された道から高く積もった雪に登っていよいよ冒険の始まりです。シールをつけたスキー板をするすると前に滑らせるようにして歩きます。雪と擦れるときの独特の音が心地よいです。
今回冷水沢という沢を伝って山頂へ至ります。沢沿いの樹林帯を進んでいきます。雪山では木が地面一帯のレフ板に照らされて本当に美しい。これがゲレンデマジック。
何度かスノーブリッジを使って沢を渡ります。スリル満点。落ちたらそこで登山終了。
途中で後ろから同じくスキー板を履いたお兄さんが抜かしていきました。この日の登山者は我々とこのお兄さんだけでした。
しばらく歩くと冷水小屋に到着します。北海学園大学の山岳部が管理しているそうです。山小屋持ちの山岳部っていいなあ。
小屋から先は急な登りになります。シールが効かないくらいの斜面になるので、斜めに登って何度も折り返しながら頑張って食らいつきます。
山頂まであと少し、といったところで急に風が強くなってきましたそして雪も。気づけば猛吹雪です。怖い。まるで帰れと言われているようでした。
みるみる埋まる自分のスキー板の軌跡を見て、ここで同行者と登頂を目指すかどうか相談しました。ここから先は沢を抜けて尾根に繋がる緩やかな樹林帯で、道を見失いやすいです。我々は読図、ナビゲーションの経験がまだ浅く、スマホのGPSはあるものの、それだけに頼るのは危険だと判断し、小屋付近まで下山することにしました。
山頂へは行けなかったですが、楽しい下山滑走です。気持ちを切り替えて参ります。間違った方向へ降りないよう地形図をよく確認して、レッツゴー。尾根付近と麓の方では随分と天気が違うようで、高度を下げるとすぐに雪がやみました。
スキー滑走中はルートファインディングに必死で写真を全然撮れませんでしたが、なんとか無事に降りて温泉にありつきました。
雪に覆われた静かな森に、春を運ぶ雪解けの沢水の流れとクマゲラがドラミングする音が響いていました。
次は登頂したいです。春も冬も待ち遠しい。