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「させていただく」は万能の敬語なのか

国語編集部です。

学校で勉強したことなんか社会で何の役に立つんだよ、はいつの世でも語られる内容ですが、中学国語で学習する「敬語」は、確実に社会に出ても使います。

「話す」は尊敬語だと「おっしゃる」、謙譲語だと「申す」

「食べる」は尊敬語だと「召し上がる」、謙譲語だと「いただく」

といったように、問題作成時には、言い回しの変換や主語(動作の対象)に応じた使い分けなどを出題します。

しかし、これらをマスターしたとしても、世に出た際に当たる壁、それが「させていただく」問題です。

・お見積は本日中に提出させていただきます。

・それではご案内させていただきます。

・会議の時間を変更させていただきますが、よろしいでしょうか。

「させていただく」は丁寧語の「です」「ます」並みに汎用性があり、かつかなりの敬語を使っています感があります。
何なら「申させていただく」「参らせていただく」とまで言いたくなります。「いただかせていただく」が出るのも時間の問題です。

全ての「させていただく」が誤用とは思いません。ただ、世にある「させていただく」の半分は、本来「いたす」を使用べき場面でも使われているのではないか、と個人的に思っております。

「させていただきます」は「~してもいいですか」という意味で、相手に了解を取る場合、転じて言った側に益があるような場合に使用します。
逆に「いたします」は相手の了解が不要な場合、言われた側に益がある場合に使用します。

先に挙げた「~提出させていただきます」は、見積書を出さない、という選択肢はないので、「提出いたします」という方が適切です。
同様に「ご案内させていただく」も案内してもらう側にとって不都合はないので「ご案内いたします」の方がベターです。
一方で「変更させていただきます」は変更により相手に不都合が発生する可能性があるので、「させていただく」が適切です。
スケジュールを変更いたします。では、相手に選択の余地がない印象を与え、敬語であっても無礼なイメージを与えかねません。

教材作成の面では、ここまで詳しく学習しないことが多いので
案内いたします。(案内させていただきます)
と別解扱いをすることもあります。

敬語表現は「過ぎたるは及ばざるがごとし」と「とりあえずつけておけばないよりはましだろう」のせめぎ合いなのですが、スマートな言葉遣いはそれだけで相手に心地よい印象を与えることもないとも言い切れないかもしれないと思いたい次第です。

ということで、それではこのへんで失礼させていただきます/いたします。


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