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水澄む草青む

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空から降り注ぐ雨水が、何十年もかけて森の奥の清らかな泉の一滴となるように。我が身を生きることを通して言葉を綴る5人の書き手によるちいさなWebマガジン。
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2018年12月の記事一覧

言葉をめぐる世界で本質を見つめる

私は今、生後1ヶ月の小さな命とともに暮らしている。 当然のごとく、彼はまだ、言葉を持っていない。 何かを伝えたいとき、彼はただ、泣く。 手足をバタバタさせて、顔をしわくちゃにして。 ただ、全力で。 母である私は、彼のメッセージを受け取り、 自分なりに解釈して、行動する。 そこに言葉は存在しないけれど、通じ会えたとき、 確かな安心感が生まれる。 もちろん、通じないこともあって。 そんなときはお互い、なんとも言えず悲しい気持ちになる。 そしてもう一度、言葉にならない言葉を伝え

人が、言葉の前に立ち止まるとき。

人が、言葉の前に立ち止まるとき、 そのときにしか見えない、風景が立ち上がる。 その風景には、きっとその人にとって特別な意味があると思う。 いま、言葉は乱雑に扱われている。 嘘や誇張、ちいさな悪意をあざとく隠して、どんどん流れていく。 私はもう一度、言葉を信じたいと思う。 水が澄み、草が青む。 静かで満ち足りた風景が、人の心に宿ることを祈って。