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月光浴と与謝野晶子

月明かりがきれいな夜だった、
満月を3日程過ぎた東京の夜9時前。
のぼり始めた月の光にしばし自転車を停めて見入った。
朝の太陽が体にどれだけ良いかは知っている、特に鬱々した私のような人間には。しかし私の心には月光浴の方が何倍もパワーをくれる気がしている。

東京生まれの東京育ちの私は自然豊かな地方都市での生活に憧れがある。
朝、排気ガスのビル街ではなく、
波のさざめきで目を覚まし、あるいは野鳥の囀りで目を覚ますなら、朝陽を存分に浴びながら散歩してセロトニンを大量分泌させてやるさという言い訳も思い浮かぶほど。

でも東京の夜は悪くないと思うのだ。存外、一仕事終えた都心のビル達の上に浮かぶ月は美しい。

夜が好きなんて夜型人間にはマイナスなレッテルが貼られがちなこの国だ。
しかしやはり月の持つ神秘なそのパワーは多くの人間の心を動かしてきたはず。

日本最古の物語「竹取物語」は月から来たかぐや姫の物語、

ベートーヴェンは「月光」という名曲を残し
桜井和寿は「月も濁る東京の夜」に「君が好き」と歌う。
セーラームーンに至っては月に代わっておしおきをしてくれる。(衛星ながら他の惑星戦士を差し置いて主人公なところもポイント)

特に私が好きな歌がある
「清水へ祇園をよぎる桜月夜 
        こよひ逢う人みな美しき」(与謝野晶子)

けして静かな月夜ではないのだろう、しかし高揚感と美しい色彩が伝わる32音をこの季節の月を観るといつも想い出す。
今風に言うとちょっとパリピな感じだろうか。

晶子さん、月の土地を買って、行ける時代になりましたよ、信じられますか?

ちょっと月の光に酔って帰る夜、
主人に「月が綺麗ですね」とでも言ってみようか
(意味が伝わるような感性は持っていない夫)

センチメンタルな気分で家のドアをあけると
えらく陽気に「炭坑節」を歌って踊る娘と主人の素っ頓狂な声が聞こえた。
季節を問わず盆踊りが好きな娘なのである。
やれやれ。である。

「あんまり煙突が高いので〜 
     さぞやお月さん煙たかろ〜  ソレ ヨイヨイ」

秀逸なムーンソングだった。

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