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てるてる坊主のラブレター鳥肌【毎週ショートショートnote】

 坊主といえば雨乞い祈願である。

 日照り続きで旱魃となって、作物が育たず前途に飢饉が待ち受けるからこそ、僧侶の霊験が求められたわけだ。

 坊主に首をくくらせる事で快晴を願うとは、分かりやすいが何とも業深い表象であることか。

 言語に変えるならそう思った幼稚園児当時の私は、皆が一生懸命に作って先生が軒先に吊るしてくれた、色とりどりのてるてる坊主の一群を、
 一つ一つ丁寧に取り外しては、裏庭の土を掘って埋め、「ナムアミダブツ」も10回唱えて「どうかジョウブツして下さい」とも口にしたのだが、
 てるてる坊主が消えてしまった事すら、園児も先生も誰か片付けたのだろう、くらいにしか思わず、特に追及もされなかった。

 家に帰り着いて母が、
「あら? 何かポストに入っているわ」
 と引き出した紙切れには、顔を描くのに使ったインクがにじんだような字で、
「ありがとう。おれいにみんなで一生そばにいるね♪」
 とあって私は心底鳥肌が立ったのだが。


(409文字)

 それ以来ずっといるのかもしれない。

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