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waratsutsumi
桜回線トロピカル(魅力的な台詞で始まる)【毎週ショートショートnote】
「寒冷地へと春の便りを届けるばかりが、桜回線の役割ではない」
ベテランメンテナンス工の、ヤシロさんがファイバーケーブルを結線しながら呟いた。メンテナンス工といいヤシロといい、どこまでがカタカナなのか漢字なのか、純日本人以外には分からなそうだと私は思った。
純日本人、とはどこまでを指すのか、血筋的なものか教化政策の成果なのか、私には分かりはしないけども。
ソメイヨシノなど咲きはしない熱帯の島々にまで、コンクリート施設の外壁さえあれば、ICT云々とやらで桜吹雪を届けてくれるという。こちらにも寒緋桜なら咲き誇り、腐り落ちるまで花房は枝に残り続けるというのに。
とは言え南方戦線で散って行った数多くの魂が、慰められるだろうと涙ながらに言い切られてしまっては、彼らの末裔でもあるだろう我々の代としては、黙らされるしかない。
コンクリート壁に夜毎広がる桜吹雪は確かに美しい。
願わくは寒緋桜も同等に愛でられて欲しいものだが。
(409文字)
誰に対しても「魅力的な台詞」とは思いませんが、
私は職人が好き。
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