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【創作大賞感想】福島太郎『銀山町 妖精綺譚』

 感想記事全体の思惑:セブンソード的な試み

 フォローしている方が感想を書いていたから。

 『黒田製作所物語』
 とどっちにしようか迷ったけれども、
 固定記事になっていた事で筆者のお勧めと判断した。

  初読時:約2時間15分
  再読時:約2時間
  再読の方がちょっとだけ早かった。


(文字数:約1600文字)



なるべくネタバレせずに話の流れ

  田中と高橋のT2コンビが銀山町を救う!

  ややふざけて書いてみたものの、
  あながち間違っていない。

  しかも妖精たちの力を借りて!

  そう付け足してみても、
  決して過言ではない。


  実在の町役場に取材した、
  平成三年頃の奥会津における、
  『ふるさと創生事業』に挑んだ、
  役場職員ならびに町の若者たちの顛末。

  役場独特の会話や体裁に、
  また不遇感がある地域の雰囲気に、
  慣れていなければ読みにくいかと思いきや、

  サクサク進んで小気味が良い。

  「役場のスピード感の無さ」を払拭しよう、
  という町長に職員たちの意識ゆえ、
  という流れで不自然でもない。

  (第4章内の「第一回若者定住会議」は、
   人物が一気に増えるため難しかったが、
   そこは大抵の小説に共通する難点。)

  そして田中さんが良い人だ。

  改めて読み返すと彼は、
  「第2章 銀山町」辺りで、
  すでに妖精と出会って、
  無意識のうちに交流できているよな。


重箱の隅をつつくのが大好き

  誤字脱字に送り仮名の間違いが、
  致命的な部分ではなく、
  数もそれほど多くはないけれども、

  メインの舞台が役場なもので、
  違和感として残りやすい。

  第10章内の、
  「一目につかないところで虐めていたガキ大将」
  →「人目に」だけが明確に残念。

  あと、
  「」の内側の「」は『』にする、
  とか、

  段落の先頭行は一字下げる、
  とかの、

  ルールの不統一感が私は気になるけれども、
  (実を言えば「」のままでも、
   字下げしなくてもいいけれども、
   同一作品内では統一されてほしい。)

  役場や企業内の文書では、
  その辺をいちいち気にしている時間も惜しいため、
  意識が向かなくなっていく実情も分かる。

  ですからね。
  校正担当者あるいは、
  エディタの校正機能が要るんですよ。

  仕事はいくらでもあるんだけども
  対価を(・∀・)おくれ
       ↑点訳校正者(ほぼ無償)


久美子さんにシンパシー

  惜しむらくは実地での取材に基づいており、
  内容の改変もし難いために、
  「じんわりとあたたかみが染み込む良い話」
  を一歩超えて踏み出してくれるような、
  独自の展開が作りづらい。

  (とは言え
   「このささやかな偉業を、
   書き残し世に伝えたい」という、
   目的には充分に適っているので、
   それ以上の面白さや目新しさを求めるのは、
   読み手側の贅沢と言えるのだが。)

  そうした条件下で、
  プロローグを久美子さん視点にしたのは、
  重要な工夫だった。

  何者なのか、
  いつまた話に現れるのか、
  先を読ませる推進力になった。

  私の場合は特に、
  「小学校低学年頃の心の傷が、
   三十年近く経っても残っている」
  という共通点があって大変にシンパシー。

  田舎度合いもそっくりだし。
  (おかしいな。世代は違うはずだがな。)

  それだけにプロローグでは、
  久美子さんを謎のままにしてもらいたい。
  一ヶ所だけ正体が推察できる単語があった。

  第1章から第8章までで、
  徐々に予測度は高められているので、
  第9章で完全に察し切りたい。

  (・∀・)あ
    人ー3  
  と手を打つ感じに。

  それでも更にもう一捻りあるし、
  読み応えに問題は無いと思う。


以上です。
ここまでを読んで下さり有難うございます。

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