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強すぎる数え歌覚醒【毎週ショートショートnote】

 ♪ひとつーとーせー

 中学時代の社会科、それも昼食も終えた午後二時頃など、最強睡魔が襲い来る時間帯である。
 末永、であるものを達筆すぎて読めず、「まれちゃん」と呼ばれていた年配の男性教師が、突如数え歌を歌い出す、という割とシュールな状況も、小春日和のうららかさが手伝って子守唄にしか思えん。

 ♪ふたつーとーせー

「両親離れて来たからにゃ 三年満期と勤めましょう」
 しかもまれちゃん、数え部分以外はなぜか朗読という。目が覚めていたなら私はかえって笑いを堪えるのが大変だったな。如何せん連日深夜まで、起きて宿題と受験勉強を、小説を書く合間にやってて眠いのよ。
 惜しむらくは教科書にも載っていない。
「起きてても聞き取れなかったよ。昔の言葉すぎて」
 と優しい友達が相手してくれたけれど。
「授業中眠いのだけは本当に困るな。睡眠薬の逆が欲しい」
「睡眠の逆って……」
 二人揃って考えて、
「覚醒……」
 と出た途端二人揃って首を振った。


(408文字)

 「女工小唄」でした。

 お題的には眠りに落ちつつ聞いていたものを、
 二十数年経っても覚えているという意味で。

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