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何を誘発する?『誘発目地』

誘発目地はなぜ必要か

一般のコンクリートは、外力がなくても乾燥収縮や温度応力によりひび割れます。
コンクリートは引張力に弱い材料なので、引張力を受けると簡単にひび割れてしまいますね。

地震や不動沈下などの外部応力による構造的に有害なひび割れと異なり、乾燥収縮や温度応力によるひび割れは比較的微細なものが多いですが、美観を損ね、場合によっては漏水の原因になります。
そこで、予めひび割れ易い場所にひび割れ易いように目地等を設け、ひび割れを誘発し、コントロールしようとするものが誘発目地なんですね。
誘発目地はひび割れて、そのままでは漏水しますので、当然シーリングをすることになりますね。

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ひび割れ易い場所はどこか

誘発目地はひび割れ易い場所に設けなければ、誘発の効果が発揮し難くくなりますので、設置場所を誤るとひび割れがコントロールできなくなりますね。

誘発目地は以下のようなひび割れ易い場所に設けなければなりません。
① 剛性が変化する場所   : 柱際、開口部廻り
② 収縮応力が集中する場所 : 大きな壁の中心付近
③ 熱応力を受け易い場所  : パラペット、庇
④ 乾燥速度が異なる場所  : 1階腰壁など土中と接続している場所

開口部廻りには、ひび割れ防止補強筋を配筋しているので、なんだか矛盾がありますね。


誘発目地の構造

ひび割れは構造的に弱い部分に入りますので、目地や誘発材を用い、意図的に断面を欠損させることで、ひび割れを誘発します。
ひび割れを誘発するために有効な断面の欠損率は20%以上といわれています。
壁厚150の壁の両面に20の増打部分に目地を設けると、40/190=21%になりますので、片面だけでは「なんちゃって誘発目地」ですね。
目地に加えて、鉄筋を切断したり、塩ビパイプ等を埋込みひび割れを誘発することもあります。

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誘発目地のピッチ

柱と梁で拘束されている一般的な壁の誘発目地のピッチは3mでよいと思います。
一般的な壁とゆうのは、W150・W180のD10@200ダブル配筋の鉄筋比が0.4%程度を想定しています。
仮に鉄筋比が0.8%程度に大きくなると、ひび割れ間隔が狭くなり1.5m程度にする必要があります。

パラペットやバルコニーなどの片持ちスラブやコンクリート手摺もひび割れ易い部位ですので、1.5m~2m程度で目地を設けておきたいですね。

設計図に関わらず、竣工後ひび割れが発生すれば施工者は責任を問われることになります。誘発目地が適切でないと思われる場合は設計者・監理者と協議し検討しましょう。
意匠設計者の方には、誘発目地の必要性も理解していただいて目地もデザインしていただければと思います。

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