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24.手術

いよいよ手術の日。
昨夜はぐっすりと寝たので、気持ちの良い目覚めだった。

朝食は抜きなので、10時まではOKだと言われたお茶をすする。
朝早く、先生が回診に来られて、笑顔で「今日は手術するからね!」と。こんなに笑顔見せる先生初めてかもしれない。「よろしくお願いします!」と答える。

歯磨きをして、未練がましくお茶を飲んでいると、看護師さんから、RI室に行くように言われる。
行けます?と心配された複雑な作りのRI室に無事たどり着いた。
ベッドに横たわると、体が装置に入っていって撮影される。
「ちょっとマーカー入れますね」と、ここでもチョンチョンと青い印を入れられた。

部屋に戻ると、今度は外科外来に行ってくれというので、向かったが、受付では「先生呼んでないよって」問い合わせてもらったら、形成外来の方だった。


慌てて隣の形成外来に行くと、先生が「お部屋に行こうと思ってたんだけど思わぬ忙しくて〜!来てもらってごめんね!」と笑っていた。
ここでも色々マジックで記入される。縦横に点線をいっぱい書き込まれ、鯵の開きになった気分…。いや、そんなに切り開かないんだろうけど。

病室に帰ってあと10分でお茶も水も飲めないことに気付き、急いでコップの中のお茶を飲み干した。
それからしばらくして、点滴をするという。
先に術着に着替えて、点滴の準備。

コレは、栄養剤と、吐き気止めと、あと手術の際にも使うというので
「慎重にラインを取らないと行けないんです」
と看護師さん。
しばらく悩んでいたが、なんとか針を挿入。

「あれ?コレ痛くないですか?」
(そんなに痛くはないけど…)
「やり直しますね、すみません」
(言われると痛い気もする)
もう一箇所、悩んで悩んで
「ここ、一度挿してみて良いですか?」
「一度でも二度でも…」
結局そこも上手くいかなかった。

彼女は「すみません〜」と申し訳なさそうに先輩看護師に代わった。
先輩看護師も悩んでいた。
手をパシパシ叩いてみたり、もっと強めに縛ってみたりと、手数を増やしてなんだか変なところから点滴のラインを取ってくれた。


そんなとこに挿されたの初めてだよ…とはいえ、そもそも点滴の回数も数えるほどしかないのだが。
結局、点滴のラインを取るだけで30分も時間をとってしまって、なんかすみません、という感じだった。

その後、しばらく放置されて、出なかった便も出て(セーフ!)12時45分ごろ、「では行きましょう!」と看護師さんが迎えに来てくれた。
いよいよだ。
一応主人に、「今から手術、頑張ってくるね」とだけ簡単に連絡し、立ち上がった。


いつもは通らない通路を歩くのもワクワクしたし、だんだん業務的になって行く景色(壁紙は白色で、ドアは銀色)におぉー!とテンション上がりまくっていた。
銀色のドア(足で開けるやつだ)の向こうに広い通路があり、手術室がズラッと並んでいて、青い手術着を着た先生や、看護師さんが歩いていた。ドアの向こうは別世界という感じだった。

「ドラマみたいですね〜!」
「そうですね!」
付き添いの看護師さんと会話する。
看護師さんは、ちょっと早く着き過ぎてしまったようで、知らない若い先生に怒られてしまった。
「13時着で、って言ったよな?」
先生が去った後、
「キツイですねぇ…」
と言うと、
「そんな人もいますー。大丈夫です、すみません〜」
と笑顔を返してくれる。
アレかな、実は裏でこっそり付き合ってるとかないかな、仕事の時は厳しいけどプライベートでは…とかそんなドラマなかったかな…と、勝手に妄想する手術開始10分前の44歳であった。

13時になり、中の看護師さんが迎えに来る。
「では向かいましょう!」
と、ドアの向こうへ。
「迎えに来ますね!」と、さっきの看護師さんとお別れする。
私が入る部屋は、手術室6と書いてあった。


入るとやっぱりドラマみたいな部屋だった。
わぁ!
先生もいつもと違う色の服を着ていてなんだか新鮮だ。
キョロキョロしながら中央のベッドに横たわると、私のベッドを囲んで打ち合わせが始まる。
「それでは、ミキ隊員さんの手術を行います。右側乳がんの切除、および…」

ワクワクしながら聞いていると、見慣れない先生が覗き込んでくる。
「麻酔医の〇〇です。
それでは、あなたはもうそろそろ眠りましょうか?」
「え、もう眠って良いんですか?」
「はい。もう寝てくださいよ」
「起きてください、起きてください」
今寝てくださいって言ったじゃん?
眠いのにー!と思いつつ目を開けると、終わりましたよ!と、皆が声を掛けてくれる。

「ゆっくり息をして…」
え?
え?
は?
本当に一瞬だった。

「はぁー、はぁー」
大きく息をしながら運ばれているのを認識する。
みんなが声を掛けてくれるのに、ありがとうございました、とパクパク口で返すのが精一杯だった。

そのあと、激しくまた左手を叩かれていた。
もう一本、抗生剤の点滴を挿さなければならないらしい。やっぱり血管が取りにくいみたいだった。
最初から最後まですみません、という感じだった。
何とか点滴が打たれ、痛み止めが入れられて、やっとひと心地ついた。


右胸がかなり痛いけど、徐々に痛み止めも効いてきた。
あー、終わったんだなーと、一人にされて思う。
無事終わって良かったなぁ。


夜中はすごい汗をかいて、看護師さんが冷たい水で体を拭いてくれたり、タオルケットに替えてくれたりした。
4時間後、やっと水を口にして、あと自由に飲んで良いですよ、と言われたが、痛くて起きることも出来ず、うとうとしながら朝を迎える。


朝食が普通に出てくるが、左手と右手をそれぞれ違う方から引っ張られていて、身動きができない。
コレで何をすれば良いのかと疑問に思ったが、特にお腹も減っていないので、食べなかった。


午前中に一度立ち上がってみましょう、と言われたが、いきなり目の前が真っ暗になってふらついて、もう一度午後にやってみましょう、と言われる。
そして昼ごはんを同じように出されたが、動かせないし、食べたくないしで、手がつけられなかった。


午後から形成外科の先生が来られて、ガーゼの交換をしてくれた。
ちょっとテープ負けしてしまったけれど、他は順調です!と帰っていかれる。


足のストッキングも脱いで、心電図や導尿のチューブも外してもらい、点滴も抜く。指先のパルスオキシメーターも外され、自由になった。

途端、さっきと打って変わって動けるようになる。
それから一度立ち上がって足踏みする。
全然余裕だった。
トイレも自分で行けるし、起き上がって色々荷物の整理も出来た。

やっと携帯電話を取り出して、主人に連絡する。
手術後に病院から連絡はあったはずなのだが、私からはまだしていなかった。
お疲れ様、と返信がある。
疲れたのは、待つ方だろうけど。
それから、色々な方面に簡単に連絡をする。
まだ痛いので思う通りに打てない。


夜には更に動けるようになって、夕飯もほぼ完食。
ちょっと胸の痛みはあるが、二日目はほぼなんでもできるようになった。
昼間にうとうと寝てしまったので、夜が中々眠れなかった。同室の人がうるさい(お婆さんが、深夜に動画を見てギャハハと笑っている…実に迷惑だ…)のもあって、寝付けなかった。


とにかく、手術は終わった。
無事、終わった!


(…と思ったら、大変な事が起きたので、それはまた次回に!)

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