33.副作用、現る!

8月19日


それは突然やってきた。

13日に抗がん剤をうってから一週間、副作用らしきものもなく、のほほんと過ごしていた。
明日は主人が仕事で、私は食塩水注入のための形成外科の方の病院である。
23時ごろ、テレビを見ながら、軽く胸焼けがするので、炭酸水にカットしたライムを加えて、チビチビ飲んでいた。

急に下半身がだるくなった気がした。

あれ?
力が入らない。
だるくてだるくて、足に力が入らないのだ。

「ごめん、急で申し訳ないけど、寝るね!」
突然立ち上がりよろよろ階段を上がって行く私を不思議そうに眺めていた主人は、残っていたお酒を煽って追いかけてきた。
「どうした?」
倒れ込むようにベッドに横になると、それは『だるい』から、『痛い』に変わった。
「痛い…」
「えっ?はっ?大丈夫?」
主人は突然の嫁の変化に驚いている。
そりゃそうだ、さっきまでケラケラ笑いながら一緒にテレビ観てたのに。


なんだか、インフルエンザの時のような、節々の痛みを感じる。
熱はない。
インフルエンザの時の様な節々の痛みは、だんだん強くなって、節々というか、骨が痛いというか、全身を強い痛みが襲った。インフルエンザの時の5倍くらい痛い。


唸る私の隣で、心配そうに体をさすってくれるが、明日も仕事なので構わずに寝てほしいとお願いする。
そして睡魔に負けるギリギリまで背中をさすっていてくれた主人も、ついに寝てしまった。

…静かだ。
痛い。
眠れない。
もう、じっとしているのも辛い。
5秒おきに体勢を変える感じ。
ゴソゴソ、ゴソゴソとシーツの擦れる音だけが一晩中していた。
貰っていた痛み止めを飲んでみるも、なかなか効かず、1時間ほどしてやっと効きはじめ眠りにつくことが出来た。

「ううーん」
うなされて目が覚める。
時計を見ると1時間ほど眠っていた。
えっ、1時間しか寝てないのか。
痛い。
痛い。
痛い。
長い夜。
時間が経つのが遅く感じられた。


8月20日


朝になっても状態は良くならず、殆ど眠れなかった。
コレ今日病院一人で行けるかな?と不安に思っていると、主人が休みを取ってくれるという。
「ありがたいけど、会社、休んで大丈夫なん?」
多分全然大丈夫じゃないけど、大丈夫だろうと言う。
「いやいいよ」
「休むよ」
「いやいや」
何度かのやり取りの後、やはり休んでくれることになった。
申し訳ない。
でも、本当に辛かったので、正直とてもありがたかった。


そして病院へ。
形成外科の受付をする前に、乳腺外科の受付に行って事情を話し、診察予約を入れてもらう。
待合でじっと座っているのも辛いのだが、あまりに挙動不審だと変な人みたいなので、なるべく普通を装って呼ばれるのを待った。

形成外科で胸に食塩水を入れてもらい、乳腺外科へ。
先生に、先日の診察の時はなんともなかったのだけど、昨日から全身が痛く、薬も効かない旨説明する。
「うーん、まぁ、仕方ないというか…あるんです、そういうの」
「辛いねぇ」
「でもね、薬…鎮痛剤飲んでね、やり過ごすしかないんですよ」
「数日頑張ったら治まると思うんですけど」


…要するに、何も出来ることはないと。
まぁ、頑張れ、と。



「ううう、わかりました…」
あまりに長引くようならまたおいで、と優しく言われ診察室を後にする。

午後からも体は痛く、ご飯も食べられない。
水分は取るが、ムカムカする。
痛み止めが効くと、一、ニ時間だけ眠れる。
夜になっても治らず、ついに吐いた。
食べてないので、胃液が出てきた。
口の中が不味かった。


8月21日


朝方になってやっと眠れた。
体の痛みは少し和らぎ、怠さに変わって行った。
ひたすらだるい。

長女と主人は、私を起こさないようそっと出かけたらしく、居なかった。
次男が心配して周りをウロウロしている。
「水いる?」「薬飲む?」
甲斐甲斐しく世話をしてくれる。


今日は頭痛と吐き気との戦いだった。
水を飲んでは吐く。
飲む。
吐く。
飲む。
吐く。
夕方になって、やっとゼリー飲料を口にする事が出来た。

興味なさげだった長男も流石に心配になったのか、「大丈夫?」と聞いてくる。
「大丈夫じゃない…」
「うん、大丈夫そう!」
違うー!母はしんどいのー!
「アイス食べる?」
「…食べる」
珍しく優しい。


夕飯は、昨日の残りと、学校から帰った娘が作ってくれた。
普段料理をしないので、彼女の料理を食べてみたかったが、どうしても食べられなかった。
また元気になったら作ってもらいたい…。


夜は、やはりまた吐いた。
でも、痛いから怠いに変わって、夜はそれなりに眠ることが出来た。

8月22日


朝、怠さはあったが、何とか起き上がる。
胃の辺りのムカムカは相変わらずだけど、吐き気はおさまっている。
お粥を作って、梅干しを乗せ、恐る恐る食べてみる。

…めちゃくちゃ美味しい。

やっぱり病み上がりはお粥だよ!
胃に染み渡る温かく柔らかいお粥に、酸っぱい梅干しがたまらなく美味しく感じた。
ああ、ご飯が食べられる幸せ…!

おかわりしようとしたら、長女に止められた。
「一気に調子乗って食べたらまた吐くよ?」
ごもっとも。


お昼は、娘が温麺(うーめん)を作ってくれた。
もちもちして美味しい。
なんだか元気が出てきた。
不思議とムカムカも無くなって、怠さも和らいできた。

あれっ、夕飯作れそう!
起きてゴソゴソと家事をする。
いつもより時間は掛かったが、夕飯もつくって、皆と同じものを少しだが食べることが出来た。
副作用がなくなったかも!

8月23日


今日はまた怠い。
昨日はご飯作れるくらい元気だったのに!
そしてお腹が下った。
何度もトイレに駆け込んだ。
そして頭が痛い。
鎮痛剤を飲んで、2回目くらいからやっと効き始めた。
副作用に頭痛とかあるの…?
よくわからないが、とにかく痛かった。

8月24日


今日もお腹が下る。
頭痛は治まる。
頻繁にトイレに行く以外は回復!
良く食べて良く寝て、元気に過ごす。


8月25日


夕飯に作った白身魚のムニエルが、胃薬の味がしてビックリする。
みんな美味しいと言っているので、ワタシの舌がおかしいだけなんだな…。

8月26日

やはりお腹の調子が悪い。
でも回数は減ったかな。

そしてお風呂で気付く。

あれっ?
髪、抜けるの多くない…?

ついに副作用の山場(?)といえる脱毛が始まった!!!

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