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34.髪の毛


ヘアドネーション

がん宣告される少し前、長男の卒業式を控えていた私は伸ばしていた髪を切った。
そしてヘアドネーションをした。

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ヘアドネーションとは、小児がんや先天性の脱毛症など、頭髪を失った子どものために、寄付された髪の毛でウィッグを作り無償で提供する活動の事で、日本にもいくつか活動を行なっている団体がある。

以前、娘がヘアドネーションをしたのをきっかけに、私も髪を伸ばしていた。
息子の入学から約3年伸ばした。
こうも長いと、これから続く卒業式、入学式というセレモニーに、髪をどうまとめて良いかもわからず、このタイミングでバッサリ切ったのだった。
誰かの役に立つと良いなぁと。

その後乳がんが見つかり、手術をして、抗がん剤治療が始まった。

…まさか自分がウィッグを必要とすることになるなんてね!!!


脱毛

抗がん剤治療の約2週間後、お風呂で髪を洗っていて、いつもより抜け毛が多いことに気付いた。
(あっ、そろそろかな?)
こうやって抜けていくんだなーと思った。

翌日のお風呂はもっとすごかった。
(わー、ホラー!!!)
シャワーのお湯と共に髪の毛が体を伝って下りていくのがわかった。

翌々日のお風呂は…(以下略)。
毎日抜けていく。
掃除機をかけたり、ワイパーで掃き寄せたりするが、白いフローリングの至る所で髪の毛溜まりが出来ていた。

ふと思いついて、猫の毛玉を作る様に、自分の髪の毛を集めて丸めてみたら、直径10センチくらいの黒い塊が出来た。
小学生の次男に見せたら、
「なにそれ気持ち悪ッ!」
と、怒られた。
思わず彼に向かって投げたら、更に怒られた…。


「最近、俺の持ち物から母さんの髪の毛がどこからともなく出てくる…」
とは高校生の長男の台詞。
思春期男子からしてみれば、オカンの髪の毛なんて気持ち悪いしかないだろうな…。
「スマン、抜け終わるまで待って…」
すると、
「まぁ、別に。超大型の長毛種の猫…化け猫?が換毛期なんだなって思うことにするわ…」

…なんと優しい台詞!
『超大型』『化け猫』に軽く悪意を感じるけどまぁ良い。

ケアキャップ

そんな中、私はあるものを思い出した。
そういえば、これ…いつ使うの?
……今でしょ!!!(古い)

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使い捨ての不織布のキャップ。
これを被っておけば、バラバラ落ちないんじゃない?!
そういえば、入院中そんな事言われたわ!
お家の中で、不織布のキャップを被って過ごすことにした。

悪夢

頭皮が痛い。
引っ張られる様な感覚。
抜けてるんだなぁと思う。

お陰で変な夢ばかり見る。
知らない人に髪の毛を掴んで引っ張り回される夢とか、後ろから女の人が髪を掴んでる夢とか。
わぁい、ホラーじゃん!!!
もうホラーじゃんんんんん!!!涙
そういうの大嫌いなのに、そんな夢ばかり見て昨夜は何度も起きた。
怖すぎる。ワタシの想像力が!

頭皮の痛みも引いて、抜けるだけ抜け終わると、悪夢はピタッと止んだ。

ケア帽子

ウィッグを買って被ってはみたけど、見慣れないせいもあって違和感しかない。買い物に行くと、まだまだ暑いので、蒸れに蒸れてかゆくなってしまった。早く涼しくならないかな。

それはそうと、家の前でカメに餌をやるとき。それから植木に水をやるとき。郵便や宅配の方が来たとき。ウィッグをいちいち被るのは面倒くさい。何よりお待たせしてしまう。黒いケアキャップのままだとなんかおかしいし。

そして探したケア帽子。

このnoteでもおなじみの、うた うとりさんがフリマアプリで販売しているというので早速探して購入した。ストーカーみたいで気が引けたのだけど、探し当ててしまった。ふふふ。

いわゆる「ほっかむり」。懐かしい響きだ。

早速被ってみる。簡単!良い!とても気に入った。これからおうちではコレだな!

うた うとりさん、大変気に入りました!ありがとうございます!!!

ウィッグ

ウィッグはネット通販で安いのを買った。
普段は帽子で良くても、冠婚葬祭には不向きだと思い、一応買うことにした。
一つ4000円くらいだった。
調子に乗って、長いのと、短いのと、明るい色のを買った。
気分によって使い分けている。
どうしてもヅラ感は拭えないけど、まぁ、それはソレで。
誰も「ヅラですね」なんてわざわざ言ってくる人も居ないし笑。言ってきた所で、「そうですね」という事だ。

丸坊主

そして『うすらハゲ』状態に飽きたので、ばっさりと刈ることにした。
父親からバリカンを借りて来て、主人に刈ってもらう。
「嫁の髪を刈る経験なんてそうそう出来るもんじゃないよ!」
そんな冗談を言いながら、中剃りをして『落ち武者風』写真を撮ったり、ソレで髷を結ってみたり、『サラリーマン風』七三にわけてみたり…色々写真を撮った。

そしてすっかり剃り上げ、気分は瀬戸内寂聴先生…?と一人思っていたら、
「なんか一休さんみたいで可愛いな!」
「小坊主って感じ!」
寂聴先生を名乗るには、徳も貫禄も足りないようだ。



自分の身体で起きる変化に、気持ちの変化。

抜け始めは、あんなに「わーっ!」と思ったのに、今はお風呂上がりが楽で良いな…なんて考えている。

何となく気を遣っていた家族もすっかり慣れた。
長女は、
「母さん、これヘアトリートメントのサンプル貰ったけ一個あげるー!」
なんて普通に言ってくる。どこに付けるんだよ笑。
次男の参観日にウィッグで行ったら、
「うわ、髪の毛あるの気持ち悪い…」
なんて、どーすりゃ良いのよ笑。

そんなこんなで楽しんでいる、期間限定の髪の毛にまつわるアレコレ…。
せっかくなので、貴重な体験として、色々楽しもうと思う!

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