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『逆さ富士七転八倒』#毎週ショートショートnote

むかーしむかしの富士山は

そりゃあもう小さな山じゃった。


いつも周りの山に馬鹿にされとった。




富士は背を伸ばそうと、色々やったが
少しも伸びんかった。

おらは一生このままか、、、


月の晩、

膝を抱えて座っていると
湖の上を滑るように
山の神がやって来た。


「わしが 背 伸ばしてやろうか」
「やっておくれ」
「痛えぞう苦しいぞう」
「やっておくれ!」



それを聞いた山の神は
持っていた杖をぶすりと富士の背骨に
ぶっ刺した。


そして大きく息を吸うと
杖の先からふうー!と吹き込んだ。
ぐんっと少し背が伸びた。


あまりの痛さに体が震えた。
小鳥が怯えて逃げていく。

ふううー!ぐんっ
目玉が飛び出た。


ふううー!ぐんぐんっ
口からごぼりとマグマが流れる。


「やめるか」「まだまだ!」
「やめるか」「まだまだ!!」

ふううー!!ぐんぐんぐんっ



「天晴れ!よう我慢しなさった!

ほれ見てみんさい お前さんが日本一じゃ」




湖に、
朝日に照らされた大きな山が映っとった。




それからと言うもの富士山は
背は縮んじゃいないかな、と
湖を鏡にしてこっそり確認しているそうな。






こちらの企画に参加させていただいています!

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