見出し画像

丸裸の図書館

その図書館は、

泊まる事が出来る上、

館内のどこで着替えようが寝ようが、

シャワーを浴びようが自由で、

暮らしているような人もいる変な場所だった。


家からは少し遠い田舎にあるので、

中々行くことが叶わなかったが

行かれる事となったこの度。


場の空気に気圧されながらも

恐る恐る館内をウロウロしてみる。


図書館特有のシンと静まり返った空気は流れているが、

そこいらじゅうにシャワーが付いていて

お構いなしに人々はシャワーを浴びていたりする。


気が付けば、私も裸だった。


ここでは裸はそんなに珍しくはないが

さすがにまだ抵抗はあり、

少し緊張している。

でも裸を恥ずかしいというよりも、

剝げかかった足の爪のマニュキアが

とても潔くない感じがしてそれが恥ずかしく思えていた。

クソ、これを綺麗に落とせば完璧に裸なのに。

そんな変な憤りを持ちながらウロウロしていると、

1枚の古びたポスターが目に入った。


月、木、土は、○○氏の朗読会の日。


私は今日がその朗読会の日であると気が付いた。

裸の私は朗読会が開かれている図書館奥のスペースに移動した。


到着すると同時くらいに○○氏はやって来て、

裸の私の傍により、

天井のシャワーのスイッチをひねり

頭からいきなり浴びせて来て

犬でも洗う様にワシャワシャと洗って来た。


いつの間にか私は子どもになっていて、

○○氏は他人から見れば父親に見えるくらいの感じだった。


洗い終わって○○氏は

とてもゴワゴワしたタオルで拭いてくれるが

それを観ていた近くに居た人が

フワフワした使い古したタオルを2枚差し出してくれた。

○○氏はお礼を言い、1枚使ってから、

『洗って返そうか?』と聞いたが

相手の方は、

『もう使い古しで使い捨てだから要らないよ』と笑顔で言う。

使っていない方のタオルだけを返す時に

私もその人にお礼をした。


シャワーで温まり、

満たされた心地になった私は

朗読会を待つが、

全然人が集まらなかった。


暫くして一人だけ男性が来て、

『あれ?他の人は??』と○○氏に聞いた。

苦笑いで『今日は全然来ない。』と○○氏は答えた。

男の人は、『じゃ、寝て待ちましょうよ。』というが早く

その場で横になってしまった。

○○氏も、

そうだな、と独り言ちて隣に寝た。

私も2人の間に入って横になり目を閉じた。

少し、温かいなと感じた。


目が覚めて、

ああ裸だったのに全然いやらしさゼロだったな、と思った。








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?