フレイルPADに対する運動療法

末梢動脈疾患(PAD)は動脈硬化による慢性虚血で骨格筋の機能障害が起こり疼痛,跛行,潰瘍など下肢特有の症状を呈する病態のことをいう。

【重症度分類】

・ Fountain 分類

Ⅰ:無症状 ⅡA:軽度の跛行 ⅡB:中等度の跛行 Ⅲ:虚血性安静時痛 Ⅳ:潰瘍化又は壊疽

・Rutherford 分類

0:無症状 1:軽度の跛行 2:中等度の跛行 3:重度の跛行 4:虚血性安静時痛 5:組織小欠損 :組織大欠損

Fountain 分類の IIa,IIb、Rutherford 分類の Grade I までが運動療法の適応

【病態】

運動時に狭窄のため、血流量増加が困難で筋の易疲労性と代謝産物蓄積に
よる知覚神経刺激により,跛行という症状が発現すると考えられている。

健常人の筋血流は安静時は 2~3mL/100g/min で,運動中は安静時の約 20~30 倍にあたる血液供給が必要とされている。

また、下肢の高度な動脈硬化による下肢骨格筋への血流低下は筋繊維の減少、ミトコンドリアの機能低下、骨格筋と末梢神経組織の変性をもたらし、局所における酸素消費は減少し,下肢筋力は減弱して運動能力や下肢機能全般が著明に低下する。

【運動療法の効果】

側副血行路における血管床の増大と血管新生が血流を改善し、ATP の産生と活性化酸素の減少、糖・脂肪酸代謝異常の是正が下肢筋の代謝を改善促進し、さらに神経伝達速度の改善と疼痛閾値の上昇が末梢の神経機能を改善させる。

【運動療法の実際】
監視下トレッドミル歩行の実際の効果とその応用トレッドミル歩行については,歩行による痛みが中等度となれば歩行を中断し、治まるまで休憩。この時跛行出現直後に運動を中断すると、最適なトレーニング効果は表れない。この繰り返しを少なくとも 30 分間行い、慣れるに従い 60 分間まで延長する。中等度の痛みを生じることなく 10 分間以上歩けるようになれば、トレッドミルの傾斜や速度を増していく。初回の歩行速度は、約 2.4~3.2km/hr
が平均的である。頻度を週に 3 回以上、26 週以上の継続を目標とし、平均最大歩行距離 180m、跛行出現距離 128m、6 分間歩行距離を 30~35m とそれぞれ改善させる。
 AHA から PAD を有する患者における最適な運動プログラムを提唱したステートメントにおいては監視下トレッドミル歩行が class-I であり、さらに class-IIa として自宅における下肢サイクリング運動、有酸素上肢運動、レジスタンストレーニングが監視下トレッドミル歩行の代替手段として挙げられた。

【データ】
・動脈硬化性疾患治療における運動療法の位置づけ最適な薬物治療,薬物治療に運動療法を追加,および薬物治療にステント治療を追加した 3 群を比較した試験では跛行出現時間は運動療法,ステント治療追加群で有意な変化は認めなかったが、最大歩行時間は、薬物治療単独群、ステント治療追加群と比較して運動療法追加群で有意に改善を示した。
・監視下運動療法単独と比較し,血管内治療と監視下運動療法は歩行距離・ABIを有意に改善したが,血管内治療単独では歩行能力や臨床転帰を改善しないことが示された。
・生命予後に関するデータとしては,PAD 患者は運動療法を中心とした心臓リハビリテーションの参加率,完遂率はともに非 PAD 患者に比して低値であるものの,完遂した PAD 患者群の生命予後は非PAD 患者と同様にまで維持されることが明らかにされた。

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