若林さんのUber Eatsから考える物流業の魅力

仕事をする上で一つのモチベーションになるのが「人の役に立っているという実感」であったり、「人からありがとうを言われる行動」かもしれない。

そんなん当たり前じゃん。と、普通に思うかもしれないが、冷静に考えてみてあなたの仕事がその類の仕事に分類されるかどうか考えてみて欲しい。

おそらくほとんどの仕事は分類されないんじゃないだろうか。むしろ一生懸命やったのに、「もっと早くできないの?」と言われたり「やり直して」とか、そういう感じだと思う。

失敗してはいけない、とか、そういう意識は創造性を低下させて、ストレスになる。絶対に遅刻できないとか、締切に絶対間に合わせないといけないとか、そんなことばかりが普通になると、なかなか人間らしい感情が失われていく。

そのレベルの仕事を自分がずっと維持できていたとして、他の周りの人がそのレベルに達していないと、それもまたストレスになる。チームで働くとなると、そういう個々のレベルの差の穴埋めであったり、コミュニケーションであったり、必ずやらなければならないことが増える。

物流業は賃金が安い。賃金が安いから人手不足なのかというと、私はそうは思ってない。単純に需要に対して供給が追いついていないということだと思う。つまり、物流業はかなり社会の縁の下の力持ちとして、日本中にはびこっている。ヤマト、佐川、郵便局でほぼシェア9割を占めており、いや、他にも物流業者あるじゃん。と思っても、それらは上記3社の下にくっついて仕事を受けているようなことをしている。

物流業は意外と人気がある仕事だと私は思っている。そもそも人とそんな話さなくていいし、デスクワークが苦手な人はまず物流業にトライしてみることになる。荒っぽいところもあるが、それはそれでお互い気を使わなくていい感じで仲良くもなれる。

Uberのような配達を物流業と言っていいのかはわからないが、やっていることは物流業だと思う。個人宅への配送というのは、なかなか嫌な人に当たるリスクもあるが、実際やってみると接触時間は10秒もないし、面倒な揉め事になっても、その人が莫大な利益をもたらすお得意様というわけでもないので、それっきりでお終いになる。

全くコミュニケーションが発生しないというわけでもないが、程よく人と話せるし、倉庫や大型施設であれば、周りに同じような仕事をしてたり、配送先の飲食店からオフィスから、全然違う仕事をしている会社の人と仲良くなれるチャンスもあるし、そこまでなりたくないと思ったら、マニュアル的に仕事をこなしてすぐ帰ればいい。

結局、そのほどよい塩梅を求めて物流業をやりたがる人は多いと思う。ただ、給料は安いから最近は主婦であったり、意外と女性が増えてきている。デスクワークだったり、人間関係が面倒という人が選びやすい仕事であるし、応募したら条件に合ってればほぼ採用されるので、すぐ働ける。

若林さんがUber Eatsを始めて、「どこかに向かう必要があるオーラ」みたいなことを言っていた。配送というのは、大型トラックなどだとプレッシャーがあるが、自転車でご近所さんに飲み物や食べ物を配達するくらいだったら、気軽でいいし、ありがとうございます。と言われると、モチベーションにもなる。

本当にそういう意味では、やりがいがある仕事とも言える。一時期はコロナ禍ですごいブームになったが、最近はどんな人が利用しているんだろうか。私のような貧乏人は使う理由も金もないが、そういう意味では金持ちの人と話せる機会にもなる。おそらくお礼くらいで話すタイミングはないだろうが、何かしら日本の現実を知れるというか、どういう人がどういう利用の仕方をしているのか知るのは、何かのデータにはなると思う。

人と上手く関われないだとか、そういう苦手意識がある人にとって、物流業の配達のような仕事は、かなり都合がいい。最近では人手不足によって、自営業として物流業に携わる人も増えている。

自分ができる範囲で仕事を請け負ったりすれば、ライフワークバランスも良くなり、好きな仕事とは言えないまでも、苦じゃない仕事くらいにはなる。車の運転が好きな人は特にそうだろうし、地元で働きたいとか、満員電車が嫌だという人はかなり都合がいい。

最近は、なんでもかんでも年収を気にする人が多い。お金は多いほうがいいのかもしれないが、個人的に年収1億とかじゃなければ、別に400万でも800万でもさほど生活水準をあげられる訳でもない気がする。

結局、お金は我慢ができなければ制限なく使ってしまう。家賃7万でも15万でも、風呂の大きさはさほど変わらない。部屋の大きさは変わるかもしれないが、大きな家に住みたいなら田舎に住んだほうが家賃が都内の半分以下になる。

そもそも一日のうちに家より外に出ている方が時間が長い。それなのに仕事で稼いだ金の大半を家賃に捧げるというのは、馬鹿げている気がしてならない。

物流業のような肉体労働をしていると、制服が支給されて、汗をかくことを前提とした仕事なので、職場がクリーニングしてくれたり、靴や手袋まで用意してくれて、飲み物も無料で飲み放題のところもある。

オフィスにオーターサーバーが置いてあるところも一般的だが、リラックスのコーヒーよりも、汗をかいてウォーターサーバーの水を飲むのが、王将の水みたいな感じですごい好きだったりする。

最近だと2024年問題の残業代規制の影響で、おそらくもっと物流業が追い込まれていくかもしれない。

その代わりにAIを導入したり、仕分けのロボットで機械化したり、最終的にドローンで配送するなんてことや、自動運転トラックの専用レーンが首都高に誕生しようとしている。

機械化で便利になり、3ヶ月休みなく働くなんていう人が珍しくない物流業で、健康的な生活ができる人が増えたら嬉しいと思う。その反面、「ありがとう」という一言二言のために頑張る人たちも減るかもしれない。

私は無人レジが好きだが、あえて人のふれあいを求めて有人レジを選ぶ人もいるらしい。私は単純に並ぶのが嫌だし、1品のためにレジで130円です。みたいに言われるのが少し恥ずかしいので、無人レジを使う。

配送でも有人の方が良いという人も一定数いるのかもしれない。

私は散歩が好きだが、仕事場から歩いて家に帰るとなると、目的がある。ふらふら目的もなく歩くのは難しい。配送というのは、目的や使命がある。だからこそ、RPGのゲーム感があるし、仕事の達成感もある。

配達員がいなければ、ほぼ日本の経済は成り立たない。バカにしたような風に言う人も多いが、簡単な仕事ほど真面目に一生懸命やるのは難しい。チャーハンなんか簡単に作れるという人間は、人に食わせられない不味いチャーハンばかり作っているか、一般的な基準に満たないチャーハンしか作れない。

誰でもできるように見える簡単な事を、素晴らしい出来に仕上げるというのが一番むずかしい。物流業もそれに似たところがある。結局やることはA~Bに荷物を届けるだけである。だが、それの量が莫大に増えたり、時間指定などがあると、難しく複雑になる。

そこから荷物の状態や、大きさで料金が変わるなんてことになると、さらにややこしくなる。だが、それを毎日休みなくやってくれている人がいるということに、まず日本全体で感謝が足りてないようにも思える。

お金を払ったら当たり前に届くとか、送料無料じゃないと買い物しないとか、そういう認識があると、無料だから一つの注文じゃなくて何回も分けて注文したり、そこからキャンセルしたり、好き勝手やる人も少なくない。

どんな仕事でもそうだが、現場を知るというのはかなり重要なことだし、表面的に関わっている人が裏でどれほど努力したり苦労しているかというのを知ったほうがいいかもしれない。

そうすれば、もっと物流業の魅力が伝わって、人手不足ということにはなりにくい業界になるんじゃないかと思う。

無駄に思えることを一生懸命やっていきます サポートありがとうございます。