▱鎖骨骨折記7日目 4/12 手術日

手術日の朝を迎えた。
6時の回診で熱や血圧を測られるが寝不足でなすがままだった。うとうとしながら過ごす。

手術は14時からだが朝から物を口にできない。病院や手術の時間によっては朝食とそのあとしばらくは食べることができるらしいが今回は昼前に始まった点滴が翌朝までその代わりとなった。

術衣に着替え、歩いて手術室へ向かう。麻酔医に迎えられ挨拶をする。部屋に上がる際、ここまで履いてきた上履きはどうなるのだろうというどうでもいい事を心配した。
手術台に横になるや否や、バイタルを付けられたり点滴を差し直されたりと慌ただしく準備が進む。昔テレビで見た通りの丸い無影灯だ。緊張しているのだろう、心拍数が上がって笑われてしまった。呼吸用のマスクを当てられるが口の周りに密着して息が吸い辛く苦しい。一度当て直され深呼吸するうちにファストファッションの店舗で流れているようなアッパーなBGMがアリアに変わりいよいよだと悟る。意識の混濁を感じた。ああこれかと頷きながら全身麻酔の淵に沈んだ。

分かりますか、と名前を呼ばれる声で気が付いた。同時に人工呼吸器の管を抜かれ、はいと答えるもひどく嗄れた声になっていて驚いた。手術の礼を言うつもりでいたことを思い出し、声を出そうとしたがうまくできなかった。甲斐駒ヶ岳で脱水症状になった時の事が頭に浮かんだ。

そこからあっという間にベッドに移され、手荒く病室まで戻された。記憶に残っているのは流れる天井を見ながら身体を揺さぶられる感覚である。ストレッチャーに乗せられて救急車で搬送された事はあるだろうか。あれとほぼ同じだった。

病室に戻ると今日の担当だという看護師が現れ、バイタルの管やら点滴を繋いで熱と血圧、そして血中酸素濃度を測り、右肩の辺りに氷枕を当てていった。時計を見ると手術から2時間半ほどが経っていた。水平に寝ていると痛むのでリクライニングベッドを上げた状態で休んでいた。そのうち夕食が始まりいい匂いが届いて来るがおあずけである。楽しみは替えのおしぼり位のものであった。それも満足に使えず痛みと疲れでほとんどを座って過ごした。

ここから辛い夜が始まった。事前に見ていたブログなどでは術後しばらくすると水が飲めたりするという話で期待していたのが、精々うがいのための吸い飲みだけ与えられるだけだった。それも夜が大分過ぎてからの事だった。尿も尿瓶でという事で数回、ベッドの上で用を足した。何とも背徳的な感覚である。人工呼吸器のダメージが大きく、喉の痛みが強い。頻繁に痰を出すのでボックスティッシュが一晩で空になった。真夜中だったが嘔吐き声は遠慮しなかった。

気付けば結構な熱である。とにかく暑い。そして右腕、というか背中から斬られたような痛み、左腕は点滴で動けない。1時間毎に血圧計が動くので気になって眠れない。寝ようとしても眠れない。

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