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レオン

[ネタバレ含みます]

公開 : 1994年9月14日
監督 : リュック・ベッソン
ジャンル : アクション

周りにこの映画が好きな人が多かったので見てみたのですが、結論から言うと面白かったけど私はあまり好きではなかったです。ちなみに完全版を見ました。
ロリコンを正当化してるみたいな批判があったりしますが、そういう所ではなくて、マチルダに普通にイライラしてしまったというか・・・見た目は子供中身は大人的に言われてるみたいですけど、私にはちょっとませた年相応の女の子にしか見えなくてあまり感情移入ができなかったのかもしれません。
でも確かにビジュアルはめちゃくちゃ好みでした。マチルダを絵に描きたくなるのも良く分かります。あと未成年の飲酒喫煙シーンは当時としてもセンセーショナルな表現で物議を醸したらしいですが、こういう退廃的表現は色気があるし絵的に強いインパクトがあって惹かれるものがあります。映画はあくまでフィクションであって道徳の教科書ではないのだからこういうシーンにどんどん規制を設ける最近の傾向はどうなのかなと個人的には思います。

全部見終わって、マチルダはファムファタールのメタファーとして描かれているように感じました。運命の相手とも訳される単語ですが今回は「男を破滅させる魔性の女」としての意味です。ファムファタールといえばサロメが有名ですがマチルダはこのサロメを少し模しているようにも思えました。

ちなみにサロメは聖書にある洗礼者ヨハネの斬首のシーンが絵画のモチーフとして数多く描かれています。このシーンをざっくり説明すると、まだ幼い少女サロメのダンスに感激した権力者のヘロデが「なんでも欲しいものをやろう」と言ったところ、ヨハネを嫌っていた母のヘロディアがしゃしゃり出て娘のサロメに「ヨハネの首と言いなさい」と差し向けた結果本当にヨハネの首をサロメが貰ってしまったという場面になります。絵画では設定が脚色され、サロメは少女ではなく美しく艶やかで男性を惑わす魅惑的な女性として描かれるものがほとんどです。
つまりサロメは悪意を持ってヨハネを処刑させて首を欲しがったわけではないし、本来は妖艶な女性でもないわけです。これってすごくマチルダに重なるなぁと思ったんですよね。
マチルダの関わるところ…家族、レオン、マチルダを紹介されたトニーも危機に晒されます。マチルダには全く悪意はないのに周囲がどんどん破滅していく訳です。そして大人びた風貌で本人も18歳と偽りますが本来は12歳の少女。絵画に描かれるサロメを彷彿とさせます。

あと私が気になったモチーフが観葉植物です。レオンは観葉植物を自分と似ている友人だといって、どんな時もレオンと一緒に行動します。最後はマチルダに託されてレオンの分身として描かれてましたね。
マチルダが観葉植物を抱えて歩くシーンがとても印象的だったのですが、あの鉢のサイズってちょうど人間の頭くらいだなーと思ったんですよね…。そして排気口から観葉植物を落とすシーン。あそこでレオンとは今生の別れとなるわけですが、あのシーンが斬首を暗示しているようにも…見えませんかね?めちゃくちゃ簡潔にまとめると、少女のマチルダは意図せずレオンの首を貰ったという構図になりサロメと重なる訳です。

画面のつくりが絵画的で作品全体から監督の美意識を感じました。監督はパリ出身で芸術を愛していたということですから、現代版「洗礼者ヨハネの斬首」を描いたのかもしれません。分かりませんが。私はとりあえずそう解釈することにしました。

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