指輪物語TRPG 第1章『南方人の策略』第1回
今回からはオリジナルで作ったシナリオを遊んでいきます。
まあオリジナルといいつつも、しばらくは基本ルールブックの世界設定を活かした物語になるわけですが、それには理由があります。
まず一つ目は、このシステムが邦訳されたばかりのルールで、参考にできる邦訳シナリオがない中で手探り状態でシナリオを作っていること。
二つ目は、参加者の中で指輪物語の世界設定の知識量にばらつきがあること。
指輪物語は世界設定がしっかり作りこまれており、どうせ遊ぶならこの独自の世界を楽しんで遊びたいよねと思っています。
そのため、最初は拠点となるブリー村を中心に冒険が始まり、設定をふんだんに盛り込んでおります。
前回の冒険はこちら
メンバーは『霧の星』から継続しているメンバーと、今回から新規で遊んでくれるメンバーが加わりました。
プレイヤー・ヒーロー
ウーナ(バルドの民の闘争者)
バルドの民の裕福な商人の娘。幼少の頃より、王の竜退治の物語を聞いて育った。大人になったウーナは必然的に戦士となり、商人たちの護衛として故郷から遠く離れた西の地までやってきた。商人たちは取引を終えて故郷へ帰っていったが、ウーナはふさわしき強敵と戦ってその実力を示したいという強い思いに駆られ、見知らぬ土地での冒険に挑戦する。
モリエル(北方の野伏の守護者)
若くしてエリアドールの民を守ることにすべてを費やしてきた。族長のアラゴルンは遍歴の旅として南方に下り、各地でサウロンの手先と戦っている。族長不在の今、より一層エリアドールの守備を固めなければいけない。モリエルは任務の合間にブリー村の踊る小馬亭に立ち寄り、各地から集まってくる情報を仕入れることにした。
アウストリ・ステイルアンブロット(ドゥリンの民のドワーフの探宝者)
アウストリは復活したエレボールで鍛冶や工芸の技を高めてきた。だが年月が経つにつれ、トーリン・オーケンシールドがそうしたように、失われたドワーフの宝をその手に取り戻したいという思いが強くなってきた。今こうしている間にも、父祖の宝が悪しき者どもに穢されているのは我慢ならない。アウストリは鎚を置き、斧を手に放浪の旅に身を投じた。
イムナチャール(荒地の国の森人の研究者)
トゥイディマールの子。リョバニオンの最北端に古くからいるアイルガルザ族の流れをくむ氏族に生まれた。
霧ふり山脈の反対側からエリアドールまで旅をしてきて、この地の文明の要となるブリー村に滞在している。そこでカンパニーと合流して共に冒険をすることになる。
厳しい土地で生きてきたためか狡猾で素早く、頭の回転が速い。
カレン(北方の野伏の伝令者)
旧アルノール王家の血を引くもの。カレン内親王。
直系王族はドゥーネダインの中でも西方の血がより強く発現し、高い能力を持つ。また野伏集団の中でも先陣に立つことを求められるため、元服前の少女であっても一人前の野伏である。その任務は主にエリアドール各地に散る野伏たちの伝令係であるが、家格の高さから各国宮廷への正式な使者としてたつこともある。
カレン(Calen)は幼名。成人後はアラノール(Aranor)と名乗る予定。
物語
1000年前の遺跡を探索した君たちは、
誰一人欠けることなくブリー村へと帰還した。
しかし、君達の心は忍び寄る闇に覆われ、影に蝕まれていた。
ある者は小馬亭で心の傷を癒し、
ある者は影の重荷に耐え切れず故郷へと帰っていった。
そして今、踊る小馬があしらわれた看板の下、
新たなる冒険者が小馬亭の扉を開く――
星の塔の冒険から2週間が経ち、夏至が近づいてきました。
夏至の前の晩になると、ブリー村はにわかに活気づいてきます。そう、年に一度の夏の煙輪祭りです!
ブリー丘のまわりにある村々から、年に一度の“夏の煙輪祭”に人間とホビットが集まってきます。一行が泊まる踊る小馬亭も部屋は満室となり、集会室はいつもに増して大賑わいです。
その中に、旅慣れた様子の一人の中年のホビットがいます。身軽だが身なりはよく、至極まっとうなホビットに見えます。彼は集会室の大衆の中から一行を見つけると、何かに納得したかのようにうなずきながらやってきました。
彼の名前はビルボ・バギンズ。ホビット庄のホビット村に住む裕福なホビットで、数年ぶりに煙輪祭に参加しに来たようです。
彼は一行のことをパラディン(前回までカンパニーに加わっていたホビット)やガンダルフからよく聞いているようで、冒険の資金援助をしたいと申し出てきました。その見返りとして、冒険譚や戦利品、地図なんかを所望したのです。
一行はその申し出を受け、これまでの冒険譚を語って聞かせました。周囲には人だかりができ、こうして夏至の祭りの前夜は更けていくのでした。
翌日は快晴でした。お祭りの会場はブリー村の緑の広場です。広場にはたくさんのテントや露店などが並び、人々でごった返しています。広場の中央には祭りの会場が確保されていて、皆さんは参加者の列に並びます。代官が手短に挨拶を済ませ、いざお祭りが開催されました!
色とりどりの見事な花火があがり、あちこちで歓声が響きました。子供たちはそこら中を走り回っています。
お祭りの参加者は審査員の前に立ち、名前を述べてから煙を吐いて技術を競います。ある者は大きくて形の良い煙の輪を吐き、ある者は意気込みすぎてせき込み、またある者は二重の輪っかを吐いています。
去年の優勝者のアデラードの番です。彼は大きなキノコの形をした煙を吐きました。こうもり傘です!さすがの業に観客も唸りました。
そうして観客から感嘆の声が漏れたり、ヤジが飛んだりしている中、ついにウーナ、アウストリ、モリエルの出番がやってきました。
バルドの民のウーナは鳥たちと親しく、鳥の形をした煙を吐きました。それは見事な出来栄えで、観客たちもウーナの美しさに思わずため息をついてしまう者もいました。
アウストリは煙で愛馬を形作りました。いかめしいドワーフからは想像できないほど繊細な業で、あまりの見事さに誰も言葉を発することができないほどでした。
モリエルが審査員の前に立つと、観客からは野次が飛んできました。北方の野伏はブリー村では歓迎されないのです。
モリエルは完全に白けた雰囲気の中競技に挑みますが、案の定せき込んでしまい、失格となってしまいました。
その後も競技は続きますが、やがて全員の審査が終わり優勝者の発表です。
今年の優勝者はアウストリでした。
昨年の優勝者のアデラードは、見事なパイプをアウストリに贈ります。パイプには銀の象嵌が施してあり、真珠色の取っ手がついていました。
3人が競技を終え、露店などで楽しんでいると、一人の老人が一行の元へやってきました。それはガンダルフでした。
彼は祭りのために花火を仕込んできたようです。また、ガンダルフも喫煙を楽しむ人でしたから、この煙輪祭を大いに楽しんでいたようです。
こうして一行は、辛く苦しい冒険の後のつかの間のひと時を楽しんだのでした。
それから数日後、サルンの浅瀬にいるハルバラドが知らせを携えてやってきました。それはこのような内容でした。
ハルバラドはブリー村の踊る小馬亭で怪しい人物がやってこないか監視を続けます。一行はブリー郷を回って情報を集めることにしました。
元村、小谷村、アーチェト村を回って集めた情報を統合すると、サビアンが廃屋の宿に潜伏していることを突き止めました。
それはブリー郷の東端にある、宿と呼べるかもわからないようなぼろぼろの小屋でした。
一行は急いで廃屋の宿に向かいます。
ウーナが小屋に入ると、ごろつき連中の中にサビアンがいました。サビアンは腰の武器に手を伸ばしますが、続けて入ってきたイムナチャール、モリエル、アウストリを見て作戦を変更しました。彼は裏口に向かって走りますが、カレンが回り込んでいたため逃げることはかなわず、投降しました。
一行はサビアンを捕縛し、ハルバラドが待っているブリー村へと帰還するのでした。
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