指輪物語TRPG 第1章『南方人の策略』第6回
前回に引き続きオリジナルシナリオです。
前回の冒険はこちら
プレイヤー・ヒーロー
ウーナ(バルドの民の闘争者)
バルドの民の裕福な商人の娘。幼少の頃より、王の竜退治の物語を聞いて育った。大人になったウーナは必然的に戦士となり、商人たちの護衛として故郷から遠く離れた西の地までやってきた。商人たちは取引を終えて故郷へ帰っていったが、ウーナはふさわしき強敵と戦ってその実力を示したいという強い思いに駆られ、見知らぬ土地での冒険に挑戦する。
モリエル(北方の野伏の守護者)
若くしてエリアドールの民を守ることにすべてを費やしてきた。族長のアラゴルンは遍歴の旅として南方に下り、各地でサウロンの手先と戦っている。族長不在の今、より一層エリアドールの守備を固めなければいけない。モリエルは任務の合間にブリー村の踊る小馬亭に立ち寄り、各地から集まってくる情報を仕入れることにした。
アウストリ・ステイルアンブロット(ドゥリンの民のドワーフの探宝者)
アウストリは復活したエレボールで鍛冶や工芸の技を高めてきた。だが年月が経つにつれ、トーリン・オーケンシールドがそうしたように、失われたドワーフの宝をその手に取り戻したいという思いが強くなってきた。今こうしている間にも、父祖の宝が悪しき者どもに穢されているのは我慢ならない。アウストリは鎚を置き、斧を手に放浪の旅に身を投じた。
イムナチャール(荒地の国の森人の研究者)
トゥイディマールの子。リョバニオンの最北端に古くからいるアイルガルザ族の流れをくむ氏族に生まれた。
霧ふり山脈の反対側からエリアドールまで旅をしてきて、この地の文明の要となるブリー村に滞在している。そこでカンパニーと合流して共に冒険をすることになる。
厳しい土地で生きてきたためか狡猾で素早く、頭の回転が速い。
カレン(北方の野伏の伝令者)
旧アルノール王家の血を引くもの。カレン内親王。
直系王族はドゥーネダインの中でも西方の血がより強く発現し、高い能力を持つ。また野伏集団の中でも先陣に立つことを求められるため、元服前の少女であっても一人前の野伏である。その任務は主にエリアドール各地に散る野伏たちの伝令係であるが、家格の高さから各国宮廷への正式な使者としてたつこともある。
カレン(Calen)は幼名。成人後はアラノール(Aranor)と名乗る予定。
物語
君たちは再びゴブリンの本拠地に攻撃を仕掛ける。
分岐点では見張りのゴブリンが待ち構えていた。
すぐに見張りを倒したが、左右の道から続々とゴブリンたちが集まってくる。
君たちはゴブリンたちを迎え撃ち先手を打ったが、
ゴブリンたちの数の多さに圧倒され、次々と負傷していく。
戦況は圧倒的不利。
君たちはすぐに撤退することにした。
目的は十分果たしたのだ。
小谷村へ帰り、体を休めながら夜の襲撃に備える。
天高く月が昇るころ、ついにブリー郷の命運をかけた戦いが幕を開けた――
月と篝火に照らされたゴブリンたちは、牧草地を一斉に走り出しました。
一行は弓を引き、最前列のゴブリンに狙いを定めます。
4人の弓手から放たれた矢は1体のゴブリンに集中し、ウーナとカレンの矢が突き刺さってゴブリンは倒れました。
アウストリは槍を投げます。槍を投げるには遠すぎる距離でしたが、素晴らしい投擲で別のゴブリンを貫きます。急所に刺さったはずですが、鎧のせいで思ったより傷は浅かったようです。
ゴブリンたちの反撃です。
矢が一斉に放たれ、雨のように降り注ぎます。
カレン、ウーナ、イムナチャール、モリエルは次々と矢を受け、傷を負っていきます。鎧と盾のおかげで重傷は免れましたが、ウーナはすでに疲労感を感じ始めました。
アウストリはドワーフ製の武具によって守られ、傷を負うことはありませんでした。
ゴブリンたちは半分ほどの距離まで迫ってきています。
5人は2射目を放ちました。ひと際大柄で指示を出している大将のゴブリンを狙い、ウーナとカレンは重い矢の一撃を与えます。
盾と鎧を貫通し傷を負わせますが、そのゴブリンは憎悪をむき出しにして威嚇してきます。
ゴブリンたちは、今度は弓だけでなく槍も投げてきます。
モリエルとカレン、イムナチャールに矢が鋭く突き刺さります。
ウーナは2本の矢を急所に受けてしまいました。
アウストリは相変わらずドワーフ製の武具に守られ、無傷のままです。
ついにゴブリンたちが目前までやってきました。
中には、昼間の5人の襲撃を受けて傷を負っている者や、士気が下がっている者も見受けられます。
5人は自分たちの数倍もの数のゴブリンを相手に、一歩も引かず迎え討ちました。
走ってきたゴブリンの勢いを利用して、モリエルの長剣が素早く振られます。
あまりにも見事な一撃に、ゴブリン大将の首は胴体から離れ、空高く飛んでいきました。ゴブリン軍はどよめき、浮足立ちます。
さらにアウストリがドワーフの鬨の声を上げ、ゴブリンたちは完全に士気が下がりました。そして斧の一撃をゴブリンに与えます。
カレンは味方を鼓舞し、戦意を高めます。
イムナチャールは斧を振るいますが、ゴブリンの盾によって阻まれました。
ウーナは、後方から矢を射かけてくる弓手を狙い、大弓をきりきりと引き絞ります。鋭い弓弦の音と共に放たれた矢は、混戦の中狙いを過たず風を切ってまっすぐ飛びます。凄まじい矢の威力に、ゴブリンの首が飛びました。
大将が倒され浮足立ったゴブリンたちでしたが、すぐに別のゴブリンが指示を出し始めます。数において圧倒的有利であることを思い出したゴブリンたちは、まだやれるぞと言わんばかりに5人の英雄たちに襲い掛かります。
1人につき数人がかりで取り囲み、さらに後方から矢を射かけてきて、ゴブリンたちは完全に勢いを盛り返しました。
あまりの数の多さに、次々と重傷を負っていく英雄たち。
ゴブリンの曲剣によってずたずたに切り裂かれ、次々と毒の矢を受けてしまいます。
モリエルとイムナチャールは見に纏う武具が重く感じられ、思うように体が動かせません。
ウーナはすでに片膝をつき、肩を上下させながら苦しそうに呼吸をしてやっとの思いで持ちこたえています。
カレンは劣勢の味方を鼓舞し続けます。
アウストリはゴブリンの兵士に斧を振るい、鎧ごと切り裂いて倒しました。
イムナチャールは仲間を守ろうとしますが、疲労でうまく行動できません。
瀕死のウーナとモリエルは後方に退き、待機させていた馬に乗って小谷村へ撤退を始めました。
ゴブリンたちは踏みとどまって戦う部隊と、ウーナとモリエルを追って小谷村へ向かう部隊へと分かれました。
残ったゴブリンは勝利を確信し、攻撃の手が激しさを増します。
アウストリは目の前のゴブリンを倒したことによって弓手に狙われ、3本の矢が鎧を粉砕してアウストリの肉体に突き刺さりました。
ついに頑健なドワーフさえもが、戦いの疲労を感じ始めます。
カレンは目の前のゴブリンの曲剣で斬りつけられ、ひどい傷を負います。
イムナチャールはぼろぼろになりながらも、かろうじて剣の攻撃を防ぎました。
カレンは仲間を鼓舞し続けてきましたが、ここで攻撃に転じます。
小剣を巧みに振るい、一撃を与えてきたゴブリンの心臓を突き刺しました。ゴブリンの心臓の鼓動は止まり、そのまま草むらに倒れ込みました。
アウストリは3人の弓手に突撃し、一撃のもとに1人のゴブリンを斬り倒します。ついにゴブリンたちの数は3人となりました。
イムナチャールはアウストリを守ろうとしますが、体が言うことを聞いてくれません。
アウストリは粗末なナイフを抜いた弓手の攻撃を軽々といなします。
イムナチャールは、ゴブリンが力を振り絞った最後の悪あがきをまともに食らい、ついに大けがを負ってしまいます。
イムナチャールはふらふらになりながら撤退を始めました。
後を追おうとするゴブリンでしたが、すぐさまアウストリが割って入り、斧の一撃で兜ごと頭蓋を粉砕します。
カレンは弓手の一人を引き受け、狙いすました小剣の一突きで喉をつきました。ゴブリンの弓手はごぼごぼと声にならない音を発し、くずおれました。
最後の一人となったゴブリンは撤退を試みますが、アウストリの隙をつくことはできません。
ドワーフが全力で振るう斧は凄まじい威力で、いとも簡単にゴブリンの首を跳ね飛ばしました。
ついに牧草地のゴブリンは全滅しました。
カレンとアウストリは疲労のあまりばったりと倒れ、月が輝く夜空を見上げます。二人にはもう、これ以上戦う力は残っていませんでした。
一方そのころの小谷村では、瀕死のウーナとモリエルが危機を報告していました。
村を守るために立ち上がった村人たちは、襲撃に備えて掘った塹壕に隠れ、ゴブリンの襲撃を待ち構えます。
やがて、ウーナとモリエルを追ってきたゴブリンたちが小谷村へやってきました。
普段は平和で静かな小谷村が、戦いの喧騒に包まれました。
矢の応酬が続き、身を隠すことのできないゴブリンたちは次々と倒れていきます。一方、村人たちは塹壕によって守られ、酷い傷を負ったものは僅かでした。
矢の嵐を生き延びたゴブリンたちは、ついに塹壕のところまでたどり着きました。こうして村人とゴブリンの戦いが始まりましたが、襲撃に十分備えていた村人が優勢でした。
モリエルは重傷を負いながらも果敢に迎え討ち、混戦の中一人のゴブリンを斬り伏せます。
すぐに勝敗は決しました。
ゴブリンはほとんどが殺され、手傷を負った弓手がただ1人だけ逃げ延びました。
村人の損害は少なく、5人の負傷者が出ましたが、柵と塹壕を活用しながら戦ったおかげで死んだ人はいませんでした。
小谷村はゴブリンを撃退したことによって歓喜に包まれます。
戦いの興奮冷めやらぬまま、アーチェト村からの使者は、自分の村の様子を見に行きました。
アーチェト村を襲撃したゴブリンは全員殺されており、村人は5人が負傷、1人が死亡していました。
この規模の襲撃にしては、奇跡的な戦果でしょう。
5人の英雄たちは、風見丘陵のゴブリンの襲撃を撃退したとして、アーチェト村で大歓迎を受けます。
小谷村でもほとんどの村人から賞賛を受けますが、「よそ者が来たからゴブリンたちもやってきたんだ」と言って憎しみの目を向ける者も、古い人間達の間に僅かながら存在しました。
とはいえ、よそ者を嫌う小谷村とアーチェト村では、今後この5人は英雄としていつでも歓迎されることでしょう。
このようにして、中つ国第三紀2965年夏の“ブリー郷の戦い”は幕を閉じたのでした。
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