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指輪物語TRPG『南方人の策略』第2回

前回に引き続きオリジナルシナリオです。

前回の冒険はこちら

物語

新たなる冒険者が加わったカンパニー。
まずは過酷な旅の傷と疲れを癒す。
滞在するブリー村ではちょうど夏の煙輪祭が開催され、
大いに祭りを楽しんだ一行。
祭からしばらくしてハルバラドが訪ねてくる。
星の塔に潜んでいた山賊団の頭が逃げ出して、
現在はブリー郷に潜伏しているという。
君達はブリー郷の村々を回って情報を集め、
廃屋の宿で南方人を捕縛した――

ブリー郷の地図

ブリー村の〈踊る小馬亭〉で監視を続けているハルバラドの元へ山賊団の頭のサビアンを連行し、一行は尋問を開始します。
そこで判明した事実は、彼が山賊団の頭以上の存在であることでした。
彼はウンバールの工作員で、エリアドールの遺跡を調べ、冥王に仕える者たちが隠れられる拠点をこの地に作ろうとしていました。また、ブリー村で情報を仕入れ、影に情報提供をしているようです。
現在彼が連絡を取っているのは、風見丘陵の遺跡跡に潜むゴブリンたちでした。また、南連丘の地下に巣食っているオークどもとも連絡を取り合い、ブリー村の情報を垂れ流していたようです。

それを聞いたハルバラドは、野伏でも知らないうちに秘密裏に影の手先がブリー郷へ迫っていることに危機感を抱きました。
そしてカンパニーに頼みごとをするのです。
「野伏である私の言葉はこの土地では無力だ。君たちがブリー郷の各村に警戒の知らせを伝えてくれないだろうか。私はこの男を近くの野営地まで運び、仲間たちに協力を要請しようと思う。我々が戻ってくるまでの間、ブリー郷を見回って警戒してくれ」

そしてこう付け足します。
「もし小谷村に行くことがあれば、オズワルドという老人を頼るとよい。我々野伏と接触を持つ数少ない人物だ。何かしら力になってくれるだろう」
そうしてハルバラドはサビアンを強引に引きずりながら去っていきました。

さて、残された一行は、〈踊る小馬亭〉名物であるバタバー氏の極上のエールを飲みながら、ブリー郷の各村を回る計画を立てます。最終地はアーチェト村で、有名な黒ビールを飲もうと盛り上がりながら夜は更けていくのでした。

翌日、一行が出発しようとすると、がやがやとした声が外から聞こえてきます。
何事かと思い外へ出てみると、目の前の緑の広場にたくさんの村人が集まっています。その中心にはブリー衛視隊がおり、この騒ぎの原因となっているようでした。
彼らに話を聞くと、どうやら昨夜のうちに小谷村で羊が惨殺された事件が起き、衛視隊が今朝調査に向かったようですが、村人に追い返されてしまったようです。
代りに調査をお願いしたいということで、引き受けた一行は、警告を知らせる順番を変更し、まずは小谷村へ向かうことにしました。

ブリー村を出発するカンパニー

一行が小谷村に向かうと、よそ者を嫌う村人の疑いの視線が突き刺さります。
やがて一人の屈強な若者が立ちふさがり、「ここじゃ見ない顔だな。この村にはよそ者が来て楽しいところなんてないぞ。」と話しかけてきます。
一行はブリー郷に危険が迫っていること、昨夜の事件の話などをすると、遠巻きに様子をうかがっていた村人たちが突然険悪な雰囲気になり、取り囲んできました。そして一向に向かって、「何をしに来た、よそ者が!」「ここはお前らが来るところじゃない。さっさと山の向こうに帰りな」「どうせブリー村の衛視隊の差し金だろう」「面倒ごとはごめんだ、俺たちのことは放っておいてくれ!」といった厳しい言葉をかけます。

一行は根気強く説得を試みます。
アウストリが正式な名乗りを上げ、ドワーフの武骨な威厳をもって村人を黙らせ、モリエルは歌を歌って村人を落ち着かせます。そして狡猾な森人のイムナチャールが巧みな弁舌で巧妙に情報を聞き出していきました。鳥と会話ができるウーナは小鳥を呼び、村人の心に喜びを湧かせます。その美しさに見惚れる村人もいるほどでした。
こうして一行はすっかり村人の警戒心を解くことができ、無事に警告の知らせを届けることができました。
また、羊の事件について聞くと、オズワルドという大地主のところへ行くと良いと教えてくれました。
というのも、騒動の現場はオズワルドが所有する敷地内だったからです。それと同時に、住民たちは一行に警告します。「あの爺さんには気を付けな。怒りっぽくて意地悪な偏屈じいさんだよ。」「あんなだから奥さんもいなくなってしまうんだ」

そうして一行は村はずれの邸宅へやってきました。オズワルドの家は石造りの立派な建物でした。
彼の家を叩くと不機嫌そうな老人が出てきました。しかし、北方の野伏であるモリエルとカレンを見た瞬間、オズワルドの険しい表情は和らぎます。
彼の招待を受け、中に案内される一行。お茶を飲みながら事の事情を話します。
オズワルドは事件の解明を求めていましたが、村人たちがブリー衛視隊を追い払ってしまったので困っていたようです。一行は彼の協力を得て、事件現場の調査に乗り出しました。

現場となる牧草地に行くと、羊の死体はすでに片づけられていました。しかし、初夏の陽気で伸びてきた牧草が踏み倒された跡があります。丹念に調べていくと、一人のゴブリンの仕業だったことがわかりました。
痕跡を辿っていくと、チェトの森まで辿ることができましたが、鬱蒼と茂った森は地面まで陽が差さず、下生えはほとんどありませんでした。それでも最初は痕跡を辿れましたが、足跡はやがて一本の木へ向かっています。どうやらこのゴブリンは悪知恵が働くようで、痕跡を消すために樹上を移動していったようです。これ以上の追跡は熟練の狩人ですら不可能でした。
ただ一つ分かったのは、すでに風見丘陵からゴブリンの一団がおりてきて、チェトの森のどこかに潜んでいるということでした。

広大な範囲を捜索するには時間がかかるため、一行は先に村への警戒の知らせを届けに行きます。
すでにチェトの森に入っていた一行は、アーチェト村に先に寄ることにしました。

天蓋のように広がった木々の枝葉はよく晴れた初夏の日差しを遮り、ひんやりした空気が、軽く汗ばんでいた一行には心地よく感じられます。
しばらく森を歩いていくと、少し開けた広場に日光が降り注いでいるのが見えました。広場の中央には20mにもなるとても大きな樫の木が聳えたっています。中央の大木の周りにいくつもの木造の家屋が建っており、残りの家屋は森の中に建っています。また、大木の洞を利用していたり、小さな小屋を樹上に立てているものも見られます。
一行が村に入ろうとすると、樹上の小屋から鋭い声が飛んできました。どうやら見張りのようです。
「招かれざる来訪者よ、そこで止まれ!」すると小屋から縄梯子がカラカラと落ちてきて、弓を背負った一人の男が降りてきました。「ここではよそ者は歓迎されていない。何の用件でここへ来た?」

一行が一連の話をすると、彼は「わかった、そういうことなら森番の所へ案内しよう。」と言いました。
そういうと彼はついてこいというように身振りで示し、足早に村を進んでいきます。
彼が案内したのは村の中心にある樫の木で、一番下の太い枝にはしっかりとした小屋が作られています。その小屋からは縄梯子が垂れていました。見張りの男は「この上に森番がいる」と一言伝えただけで、すぐに自分の任務に戻っていってしまいました。

縄梯子を登っていくと、木製の床に丸く開けられた穴から縄梯子が垂れていることが分かります。その穴を通ると、バルコニーのような場所に出ました。目の前には小屋が建っており、木製の床の周囲は柵で囲われ、眼下にはアーチェト村が広がっています。ここは森の奥も見通せる高さで、怪物の襲撃にもいち早く気付けるようになっています。
小屋をノックすると、一人の男が出てきました。背は高くありませんが、引き締まった身体とがっしりした肩幅を持っています。髪も髭は伸び放題で、鋭い目つきが一行を見据えます。
「俺はアーチェト村の森番、高木家のフィッチだ。君たちはいったい何者で、どういった用でここまでやってきた」

ここでもまた風見丘陵のゴブリンの話をしますと、フィッチは中で詳しく話そうと言って扉を開けてくれました。

フィッチに続いて家の中へ入ると、そこは簡素な森の男の家でした。床には獣の毛皮が敷かれ、壁には実用的な道具に混じって、鹿の角や獣の爪や牙が飾られていました。調理場のほかにはベッドも椅子もなく、簡易的な寝床と丈の低い机があるばかりです。

フィッチは毛皮を敷き、そこに座るように言いました。そして摘みたてのベリーや保存されていたナッツと共に、野草を摘んで乾燥させた独特な香りのお茶も出してくれました。

フィッチは一向に話し始めます。
「さて、話を続けようか。アーチェト村の者はブリー郷の他の連中とは違い、外にも目を向けている。我々は森の脅威と隣り合わせで、風見丘陵からチェトの森に降りてくる怪物たちを常に警戒しいち早く対処している。だから今回の話にも協力できるはずだ。まずはこちらでも見回りを強化しよう。そしてゴブリンの襲撃を察知したら、各村々に伝令を走らせよう。土地の者しか知らぬことだが、チェトの森の外縁と東街道との間に位置する小山の上には石造りの小さな砦があり、アーチェト村の者はこの砦から街道やチェトの森の外縁を行き来する旅人の動きを密かに見張っている。砦は普通に見ただけでは大昔の廃墟にしか見えないが、俺の命令で、いつも1人以上の番人が詰めている。ここには地元の衆だけが知る秘密の抜け道がいくつもあり、見張り役の番人は余所者が村へ辿り着くよりずっと早く、警戒を呼びかけることができるのだ。」

そうして一行と共に計画を立てていきます。
フィッチの見立てでは、おそらく小谷村が襲撃されるだろうとのことでした。
「ゴブリンもバカじゃない。羊の騒動の件から察するに、アーチェト村が油断なく警戒していることに気付いて小谷村で事件を起こしたのではないだろうか。」
「もちろんアーチェト村も襲撃される危険性はあるが、小谷村の連中と違って我々は武装しているし、このような問題を解決してきた経験がある。だから君たちには小谷村の警戒と守備に当たってもらいたい。」
「襲撃は夜間だろう。奴らは日光をひどく嫌うからな。」

フィッチと計画を立てた一行は、今後は小谷村を主として防衛することにしました。
そしてフィッチと別れを告げ、元村へ向かいます。

次々とコネクションがふえて増えていくカンパニー

他の2つの村とは違い、元村はよそ者にも寛容で、重大な話があると村人に言うと、すぐに穴造家の大婆様のところへ案内してくれました。
彼女は深刻な顔をしてあなた方の話を聞きます。
話が終わると「よし、わかった。そういうことならあたしゃ喜んで協力させてもらうよ。煙輪祭のチャンピオンもいるしの」そういってアウストリに茶目っ気たっぷりにウインクするのでした。

こうしてブリー郷の各村々に警告を届けた一行は、防衛の拠点となる小谷村へ向かい、体を休めたのでした。


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