GWに買った本読んだ本

最近は結構忙しくて読めなかったが、GWを10連休できたので本を何冊か購入して読んだ。技術書だけでなく、他のジャンルの本も多少読めた。

ちなみに、結局買って読みきれなかった本もあった。本好きな人は他人の本棚を眺めるのが好きだと聞く。そういう人に向けて、読み切っていなくとも買った本もあげておく。

・現代ロシアの軍事戦略
・独ソ戦
・データ指向アプリケーションデザイン
・並行プログラミング入門
・存在と時間
・現代思想入門

現代ロシアの軍事戦略 ―― 読了

今も続いているロシアウクライナ戦争は、多くの人にとってそうであったように、私にとっても例外なく大きなニュースだった。主権国家同士が戦争をするのを見るのは、私たちの世代(ミレニアル世代)でははじめて経験することだったからだ。

日本、とくに本州に住んでいるとついつい忘れがちだが、実はロシアは隣国だったりする。しかも、北方領土は実質ロシアが支配しているから、北海道は実はロシアから見れば目と鼻の先なのだ。

調べてみると、まともに島そうな水晶島から根室岬までは7キロしかない。都内で考えると、渋谷から用賀くらいまでの距離にあたる。海上ということもあるから陸上を進軍するのとはわけが違うが、島に軍を進駐させて拠点を作られたらすぐに北海道に到着できてしまう距離だということがわかる。

2014年にロシアがクリミア半島を併合することになったが、その際注目されたのがロシアの戦争手法だった。その後ハイブリッド戦争と名付けられたこの手法は、ロシアの軍事作戦の特徴として各国の専門家からの注目を集めることになる。

ハイブリッド戦争というのは要するに、正規軍だけでなく非正規軍や情報線、サイバー攻撃などを混ぜて敵国と行う戦争のことを指す。2014年にロシアは、たとえばある特定の地域で突然自身に有利な政権を立ててみたり、SNSを駆使して相手の士気を下げるような情報線を仕掛けたりしたらしい。

残念ながらロシアの軍事力は西側諸国に比べて弱い。これはロシアの経済基盤がそこまで大きくなく、経済力がそのまま軍事力の足かせになっているからだ。純粋な軍事力だけでは敵である西側諸国に到底敵わないことは、ロシアの中枢も把握している。だから、ハイブリッド戦争という経済力をそこまで必要としない戦略をとるわけだ。

最後に忘れてはならないのはロシアという国家の思想だ。これが私たちのように西側諸国に住んでいると非常に末恐ろしいのだ。歴史的な経緯により、ロシアにとって西側諸国は敵であり続ける。権威主義的体制をとるロシアを西側諸国は認めないからだ。この構図が、ロシアに「永続戦争」という認識をうませている。

「永続戦争」というのは、つまり常にロシアが戦争状態にあるという意味だ。この思想は全面に発揮され、たとえば2016年にアメリカの大統領選挙にロシアが介入した。ロシアとアメリカは「永続戦争」状態にあるのだから、ハイブリッド戦争戦略の利用により敵の戦力を未然に防ぎたかった。そこで利用したのが大統領選挙だったというわけだ。この作戦は功を奏し、アメリカはトランプ大統領が当選し、しばらく混迷した政治状況になった。

ちょうど同時期に安倍政権が親露戦略をとろうとした。しかし忘れてはいけない。日本は西側諸国なのだ。「永続戦争」状態にあるという認識をもつロシアとわかりあえるはずはない。安倍政権のそうした戦略は失敗だったと言える。著者も安倍政権が明らかに対露戦略を読み誤っていたと指摘している。

ロシアは独自の思想をもち、我々とは政治的な価値観を共有できない国家であることを忘れてはいけない。一方でSNSを見ていると、ロシアをただヒステリックに恐れたり罵倒しているだけの様子が見受けられる。そうではなく、たとえばロシアの経済力に伴う軍事力に関する制約がある話、ロシアのそもそもの戦争や軍事に対する思想など、冷静に相手を分析する必要がある。

独ソ戦――読了

なんだかロシアにハマってしまった人のようになっている。世界史の授業を除けばロシアの歴史はあまり興味がなかったため、学んだことがなかった。しかし、大人になって学んでみると結構おもしろい。

昔ソ連という国があった。私の世代はそもそもソ連崩壊後この世に生を享けた人がほとんどだろう。だから、ソ連という国はテレビのモノクロ映像からしか知ることはない。どのくらいの規模の国だったかもあまりよく知らない。

第二次世界大戦の発端となった独ソ戦と呼ばれる戦争があった。やはり世界史で名前は知っていたが、現代史ということもあり教科書の後半だった。学校の世界史の授業はだいたい現代史は年度の後半に履修することもあり、比較的解説が薄めの印象がある。

ドラゴン桜ではむしろ、受験では現代史が出るのだから現代から学んでいけ、みたいなことを言っていた気がするが。とにかく印象が薄いのだ。

本書を読んで、ちょうど今戦争をしているウクライナが戦場だったというのを知った。本書ではウクライナの地名がたくさん出てくるが、数年前だったらまったくわからなかっただろう。今は都市名を聞いただけで地理的にどこにあるかまでわかってしまう。

独ソ戦は、ヒトラーとスターリンがお互いに自分の力を過信しすぎてミスを連発する泥沼の戦争だったという印象をもった。もちろん戦況の分析はそう簡単なものではなく、ミスをしているというのは後世の分析から見た「印象」なのは忘れてはいけない。にしてもスターリンは正確な情報を無視したり、ヒトラーは無意味な戦闘を各地で連発するなど、戦争の仕方がおそまつな印象を受けた。

もう一つ戦争終結を妨げたのはナショナリズムだろう。大祖国戦争を掲げ、スターリンは引くことをしなかった。加えて徹底的に相手を追い詰めた。ヒトラーも同様に報復として相手を殲滅することを望んだ。その結果、戦争は長期化し泥沼化した。地獄になったのだ。

本書が挑戦したのは歴史の通説だった。独ソ戦は、ソ連では神話のように語られドイツではヒトラー一人に罪がなすりつけられる形で語られることが多かった。実証的な研究が発展しなかったのだ。つまり独ソ戦に対する現代の認識は歪んでいた。

歴史は「History」ということから物語なのかと思いがちだが、そうではない。元は古典ギリシャ語でἱστορία (historia)、つまり探求して学んだことや知り得たことを指す言葉だ。実証的な探求こそ歴史の真髄だ。本書は探求し、歪みを正す一冊である。

データ指向アプリケーションデザイン――一部を読了

現代のアプリケーションは、データが中心になりつつある。いや、昔からそうだったかもしれないが。

データ周りのミスは重大だ。データ周りのミスは、そのまま事業継続の可否やインフラコストなどに反映されてしまう。データはアプリケーションのそれ自体寿命より場合によっては長い。会社組織はこの寿命の長い存在をどう使うかで、今後の成長性さえ占われることになる。

この本は、休み明けに始まる新卒研修の資料作りのために再読した。とくに今回読み込んだのは4章のエンコーディングの箇所だ。近年人気の Protocol Buffers だけでなく、Thrift や Avro といったプロトコルについても歴史的経緯とそうした技術の狙い、具体的にどういう実装がされているのかについてを細かく説明している。

並行プログラミング入門――一部を読了

本書は Rust を使って並行処理を学べる本として話題になった。私も購入してから少しずつ読み進めている。

並行処理周りの話は本によって言っていることが変わる。なぜそれが起こってしまうかというと、各タームの定義がそもそも曖昧な状態で文章を進めてしまうからだと思っていた。

本書はその轍は踏んでいない。丁寧にタームに対して定義を与え、議論を進めていく。おかげで私の頭の中も読むたびにどんどんクリアになっていく。

今回はやはり、新卒研修の資料作りの参考のために読み込んでいる。Web アプリケーションのサーバーサイド開発においてはとくに5章が必須であるから、そこを重点的に読んでいる。議論が明快で頭にすっと入ってくる。

存在と時間――一部読了

4月の「100分de名著」がハイデガーの特集だったらしく、本屋で特集されていた。実は前半部は原著でしっかり読んでいたのだが、後半の死の存在分析?あたりは概要しか知らないことを思い出した。読んでみようと思い購入した。3、4巻を買った。

岩波文庫の熊野先生の訳が気に入って、ずっと岩波を買っていた。4冊の分冊になっている。冒頭にその巻で語られることの簡単なまとめがあり、解説も豊富なのが特徴だ。時間を見つけて読み進めたい。

現代思想入門――未読

そもそも大学時代に現代思想を専攻していたことから、入門書はもういいかなと思って買わなかった。しかし職場の同僚が買うなどして話したそうだったので、私も買って読むことにした。

聞くと結構売れているらしい。哲学が求められる時代はあまりいい時代とは言えないと思うし、哲学が何かを教えられるわけではない(「ミネルヴァの梟は迫りくる黄昏に向かって飛び立つ」)。しかし、私たちがどういう共通認識を根底に持っているのかを知るのには役立つだろうと思う。

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