「つんく♂節感」のある歌詞とリズム

こちらの記事がとても長くなってしまったので、特に伝えたかった点を単独記事にしました。

メロディーのリズムを崩さない言葉選び

新メンバーに16ビートを叩き込む、音の立ち上がりや切り方にこだわった結果生まれた「つんく歌唱」…など、つんく♂さんが曲のリズム感を重要視しているのは有名な話。そのつんく♂さんのこだわりは作詞にも表れていると思うのです。

こだわりが表れている分かりやすい例として、字余り、字足らずを徹底的に排除している点が挙げられます。今までも感覚的には感じていたと思うのですが、以下に挙げる具体的な工夫に気付いたことがこの記事を書くきっかけです。新曲「ギューされたいだけなのに」の歌詞に、

今週の末はどうすんの ランチと映画で済ませんの?
今週の末のその前 今日とか明日はどうすんの?
たまーにゃ長電話(ながでん)してこいよ


歌詞の意味だけ考えるならば、「今週の末」ではなく「今週末」でもいいんですよね。ここのメロディーは「こん しゅ うの /まー つー のー」の2拍3連符から「そ の ま え」の4分音符に切り替わることで変化が生まれているわけです。「今週末」の場合、「こん しゅ うー/まー つー のー」となり、せっかくのサビのメロディーがなんだか間延びしてしまいます。

「長電話(ながでん)」もですね。「ながでんわ/してこいよ」の場合、8分音符に乗せようとすると「わ」が字余りになってしまい、そのままだとメロディーが崩れて違和感を感じてしまいます。

この2つの例は、メロディーのリズムを崩さないだけでなく、①で述べたような"つんく感"も生まれた珍しい例でしょう。つんく♂楽曲の教科書があったら載せるべき。

このように、メロディーのリズムを崩さないために歌詞を工夫している例はこれだけではありません。小田さくらさんのデビューシングル、①でも「待つ子ミジメックス」「言えナイチンゲール」というやっばい歌詞と奇妙なダンスで有名な曲です(MVの衣装が田中れいなさん以外壊滅的に似合っていないのも面白いポイント)。

品川五反田 麻布に六本木 新宿新大久保 どこで遊んでるの?(1番)
大阪名古屋 札幌仙台 広島博多 日本にいるの?(2番)」


日本各地の地名を羅列する歌詞ですが、1番の「麻布に六本木」の箇所のみ「の」が入っています。ここはずっと16分音符で細かく刻んでいると思うのですが、「あざぶ」ではなく「あざぶに」にすることで字足らずが解消されています。

ここで挙げたのは一例ですが、つんく♂さんの歌詞は上記のような理念の下に作られていると私は確信しています。リズム感を第一に掲げているのは、決して歌唱指導に限った話ではなく、つんく♂さん自身の作詞作曲の中でも生きているのではないでしょうか。自身が「天才」ではなく「プロ」であると語るつんく♂さんのことですから、おそらく意識的にやっているのでしょう。これができるのは作詞作曲を一人でやる人の強みですね。結局は「歌」なので、面白い言葉選びをしても、心地よいメロディーに乗らなければ耳に残る名フレーズにはならないのでしょう。

私は元々アイドル好きではなくR&B、ロック、レゲエなどが好きだったので、歌詞よりリズム、楽器のリフを重視して音楽を聴くタイプでした。なので、J-POPに多い字余り、字足らずなのに無理にメロディーに乗せている曲を聴くとむずがゆく感じてしまうのですが(2番の歌詞は特に字余りになりがちな気がする)、つんく♂楽曲でそれを感じたことは一度もないんですよね。YouTubeで見たあややをきっかけに偶然ハロプロを聞くようになったのですが、スムーズに沼にはまったのはその点が大きい気がします。

おまけ
余談ですが、私の一番好きな歌詞はDo it now!のこの部分です。

宇宙のどこにも見当たらないような
約束の口づけを原宿でしよう
出典:http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=66634


こんなに美しい歌詞、宇宙のどこにも見当たらない…

わが永遠の推しこと高橋愛さんが活躍されていたプラチナ期の楽曲は、LOVEマシーン期から一転してダサさが減り、ストレートな名曲が多いですね。お気に入りは「気まぐれプリンセス」「Fanrasyが始まる」「SONGS」「雨の降らない星では愛せないだろう?」とか…絞れない!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?