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【ビリー・エリオット ~ リトル・ダンサー~】あの頃はなんにでもなれたあなたに #私のスタンディングオベーション


誰にだって、一度は身体にビリビリと「電気」が流れた瞬間があるはず。
私にとって、『ビリー・エリオット』と出会ったこともその一つ。

むかし、原作の『リトル・ダンサー』を読んで主人公「ビリー」のパワーに圧倒された私は「ビリー」のようにバレエがしたくなり親に頼んだけど、お金がかかるから、とにべもなく断られた。

「ビリー」のように諦めずレッスンに通うだけのエネルギーも、周りが目を見張るような才能も現れなかった訳で、私は「ビリー」になり損ねたのでした。

それでも、何にだってなれる気がしたし、何でも実現できると思っていたあの頃。うってかわって、大人になった今は、”自分は一体何者になれるんだろう”と立ち止まってしまいそうになる。そんな時、私はこのミュージカルを思い出して初心に返るのです。

自分の中に眠っていたきらめきと衝動を呼び覚まし、誰かを思って行動する信念に基づく強さと人の温かさを思い出させてくれる作品。

それが『ビリー・エリオット』

#私のスタンディングオベーション は、ミュージカル好きな人達が、それぞれに”思わずスタンディングオベーションしたくなった、大好きなミュージカル作品”について、自由に書いたミュージカル紹介エッセイです。
扱うのは、日本で舞台化した作品、日本にはまだやってきていない作品、
映画のみの作品、アニメで有名になった作品など様々。単なる批評や紹介ではなく、個人のエピソードも交えた一種の愛を語っていただきます。

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誰でも「ビリー」が大好きになってしまう

(あらすじ)
舞台は1984年、イギリス北部の炭坑町。11歳のビリーは炭坑労働者の父と兄、祖母と暮らしている。母は幼い頃に亡くなった。ビリーはボクシングが好きじゃないけど、お父さんもみんなも男の子はボクシング教室に行くのが当然と思っている。
ある日、偶然バレエ教室のレッスンを目にして、ふとしたことから飛び入り参加したビリーは、バレエに特別な解放感を覚える。様々な困難を乗り越えながら、バレエ・ダンサーを目指すビリーの成長を描く。

映画『リトル・ダンサー』は、2000年公開。スティーブン・ダルドリーの映画監督デビュー作でもある。
それを基にした舞台『ビリー・エリオット』は、なんと映画監督のダルドリー自らがミュージカル版も演出したもの!

だから、映画のファンも置いてけぼりにしない格好でありながら、映画にはなかった空想の中の鮮やかなショーシーンや心情の描写に加えて当時の炭鉱を取り巻くサッチャー政権の政治的状況や反発も含められており、舞台版では思う存分やってやるぜ!という監督自身の思惑がピッタリはまった結果なのか、映画版よりもショーアップしてエネルギッシュになっています。


本作の舞台は1984年、イギリス北部の炭坑町。主人公「ビリー」は幼くして母を亡くし、愛を求めていますが、肝心の父と兄は町をあげての炭鉱ストライキの真っ最中。その才能のよき理解者となるバレエコーチの「ウィルキンソン先生」との関係性がまた素晴らしい。
バレエと出会い、大きな時代の変化の波に飲まれて夢を諦めるしかないのか!?という壁を色んな人のサポートで乗り越え、時にぶち壊して成長していくビリーと大人たちの姿に、何回見てもグッときてしまうのです。

私が特に好きなシーンは、舞台版にしかないウィルキンソン先生と生徒たちのいきなり始まるショーシーンと、映画版・舞台版に共通する、バレエ上達のために「大切なもの」を持ってくる課題で、ビリーが母からの手紙を持ってくるシーン!
ビリーは、その手紙を暗唱出来るほどなのに、あえて先生に”読んで”と頼む。先生の読む声が徐々に母の声に重なって聞こえ、ビリーが母との思い出に包まれるシーンは愛情一杯で涙腺が緩んでしまいます。

子どもの時はビリーに共感していたのに、今は”果たして自分の子どもがやりたいことを見つけてきたときに、肯定して応援してあげられるんだろうか”なんて考えさせられたり・・・。

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先細りする炭鉱町とそこでしか生きられない父や兄たちと、相反するようにエネルギッシュで鮮やかな未来のあるビリーとの対比が、舞台版ではよりはっきり見える演出になっています。思わず手拍子をしてしまうキャッチーな曲と相まって非常に鮮やかで、でもフッとライトが消えた瞬間、途端に切なくて!!

他にもたくさん素敵な場面がありますが、劇場の、あの舞台機構でしか観れない景色があるので、百聞は一見に如かず!

自分の「電気」が流れた瞬間を思い出すきっかけに

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いつの時代も昔から、主人公が自分にとっての「Electricity」に気づき、壁にぶち当たりながら先生や仲間と才能と努力でクリアしていく様は、『明日のジョー』や『ガラスの仮面』、朝ドラしかり、皆を魅了する普遍的なテーマですよね。
『ビリー・エリオット』もまさに同じ系譜にあると言えるのだから、ワクワクしないはずがない!! 

観終わった時には、私たちもビリーが発するまっすぐなエネルギーに触発されて、
”もう一回、全力でやりたかったこと追いかけてみたい!”
”色んなことがあって諦めてしまった夢があったけど、やっぱり諦めたくない!”

など、自分の中で過去に生まれていた「電気」を今からでも遅くない!と思い出せるはず。
 
なぜ、「Electricity」「電気」としきりに言ってるかって?舞台版『ビリー・エリオット』の二幕でビリーが心の声を吐露して歌う舞台においてめちゃくちゃ重要な曲のタイトルが、まさに「Electricity」。
心身ともにビリビリと来る一曲です!
 
誰の中にもきっと「ビリー」はいる。この作品が自分でも気づいていなかった情熱を思い出すきっかけになるかもしれません。

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あまりにも映画「ビリー」役のジェイミー・ベルが素晴らしいために、日本では舞台化不可能と言われていた作品。

なんと!ついに!長いオーディションとレッスンを経て選ばれた精鋭ビリーによる舞台の幕が今年も上がりました!!そちらも是非観てほしいけれど、映画からでも!原作小説からでも!裏切りません!

2020年9月から開幕している「ビリー・エリオット」の公式サイトは、こちら👇



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■ もう一度何かに熱中したいけど迷っている人
■ 夢を諦めずに頑張る少年・夢を応援する大人達のドラマに熱くなりたい人
■ たくさん泣いてじわーっとあたたかい気持ちになりたい人


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ERIKA
美しく身体を動かすことに憧れるものの、
一日休みがあれば、ずっとベッドの上にいたい。
そのくせ、旅だと予定をツメツメに入れがち。
好きなものは、観劇後のご飯、サウナと本と器。

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