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#38【心理的安全性の視点から見たチーム・アンジュルムの強さ】ハロプロについて語る

■概要

昨今の社会環境変化の中にあり、至るところで、マネジメント・組織改革が声高に叫ばれている。本記事では、ハロー! プロジェクトに所属するアンジュルムというグループを取り上げ、その組織としての強みについて分析・考察したものである。その分析・考察の拠り所として、近年HRXの主題として取り上げられる「心理的安全性」に着目した。いくつかの事例・エピソードをもとに、アンジュルムが、心理的安全性を備えた成果を出し続けられる組織であるという主張をする。さらに、彼女たちからの学びを、私たちが実際に、効果的なチームビルディングをおこなうために、役立つtipsとして還元したものを提案したい。

■導入

●背景

VUCAという言葉を聞いたことがあるだろうか?VUCAは以下に列挙する英単語から頭文字を取ってきて合体させたものである。

・Volatile(不安定な)
・Uncertain(不確かな)
・Complex(複雑な)
・Ambiguous(曖昧な)

この言葉は2010年代後半よりビジネスの場で使われることが多くなった。AIの発達・新型コロナウィルスの蔓延など、将来のことを予測しづらくなった現代社会を表現した言葉である。

技術革新・自然災害・環境問題に関わる社会的課題は、ますますその解決が困難なものになっていき、既存の思考パラダイム・システムでは、本質的な解決のアプローチを見出すことが難しくなってきた。

そして、それらの社会的課題から落とし込まれるビジネス課題についても、より複合的・多律背反的なものとなり、従来のマネジメント・組織のあり方では太刀打ちができないものばかりとなった。

我々人類は今、マネジメント・組織のあり方について、革新を迫られているのである。

そして、そのあり方を変えるためのヒントを得るべく、私は今、アンジュルムというアイドルグループに注目している。

アンジュルムというグループについての詳細な説明は、のちに譲るが、彼女たちはハロー! プロジェクトに所属する10人組のアイドルグループである。

近頃、私のTL上で、アンジュルムという組織の魅力について言及する人の数が増えてきているように感じる。それは、現代組織論、リーダーシップ論、さらには発達心理学や社会学に根ざした主張であることが多い。

それらの主張の中で、代表的なものとしては、例えば次のようなテーマが取り上げられている。

・先代リーダー(和田彩花)と現リーダー(竹内朱莉)の在り方の違い
・竹内朱莉が発揮するリーダーシップとメンバーへの影響
・年下メンバーたち(橋迫軍団、のちに説明する)がグループ全体にもたらす影響

これらは私の目にふと入ってきた分析や考察(ほとんどがツイッターの呟きベースだが)のほんの一部にしか過ぎず、これ以外にも数多くのオピニオンをSNSのプラットフォーム上で見ることができるだろう。

しかしながら、これらの分析や考察はアンジュルムという組織の「強みと考えられるものについて、断片的に捉えたもの」であり、統合された理論に基づいて可視化・言語化されたパッケージとして存在するわけではない。

本noteの位置づけは、私がこれまでに学んだ組織論、リーダーシップ論に基づき「なぜアンジュルムが良い組織と言えるのか、それはどのように形成されているのか」という疑問に対する答えを可能な限り見つけたい、というものである。


●意義 / 目的

本noteのメインターゲットは、次のような人々である。

・コミュニティの中で指導的な立場にある者
・リーダーシップを「発揮する」機会がある者(※)

前者については、例えば、経営者、組織のリーダー、教師、親などが挙げられるだろう。一方で、後者については、肩書きは関係なく誰でもなり得るものと考えていいだろう。

※ 「リーダーシップ」とは組織をリードするリーダーと、それに付いていくフォロワーとの相互関係のことを指す。リーダーが持つ能力や資質を意味するわけではない。詳細については「池田守男, 金井 壽宏(2007). サーバント・リーダーシップ入門 株式会社かんき出版」を読まれたい。


本記事には、上記でターゲットとして取り上げた方々が、これから効果的なチームビルディングをおこなっていくために、ヒントとなる情報を盛り込みたいと考えている。そして、そのヒントをアンジュルムという組織から学べないかという、斬新な試みをおこなったものである。

そこで、本noteでは以下の3点をシェアしたい。

・成果を出せる組織に関する一般論や背景知識
・アンジュルムという組織が成果を出せる仕組み
・私たちが学べること

様々な組織論とアンジュルムという組織の文化・カルチャーを紐付けることを通じて、ひとつのパッケージとして、チームビルディング論を提案したいと考えている。

今回はこれまで研究されてきている組織論の中でも、とりわけ近年注目を浴びている「心理的安全性」という視点から、チーム・アンジュルムの強みを解き明かしていく。

そこで次のセクションでは、その心理的安全性について、基本的な概念や思想を説明する。

■心理的安全性とは?

心理的安全性とは何か?カウンセラー、あるいは、会社で人事部門に配属されているビジネスパーソンなどには、聞き馴染みのある言葉であろう。

学術的には、心理的安全性は次のように定義されている。

チームの心理的安全性とは、チームの中で対人関係におけるリスクをとっても大丈夫だ、というチームメンバーに共有される信念のこと

Edmondson, Amy C., and Zhike Lei. "Psychological safety: The history, renaissance, and future of an interpersonal construct." Annual review of organizational psychology and organizational behavior 1.1 (2014): 23-43.

この定義は少しわかりづらいかもしれないので、以下のような日常的なシーンをイメージすることで理解を深めてもらいたい。

さて、会社勤めの皆様(広く言えば社会生活を営む者すべて)の多くが、日々の仕事・暮らしの中、次のようなことで悩んでいるのではないだろうか?「あの先輩に相談すると怒られるから黙っていよう」「自分の意見など聞いてもらえないだろうから黙っていよう」「しかし黙っていたら失敗して結局怒られてしまった」など、職場の中で自分の意見や考えを出そうにも憚られる、そんな機会に(特に若い世代の方は)出会すことが多いのではないだろうか?

実は、心理的安全性が担保された組織では、この真逆の様相が見られる。役職の上下に関係なく、どのメンバーも忌憚なく意見を出し合い、組織の使命やビジョンの達成に向かっていく。所属するメンバーが、気持ち良く、そしてそれぞれが活躍しているという自覚を持ちながら、組織全体として(もちろん個人としても)成果を出し続けることができるのである。

よくある誤解として「心理的安全性が担保された組織=生ぬるい仲良しこよしの集団」という理解であるが、これは全く違うということに注意されたい。その違いを理解するための図を以下に示す(この図は本noteにおいて繰り返し現れる、重要な図であることはここで述べておく)。

引用先は図中に記載

この4象限のうち、成果を継続的に出すことができる組織は、1番右上のエリアに属している。詳細については、のちのセクションにおいて、改めて触れることにしよう。

心理的安全性が担保された(かつ仕事の基準が高い)組織においては、健全な衝突が起こり、結果的に組織としてのアウトプット、パフォーマンスの質が向上するのである。

では、組織がこの心理的安全性を持つためには何が必要となるのだろうか?「石井遼介(2020). 心理的安全性のつくりかた 日本能率協会マネジメントセンター」によれば、心理的安全性には4つの因子があり、それらは次のようなものであると主張している。

① 話しやすさ
② 助け合い
③ 挑戦
④ 新奇歓迎

まず① 話しやすさは、多様な視点から状況を判断し、率直な意見とアイデアを募集することに繋がる。次に② 助け合いは、トラブルに際して、必要な事実を共有・相談し、支援・協力を求めることを可能にする。そして③ 挑戦は、組織・チームに活気を与え、グループ全体としての変革をもたらすことに結びつく。最後に④ 新奇歓迎は、メンバー個人が才能を輝かせ、それぞれのスタイルで活躍できる風土を実現する。

のちに続く、本論のセクションにおいては、これらの4因子をアンジュルムという組織の文化・カルチャーの中において、見出すことができるのではないかという筆者の意見を述べていく。

■本論の展開

以下に続く本論においては、次のような展開で議論を進める。まず、アンジュルムのヒストリーを辿り、メンバーの変遷や各時代におけるグループの特色について振り返る。次に、現在(※)アンジュルムに所属するメンバーについて、グループにおける位置づけや役割を見ていく。そして、アンジュルムというチームの強みを紹介する。その強みは、メンバーの発言や行動、それに伴った結果を拠り所としており、それらが心理的安全性に根ざしたものであることを主張する。最後に、今回の分析・考察を通じて、我々がチームビルディングをおこなう際に、活かせるマインド・アクションについて提案していく。

※ 本記事の執筆時点2022年9月を指す。

■本論

●アンジュルムのヒストリー

アンジュルムは多くのグループアイドルの例に漏れず、卒業と加入を繰り返し、組織内の文化・カルチャーを変えてきたグループである。

アンジュルムの前身グループであるスマイレージから遡ることにして、グループ変遷の中でも、とりわけ文化・カルチャーの進化に大きな影響を与えてきたのは、次の4つの出来事であると捉えている。

  1. 2期メンバーの加入(6スマ誕生)

  2. グループ名の変更(スマイレージ→アンジュルムへの改名)

  3. 初代リーダー卒業(和田彩花→竹内朱莉への継承)

  4. 三色団子の加入と橋迫軍団の形成(年下メンバーの台頭)

以下では、上記4つの出来事によって、グループ内の文化・カルチャーがどのように変化したのか、組織論の観点から私の見解を述べていく。


1. 2期メンバーの加入(6スマ誕生)

2期メンバーである、竹内朱莉、中西香菜、勝田里奈、田村芽衣の4人が、スマイレージ(アンジュルムに改名する前のグループ名)に加入した。この時代は、事務所やマネージャーからの「熱い」叱咤激励により、ビシバシと鍛えられていた。

恐怖や罰によるマネジメントは、短期的な成長をもたらし得るのだが、長期的には停滞・限界を迎えることが知られている(石井, 2020)。しかし、幸いこの時代は短く、メンバーたちはパフォーマンス面において、グングンと力を身に付ける期間となった。実際、この時代のステージパフォーマンスのクオリティは目を見張るものがある(と個人的には思っている)。


2. グループ名の変更(スマイレージ→アンジュルムへの改名)

華やかな容姿とキャラクターを持った3・4期メンバーが加入した(佐々木莉佳子・上國料萌衣は現在も活躍中)。荒っぽいマネジメントは息を潜め、初代リーダー和田彩花を中心とした、強さと優しさを合わせ持ったリーダーシップが発揮されることになった。

彼女はメンバーたちにビジョンを示し、力強く引っ張っていくカリスマ性を備えていた。そしてカリスマ性に加えて、メンバーたちを妹と呼び、深い愛情でメンバーたちに接することになった。このように「目標達成的」かつ「家族的」な色合いも見られるようになった時代である。


3. 初代リーダー卒業(和田彩花→竹内朱莉への継承)

和田さんが卒業し、グループのリーダーは竹内朱莉に引き継がれた。のちのサブセクションでも紹介するように、竹内さんは和田さんとは異なるリーダシップを発揮することになる。

彼女は、メンバーをグイグイとリードしていくのではなく、メンバーとの対話の中で、意志決定をしていくというスタイルを使う。これはメンバー間が相互作用する機会を増やし、それまで以上にメンバーの強みを生かすことに繋がる、その基盤を作り上げることになった。


4.三色団子の加入と橋迫軍団の形成(「成長する」組織の誕生)

このフェーズが、現在のチーム・アンジュルムの姿形として解釈してよいだろう。後輩メンバーを中心にした橋迫軍団(のちに説明する)が形成され、組織内の多様な階層構造、ネットワークが生み出されることになった。さらに、メンバーたちが個別に頑張ってきたことを、組織に還元しようという気持ちが、より強く見られるようになった。

このように組織内外を巻き込んで、自発的に成長していく生命体のような組織が現在のチーム・アンジュルムであると言えるだろう。


今回紹介した組織論的なグループの捉え方については、次の著書を大いに参考にした。組織論やチームマネジメントに興味のある方は、ぜひ読まれたい。

本記事では、4.三色団子の加入と橋迫軍団の形成(「成長する」組織の誕生)以降のフェーズにフォーカスを絞り、先のセクションで紹介した心理的安全性の視点から、組織としての強みを論じていく。

ただし、その強みについて論じる前に、現アンジュルムメンバーの10人について、簡単に紹介を書かせてほしい。

●現アンジュルムメンバー紹介

ここでは、現アンジュルムメンバー(2022年9月時点)について、プロフィール、パーソナリティ、そしてグループ内における位置づけや役割(※)を簡単に整理にしていく。

※ ここでいう「位置づけや役割」は、あくまで私の目に写るものとして理解されたい。


・竹内朱莉

竹内さんはグループのリーダーである。歌唱力を筆頭に圧倒的なパフォーマンス力を備えており、全メンバーが彼女に対して絶対の信頼を置いている。一方で、見た目やキャラクターを(後輩からも)弄られてしまう人物であり、親しみやすさも持ち合わせている魅力溢れるメンバーである。


・川村文乃

川村さんはグループのサブリーダーである。可憐な見た目やスタイルと裏腹に、自分が成し遂げたいと思ったことに対しては、常人では考えられないほどの気合い・情熱を注ぎ込む熱い魂を持ったメンバーである。彼女のバースデーイベントに行くとよくわかるが、企画力・実行力の鬼である。


・佐々木莉佳子

アンジュルムにおいて華やかさと強さを最も体現するメンバーである。圧倒的なビジュアルはもちろん、現役ハロメンの中でも最高と呼ばれるほどのダンススキルと表現力でステージを支配する。そのカッコよさとは裏腹に、よく感極まって泣いてしまうという可愛らしい一面も備えており、そのギャップが魅力的なメンバーである。


・上國料萌衣

アンジュルムにおいて、佐々木さんと並び華やかさを強く体現するメンバーである。地上波テレビに何度も出演し、彼女をきっかけにアンジュルムを知る人たちが増えてきているほど、アンジュルムの顔とも呼べる存在である。個人活動は多いが、常にアンジュルム全体のことを考えており、グループ愛が最も強いメンバーである。


・伊勢鈴蘭

伊勢さんは美の象徴と言えるメンバーである。恵まれた容姿やスタイルはもちろんのこと、ステージ上における佇まいが美しく、指先や髪、そして衣装の先端まで気が集中していることが伝わってくる(バレエ経験者である)。あざと可愛いキャラとしての一面を持ち合わせているが、私が思うに、本当の彼女は真面目で芯の強い女性なのではないかと考えている。


・橋迫鈴

橋迫さんはグループの若頭として、後輩メンバーの中心的存在である。現リーダー竹内さんは10代の頃は「悪ガキ」と呼ばれていたが、今では橋迫さんがその地位を受け継いでいる。そして、のちにテーマとして取り上げるが、橋迫さんを含め以下で紹介するメンバー4人とのコミュニティには「橋迫軍団」という名前が付いている。橋迫軍団がグループ内でどのような役割を果たしているかについては、次のサブセクションで語ることにしよう。


・川名凜

川名さんは論理的思考でもって物事に取り組む人物である。彼女のブログを読むと、一見掴みどころがなさそうに思われるため、不思議ちゃんキャラであると認識されている方も多いかもしれない。しかしながら、リーダーの竹内さんからも語られるように、川名さんは、課題の明確化・解決に向けたアクションの具体化を得意とする「しっかりした」メンバーである(2022. S Cawaii! 特別編集 アンジュルムスペシャル)。


・為永幸音

為永さんは非常にうるさい(褒めている)。もはや彼女はアンジュルム以外のグループには入ることができないのでは?というくらいにアンジュルム適性が高い。さらに、美しい容姿とド迫力のパフォーマンスでステージを支配できる能力も持ち合わせ、多くの魅力に溢れるメンバーであると思っている。#しおんぬ大暴れ でツイッター検索すると面白いものが、たくさん見られるかもしれない。


・松本わかな

見た目は子供、頭脳は大人をリアルで行く、アンジュルム最年少メンバーである。幼なく見える容姿から想像しづらいほど、彼女が放つ言葉には知性が溢れ、そして歌唱力を中心に力強く元気いっぱいのステージパフォーマンスが魅力である。おそらく冗談抜きで、アンジュルムで1番賢くて勉強ができるのは松本さんだと思う(笑)


・平山遊季

現時点(2022年9月)での、1番後輩のメンバーである(年齢は松本さんの方が1個下)。平山さんはパフォーマンスから見える度胸の強さが魅力である。象徴的だったのは2021年末のハロコンでのこと。グループへの加入が発表された直後、そのままパフォーマンスに加わるという離れ技をやってみせたのだが、そのとき感じたのは「この子は既に3〜4年くらいグループにいたのでは?」ということであった。そう思わせるほど、落ち着きと自信溢れるパフォーマンスを見せてくれる、いわゆる新人離れしたメンバーなのである。


以上、紹介したように彼女たちは個性や魅力に溢れ、個々人はもちろん、グループとしてステージに立ったときは、特に生き生きとしている姿が目に写る。もっと端的に言ってしまえば「良い組織」として見えるのである(●アンジュルムのヒストリーのサブセクションで「成長する組織」と主張したことに対応している)。

次のサブセクションでは、その「良さ」の秘密に迫るべく、心理的安全性という視点でチーム・アンジュルムの強みを捉えることにした。

●チーム・アンジュルムと心理的安全性

なぜ私が現在のアンジュルムというチームにおいて、心理的安全性が担保されていると考えるのか。その理由を明らかにする前に、■心理的安全性とは? のセクションにおいて紹介している、心理的安全性の4因子について振り返ろう。

① 話しやすさ
② 助け合い
③ 挑戦
④ 新奇歓迎

これら4因子をアンジュルムというチーム内における文化・カルチャーと照らし合わせながら、なぜ心理的安全性が担保されていると考えるのか、その理由を見出したい。

さらに、心理的安全性が担保されているというだけでなく、組織における仕事の基準が高く、結果として成果を出し続けられるチームになっていることも示していく。

まず、4因子についての読み解きから始めよう。


① 話しやすさ

筆者はこの因子を、次のような文化・カルチャーの中において、見出している。

(1)川村文乃による竹内朱莉への進言
(2)橋迫軍団と上國料萌衣との相談ライン

まずは、(1)川村文乃による竹内朱莉への進言 について見ていく。川村さんはサブリーダーとして、グループがどのように見られるのか俯瞰的な視点で捉えることができ、それをリーダーの竹内さんに伝える役割を果たしている。

このことはハロプロが提供する公式のYouTubeチャンネルのひとつであるtinytinyにおいて、竹内さんの口から直接語られている。

川村さんについて語る竹内さん

そして、この川村さんのスタイルがグループ全体に伝播し、現在では「チーム全員で意見を共有し合う雰囲気が生まれたと感覚がある」と竹内さんは語っている(2022. S Cawaii! 特別編集 アンジュルムスペシャル)。

このように、リーダー以外のメンバーから率直な意見が上がってくる組織は、話しやすさ因子が高いことが知られているのである。


次は、(2)橋迫軍団と上國料萌衣との相談ライン について見ていこう。橋迫軍団、つまり後輩メンバーたちは、例えばパフォーマンスなど、アイドル活動をするうえで困ったことがあれば、真っ先に上國料さんに相談しに行く。そのようなラインができ上がっているのである(逆に上國料さん自ら、後輩メンバーにアプローチをかけることもしばしばある)。

知らないことや、わからないことがあるとき、それをフラットに尋ねられるか、ということが、話しやすさ因子に大きく関わるものであることが知られている(石井, 2020)。


② 助け合い

この因子は次のような文化・カルチャーの中から見出されると考える。

(1)参画型・自己開示によるグループ方針の決定
(2)個人活動をグループに還元する意欲の現れ

まずは、(1)参画型・自己開示によるグループ方針の決定 について見ていく。初代リーダー和田さんとの対比する形で論じていく。

竹内さんが頻繁に語る(※)ように「わだちょ(和田さん)は1人でグループを引っ張っていくタイプ、自分は(それができないので)メンバーみんなと相談して方向性を決めていくタイプ」と2人のリーダーシップのスタイルは異なる。

※ このタイプの違いについては、先に紹介したtinytinyでも、またそのほかインタビューでも取り上げられており、もはやアンジュオタなら多くが知るところではあるだろう。


このようにリーダーが自らの悩みや弱さを開示し、それらをメンバーと共有することは、グループ内における相互作用を強め、問題解決力をアップさせるという効果があることが知られている(石井, 2020)。


次は、(2)個人活動をグループに還元する意欲の現れ について見ていこう。ここでは、この要素を特に強く出していると考えられる上國料さんをフィーチャーしていく。

彼女は数々のインタビューにおいて、一貫して「全ての個人活動はアンジュルムのため」と口にしている。その想いは例えば次のように語られている。

個人の活動をさせてもらっても、私的にはアンジュルムにつながってほしい!(中略)アンジュルムは『魅力がいっぱい』のメンバーが多いから、誰か一人でもそこに気になってくれる人がいるといいなって。

2022. S Cawaii! 特別編集 アンジュルムスペシャル

現在のハロプロメンバーの中で、飛び抜けて地上波を中心としたテレビ出演を果たしている彼女だが、やはり多くの人にアンジュルムを知ってほしい、あくまで自分はそのきっかけになれればよい、というスタンスを貫いているのである。

そして、彼女のチームに対する貢献は、メディア出演による知名度UPだけではなく、ステージパフォーマンスの質向上においても大きい。特に、グループの中でも歌唱力が高い彼女は、後輩メンバーの歌の先生となって、例えば高音をどうやって綺麗に出すかといったことについて、自らの知見・スキルを惜しみなくシェアしてくれる存在なのである(2022. S Cawaii! 特別編集 アンジュルムスペシャル)。

このように、個人の利益ではなく、チーム全体の利益を考えられるマインドこそが、助け合い因子を強めるものであると知られている(石井, 2020)。


③ 挑戦

この因子は次のような文化・カルチャーの中から見出されると考える。

(1)時代の変化に合わせた指導スタイルの確立
(2)リーダーによる突然のMC振り

まずは、(1)時代の変化に合わせた指導スタイルの確立 について見ていく。これはグループ全体ではなく、リーダーの竹内さんにフォーカスした話題とはなるが、彼女はいわゆるベテラン組で、現役のハロメンの中では最古参のメンバーの1人である。

竹内さんがまだ幼い頃、当時の指導と言えば、スパルタなやり方が主流であった。彼女はそのような環境下で育ってきたわけである。例えば、休憩中でもおふざけが許されない、練習中に少しあくびをしただけで怒られるなど、典型的な体育会系指導が当時の常識であった(2022. ハロプロまるわかりBOOK 2022 SPRING 株式会社オデッセー出版)。

しかし、竹内さんは現在の時代に合わせ、そのような指導スタイルは取らないようにしている。彼女は「昔はこうだった、だから君たちもXXXしなさい」とは決して言わないようにしているのである。このことは次のインタビュー記事で本人の口から語られている。

私も新人の頃に昔と比較されて怒られるのがすごくイヤだったから、後輩たちに同じことは絶対しないって決めてる。

過去のやり方に囚われず、変えるべきことは変える、これが組織内において挑戦の風土づくりを促進するのである(石井, 2020)。

次は、(2)リーダーによる突然のMC振り について見ていこう。これは文化・カルチャーという概念よりも具体的な事例ではあるが、挑戦の因子を高めるものと考えられ、ここで紹介したいものである。

アンジュオタクの間では有名な話ではあるが、リーダーの竹内さんはライブMC中、事前通告なしで急に他のメンバーに話を振る。振られる側のメンバーは、逆にしっかりと話せる準備をして行かなければならないわけだが、事前チェックがないぶん、話す内容については、裁量・自由度が高く保たれることになる。

この風習があるということは、チームにおいて、各メンバーの試行錯誤が許されるということであり、それはグループとして、前に進むためのブレーキを外すことにつながると考えられる(石井, 2020)。

ちなみに、少し脱線だがライブMCで現在めざましい活躍を見せているのが、最年少メンバーの松本さんである。松本さんは15歳ながら、とても知性に溢れ、クリアで簡潔なコメントを残すことができる人物である。松本さんのトーク力は、リーダーの竹内さんからも信頼を勝ち得ており、次のように評されている。

誰に話をふるか事前に言わないっているスパルタな伝統があるんですね。(中略)わかなちゃんは『これはですね〜』と淀みなく、かつ簡潔で要点を押さえたコメントを言ってくれます。

2022. S Cawaii! 特別編集 アンジュルムスペシャル

最年少のメンバーが輝ける機会を与えられるアンジュルムの伝統、Big Loveである。


④ 新奇歓迎

この因子は次のような文化・カルチャーの中から見出されると考える。

(1)全体性(ホールネス)の現れ
(2)独自の発想の受け入れ

まずは、(1)全体性(ホールネス)の現れ について見ていく。そのための準備として、全体性(ホールネス)の概念について説明する。

おそらく多くの私たちに言えることだろうが、職場での「私」と家庭での「私」は人格が異なる、分離されている状態になっているのではないだろうか?自分らしさの大部分を家に置いてきていることはないだろうか?

これは全体性(ホールネス)が守られている状態とは逆の状態を示している。裏を返せば、職場でも家庭でもどこでも自分らしさを発揮できることが、全体性(ホールネス)が守られているということである(Frederic Laloux(2018). ティール組織 英治出版株式会社)。

自分らしさを失わずに職場で活躍できること、それは自らのコミュニティーで生きることの満足度を高めてくれることに繋がるのである。

そして、アンジュルムというチームにおいては、この全体性(ホールネス)が存在しているのではないかと筆者は考えている。

こう考えたのは、アンジュルムのメンバーに他のメンバーのことについて語ってもらうと、その語られるメンバーの人物像や特徴にブレがない、という気付きを得たからである。これは、いつでもどこでも、その人自身で生きることができていることの現れであると筆者は思っている。

為永さんを例にとってみよう。#しおんぬ大暴れ に代表されるように「うるさい」キャラとして人気を博している(賛辞のつもり)彼女であるが、リーダーの竹内さんからも、最年少の松本さんからも「困ったら為永さんに話題を振れば、オチを作ってくれる、頼りにしている」というふうに語られている。

松本さんは雑誌のインタビューで、具体的に次のように答えている。

Q:メンバーみんな面白いですが、誰の笑いが一番ツボる?
A:ためちゃんですね、ぐふふふふ(笑)。(中略)。竹内さんも困ったときはためちゃんにオチを振ってます。

2022. S Cawaii! 特別編集 アンジュルムスペシャル

竹内さんも次のように同様の旨を語っている。

最近はオチが見えないとなったとき、幸音ちゃんに託すと100%おもしろく締めてくれます。

2022. S Cawaii! 特別編集 アンジュルムスペシャル

これは、ほんの一例に過ぎないが、例えば他には

・川名さんが論理的思考で自らのパフォーマンスと向き合う習性を持つこと
・上國料さんが自らのグループに対して誰よりも熱い愛情を注いでいること

があるだろう。これらのことは、お互いの人物像について、メンバーの間でブレることなく相互理解が進んでいると見られる事例である。


次は全体性(ホールネス)を取り戻すという視点で、もう少し深堀していきたい。アンジュルムに入ると、メンバーたちが自らの全体性(ホールネス)を取り戻すことができるのではないかという事例を紹介したい。

最初に橋迫軍団の台頭について見ていこう。先にも説明したが、この軍団の長は橋迫さんだ。グループに加入して、橋迫さんが全体性(ホールネス)を取り戻す過程を辿るのは大変興味深いことである。

彼女は、グループ加入当初は口数が少なく、お世辞にも溌剌としたキャラクターには見えない少女であった。しかし実際のところ、グループ加入前、つまり研修生時代の彼女は、Juice=Juiceの松永さんと一緒になってふざけ倒すお調子者キャラクターであった。

彼女に大きな変化が生まれたのは、三色団子(川名さん、為永さん、松本さん)の加入がきっかけであった。特に、研修生時代を共に過ごした為永さんの加入は大きく、橋迫さんにとっては、自分らしく振る舞える相手が加入してくれて、嬉しかったのではないかと見ている。

同時に先輩メンバーとなった橋迫さんは、三色団子たちを指導する立場にもなり、そのなかで自分に対して自信を徐々に付けていったのではないだろうか。

そして、あるときから橋迫さんと三色団子を合わせて、橋迫軍団という小集団が誕生した。のちに加入したメンバーである平山さんも含めて、後輩メンバーが先輩メンバーの陰に隠れることなく、自分たちらしく輝ける、活躍できることを示し続けてくれている。

現在の橋迫さんと言えば、リーダーの竹内さんと物理的にジャレ合う(2人は「戦っている」のである)など、研修生時代の「悪ガキ」としての、つまりおそらく本来の彼女としての、全体性(ホールネス)を取り戻した姿を見ることができる。

ここで、せっかくなので2人が戦う姿をご紹介しよう。

2人の勝敗の行方は…もう少し追うことにしよう。

以上は、組織における全体性(ホールネス)の存在について注目した考え方・捉え方である(※)。

※ 全体性(ホールネス)についての詳細が知りたければ、導入のセクションでも紹介した「Frederic Laloux(2018). ティール組織 英治出版株式会社」を読まれることを推奨する。


次は、(2)独自の発想の受け入れ について見ていこう。これは現在グループの中で、強く個性を発揮していると(私が思っている)メンバー:川村さんと平山さんの2人にフォーカスして論じていく。

はじめに川村さんについて。彼女はおよそ「普通の」アイドルでは考えることができない方向と熱量とで、努力を重ね自己実現を果たしていくメンバーであることは知られているだろう。

その中でも、1級マグロ解体師の資格を取得したことは、その最たる例として挙げられる。日本人女性でこの資格を取得したのは初めてであり、マグロを捌くということで、一般的には女性に不利な条件はあるが、彼女はそれをハンデにはせず、黙々とハードワークを重ね、見事に1発で合格を果たしてみせる。

しかし驚くべきは、この資格を取ったことよりも、そのあとのことである。FCイベントで解体ショーを実演するところから始まり、ついには地上波テレビでも解体ショーを披露する機会をゲットしたのである。

これは、個人の「やってみたい、挑戦したい」という想いを支える風土が、アンジュルムには確かに存在していることがわかる良い事例ではないだろうか。

続いて、平山さんについて。彼女のパフォーマンススタイルが「新人らしく」ないことは、多くのファンの間で話題になっている(と私は認識している)。彼女は加入1年目にして、パワフルな歌声・ダンス・表情作りを持ち合わせており、もう既にグループに何年か所属しているのではないかと錯覚させるほど、高いパフォーマンス力と度胸の強さを備えている。

このことについては、リーダーの竹内さんからも次のように語られている。

パフォーマンスに『私はこう見せます』と意志が感じられて、ライブによって見せ方を変えて試行錯誤しているのもわかる。恥ずかしいからできないっていうのがなくて、やりきっている姿が印象的です。

2022. S Cawaii! 特別編集 アンジュルムスペシャル

私が素晴らしいと思うは、この平山さんの新人らしからぬスタイルをリーダー含め先輩メンバーたちが受け入れているというところである。「新人のくせに…」ということは決してないのである。

確かに平山さんは新人離れしたスキルを持っている。そして、それが認められ、自発的に成長できる環境があることが、チーム・アンジュルムにおける新奇歓迎の文化・カルチャーなのではないかと筆者は考えている。


さて、ここまでで、心理的安全性を担保する4つの因子:① 話しやすさ、② 助け合い、③ 挑戦、④ 新奇歓迎が、チーム・アンジュルムの中に見られることはわかってもらえたのではないだろうか。

ここで、もう一度、先に紹介した4象限の図に戻る。チーム・アンジュルムが以下表の中において、上半分のエリアに位置づけられることは確かめられた。

引用先の図をもとに作成

しかしながら、■心理的安全性とは?のセクションで説明したように、心理的安全性だけがあれば良いのかというと、そうではないという話をした。もうひとつ大切な要素として、その組織における仕事の質が高いことも必要である。

心理的安全性×仕事の質の高さ

この2つが揃って初めて、成果を出せる「良い」チームになれるのである。


以下では、アンジュルムというチームでは、仕事の質の高さも求められるという話を、ひとつエピソードを取り上げて紹介しよう。

ここで大切なことを思い出してほしい。それは、アンジュルムのリーダーが竹内さんであるということだ。そんなの当たり前じゃないかと思われるかもしれない。私が伝えたいのは、彼女がリーダーであることが、アンジュルムのステージパフォーマンスの質向上に、大きな影響を与えているだろうということだ。

竹内さんと言えば、歌・ダンス・トークすべてにおいて、高い能力と豊かな経験を持ち合わせているメンバーであり、アンジュルムの守護神とも形容される存在である。

そんな彼女は、これまでのセクションでも述べきたように、根性論や精神論を後輩メンバーたちに求めることはしないが、パフォーマンスの質はプロとして常に高いレベルを求める。

特に大舞台(武道館公演など)を前にしたときは厳しく、メンバーがファンの前に立てるレベルに達していないと判断した場合は「それなりの」指導をすることもある。アンジュルムのメンバーである限り、例え若手で経験の浅いメンバーであろうと、妥協は許されない。

しかしながら、この竹内さんの指導に対して、若いメンバーたちも納得して食らいついていこうとするのが、チーム・アンジュルムの強みである。

それを象徴する具体的なエピソードを紹介しよう。それは橋迫さんが竹内さんに対する想いを熱く語ったブログについてである。

竹内さんのラジオ聞きました📻
めちゃ嬉しい言葉すぎて
仕事中だったから涙堪えてた🥲
ほんとに竹内さんがリーダーの
アンジュルムに加入できて良かったなって
心の底から思います💙

上記ブログより一部抜粋

このブログが書かれる前、竹内さんは60try部という生放送のラジオ番組に出演していた。そのラジオで竹内から「橋迫さんが厳しい指導の中でも、よく頑張ってくれている」という旨の熱いメッセージが橋迫さんに送られたのである。

その話をリアルタイムで聴いていた橋迫さんは、溢れる想いを抑えきれず、上のブログを書いたというエピソードである。

アンジュルムにおいて、リーダーがメンバーたちに求めるものはレベルが高く厳しいものである。しかしながら、それに食らいついてこうするメンバーたち、そしてその頑張りをしっかり見てくれるリーダー、この相互作用によって、チーム・アンジュルムの仕事の質はハイスタンダードなものとしてあり続けるというわけだ。

最後に、もういちど4象限の図に戻ろう。ここまでの議論で次の2つを示した。

①アンジュルムという組織には心理的安全性があること
②アンジュルムという組織においては高い質の仕事が求められること

引用先の図をもとに作成

以上より、心理的安全性の視点から見たチーム・アンジュルムは、この4象限のマトリックスの中で、理想的と考えられるエリアに位置づけられると言えると筆者は考えている。

●アンジュルムに学ぶチームビルディング論

先のセクションでは、アンジュルムにおいて、心理的安全性が見出せる理由を、チームの文化・カルチャーの側面から考えた。

さて、ここでひとつ大切なことを理解してほしい。それは「組織内の文化・カルチャーを直接変えることは難しい、文化・カルチャーは組織内で取られた行動の結果が積み重なって作り上げられたものである」ということである。

したがい、以下では、あなたが良い組織を作り上げたいと思うときに、効果的ではないかと考えられる具体的なアクションを紹介していこう。ここで紹介するアクションは、いずれも上で説明した① 話しやすさ、② 助け合い、③ 挑戦、④ 新奇歓迎を促進するものとして捉えればよい。それらは ●チーム・アンジュルムと心理的安全性 のサブセクションで紹介した、文化・カルチャーの事例から、アクションのレベルに落とし込んだものとして理解されたい。


① 悩み・困りごとの相談をされたら、まず「ありがとう」を伝える

これは話しやすさの風土を高めるための行動である。例え良くないニュースだったとしても、まず勇気を出して話をしてくれたというおこないに対して感謝を伝えよう。

アンジュルム流に言えば「相手からの投げかけに対して、Yesから入ろう(※)」ということである。

※ この「Yesから入るアンジュルムの精神」という表現は、シンガーソングライターの堂島孝平さんによるものである。アンジュルムファンの間では有名な話だが、堂島さん自身も熱烈なオタクである。


② 自分ができないこと・苦手なことを言語化し、皆に伝える

これは助け合いの風土を高めるための行動である。個人で出せる成果というのは、せいぜい小さなものに過ぎない。大きな成果を出すには、チームが必要だ。そこでは思い切って「私はXXXができない、助けてほしい」と伝えてみよう。自己開示をおこない、自ら苦手な部分を曝け出すことは、逆に他者の得意な部分を引き出し、チームとしてのアウトプットを高めることに繋がる。

例えば、竹内さんはパフォーマンスにおいて、自ら得意ではない部分を自覚し、そこは他メンバーにカバーしてもらうようにしていると述べている(2022. S Cawaii! 特別編集 アンジュルムスペシャル)。これは結果的には、他メンバーの強みを引き出す機会を与え、成長を促していると言えるだろう。


③ 新しく学んだことを形式知化し、チームメイトに伝える

これは挑戦の風土を高める行動である。個々人で学んだ知識・経験を積極的にシェアすることで、チーム内にイノベーションの気風が生まれる。例え1分話すだけでもよい。職場の朝礼の時間を活用してもよいだろう。そのことが、お互いの思考の癖・ステレオタイプを打ち壊し、価値共創のチャンスに繋がる(石井, 2022)。

先にも述べたように、上國料さんは、個人のボイスレッスンを通じて身につけた歌唱力、さらにモデル活動を通じて身につけた表現力を、それぞれ惜しみなくメンバーに伝えている。後輩メンバーたちの成長速度が著しいことが、うなずける話である。


チームメイトの努力・頑張りを見つけ、褒める

これは新奇歓迎の風土を高める行動である。大切なのは、ただ「頑張っているね、すごいね」で終わらせるのではなく「(その頑張っていることで)XXできたらいいな」と伝えてみることである。これにより、具体的に相手の次のアクションを引き出すきっかけを与えることである。

川村さんは、1級マグロ解体師の資格を取得した。メンバーたちは、その彼女に対して「マグロを捌いて、自分たちに振る舞って欲しい」と伝えた。資格を取った後も、川村さんは自主的に市場で魚を購入し、魚捌きを練習したという。その努力の甲斐あってか、川村さんのマグロ捌きが、フジテレビ「アウト×デラックス」で本当に披露されることになった。川村さんが自分らしさを最大限に発揮できた、そんな機会になったのではないだろうか。

■結論 / 今後の展望

現状のアンジュルムについて、心理的安全性が担保されていることを確認した。さらに成果を出し続けられる仕組みを備えていることもわかった。

今後、さらに汎用的なチームビルディングメソッドを言語化・具体化していくために、次のようなテーマを取り扱うことになるかもしれない。

グループ体制変動下における組織論的な心理発達レベルの進化と変遷

これを解き明かすことで、ゼロベースからのチームビルディングに知見をもたらすことに繋がるだろう。

また、次に挙げるテーマは、いま紹介したものよりも具体的な事例ベースのものではあるが、これも興味深い内容であると考えている。

竹内軍団と橋迫軍団の組織内フィードバック機構

組織内に多様なネットワークが構築されているときに、イノベーションが起こりやすいことが知られている(Frederic Laloux(2018). ティール組織 英治出版株式会社)。両軍団の相互作用を解き明かすことで、大組織の中に存在する小集団どうしの良い関係の作り方について、知見を得ることができるかもしれない。

その他、興味深いと考えられるテーマは、いくつもあるだろうが、いずれのテーマについても、組織論に関する解像度をより上げてアプローチしていく必要があると思っている。これから長い時間をかけて取り組んでいきたいと考えている。

いずれ「アンジュルムに学ぶチームビルティング論」が体系化され(そのためには多くの人の協力・努力が必要だ)、世の中の経営者のなかで積極的に学ばれるものになることを願っている。


以上、紹介したアクションは、あくまで私の提案ではあるが、あなたの所属する組織を活性化させることに繋がると信じている。特に、あなたが組織の(役職としての)リーダーであるなら、積極的に取り入れてほしいと思っている。

■おわりに / 次回予告

本記事では、心理的安全性の視点から、チームアンジュルムの強みについて、私なりの見解を語らせてもらった。

読者の方からすると、今回紹介した心理的安全性という概念を都合良く当て嵌め過ぎている、そのように感じてしまうことについては、ご容赦いただきたい。逃げを承知で言うが、私は心理学や組織論の専門家ではない(執筆時点では、組織論に関する書籍を読むようになって3ヶ月ほどである)。ということで、本音ベースで申し上げると、今回紹介した概念や考え方について、より高い・洗練された解像度を持った方々からのフィードバックをいただけることを強く望んでいる。

■結論 / 今後の展望でも述べたように、アンジュルムというチームの魅力は、もっと多角的な視点で捉えられるべきであろう。その際は、ぜひジョイントワークという形で参画させてもらえれば光栄である。


さて、次回記事からは、私が普段執筆している内容に戻りたい。次回はハロメン紹介記事として、私の1推しメンであるOCHA NORMA窪田七海さんの魅力について語りたいと思う。私が彼女のどこに惹かれているのか、その熱い想いをつづらせてほしい。


これほどの長文を最後まで読んでいただいたこと、厚く感謝申し上げたい。次回記事でお会いしよう。それでは。

■参考文献

・池田守男, 金井 壽宏(2007). サーバント・リーダーシップ入門 株式会社かんき出版
・石井遼介(2020). 心理的安全性のつくりかた 日本能率協会マネジメントセンター
・Frederic Laloux(2018). ティール組織 英治出版株式会社
・2022. S Cawaii! 特別編集 アンジュルムスペシャル
・2022. ハロプロまるわかりBOOK 2022 SPRING 株式会社オデッセー出版

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