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#2【高木紗友希の脱退に寄せて】ハロプロについて語る

2021年2月11日の夜、ハロプロファンに衝撃が走った。なんとJuice=Juiceのサブリーダー高木紗友希が週刊文春の餌食となってしまったのである。その翌日2月12日の夜、所属事務所の方から高木のJuice=Juiceとしての活動終了が知らされた。
週刊文春の記事によれば、高木は近頃YouTubeで人気を集めている「優里」というミュージシャンと半同棲の状態にあったという。すなわち2人は交際していたということだ。

ハロプロにおいて、アイドル活動中の恋愛はご法度とされている。これまでの例に漏れず、高木もやはり活動終了を事務所より言い渡されたのである。

本記事では、高木紗友希のこれまでの活動を振り返るとともに、今回の処分の是非についてアイドルビジネスのあり方の観点から私の意見を述べたいと思う。

■高木紗友希のこれまで

私は彼女のデビュー時、すなわちJuice=Juice結成時からのファンではない。そのため、ここでは彼女が既にハロプロのDIVAとしての地位を確立(※1)してからのエピソードについて書く。

※1. 高木紗友希はハロプロとしての経歴が10年以上と非常に長い。ここでその全てを語るのは不可能であり詳細はWikiにお任せしたい。

まず、特筆すべき彼女の「歌」について、具体的なパフォーマンス例を挙げながら紹介させてもらう。次に、高木と他のハロプロのメンバーとの交流について、オフィシャルに展開されている情報をベースに見ていこう。

●高木紗友希と歌
言うまでもなく高木の歌唱力は現役メンバーの中ではおろか、OG含めて最高のレベルにあると言っても過言ではない。彼女の歌について長所をいくつかのポイントに絞ってまとめてみたい。

①音域
彼女の音域、特に高音域については歴代最高と言えるだろう。驚くべきことに、彼女は芯のあるヘッドヴォイスでhiFまで持ち上げることができる。

彼女のhiFは「この世界は捨てたもんじゃない」の落ちサビフェイク部分で聴くことができる。ネット上にはタダで聴ける音源が存在せず、ここで述べるのにとどまるだけなのが残念な限りである(※2)。ソロパート「世界は広いが、眺めつくしたい」のラスト「たい」直後にフェイクがあり、ここでhiFまで引っ張る。普通はファルセットで出すような音域だが、彼女は芯のある声で発声できるので非常に力強く聴こえる。

特に「ハロプロ プレミアム Juice=Juice CONCERT TOUR2019~JuiceFull!!!!!!!~ FINAL 宮崎由加卒業スペシャル」におけるパフォーマンスは素晴らしかった。

※2. かと言って、違法にアップロードされている動画を見るのはNGである。ちなみに、U-NEXTを契約すれば圧倒的に安く見れる(過去のひなフェスなども見れる)。気に入ったらBlu-rayを買おう。正しく応援することが、ハロプロの存続に繋がるのだから。

②声の抜け
彼女は非常に声の抜けが良い。丹田での息の支え+高い位置での息のポジションキープの2点ができているからだろうか、喉につっかえる感じがほとんどない。そして、このつっかえのなさが①でも述べた高音域へのアクセスをスムーズにしているのだろうと思う。

この抜けの良さについては「Juice=Juice LIVE 2018 at NIPPON BUDOKAN TRIAGROOOVE」における「シンクロ」のパフォーマンスで特に強く感じられるだろう。ラスト「目指す想いシンクロするよ」のhiCロングトーンは必聴である。

●高木紗友希とハロメン
エッグ時代から含めると10年以上のキャリアがある高木だが、やはり多くの後輩から慕われていたようだ。ここでは、私が印象に残っているハロメンとのエピソードをいくつか紹介させてほしい。

①牧野真莉愛(モーニング娘。'21)
牧野が高木を非常に慕っているというのはファンの間では有名な話である。牧野の高木に対する想いがわかりやすく見て取れるのが彼女のブログである。以下にリンクを貼り付けておく。

これは高木の活動終了が発表された後に、初めて更新されたブログである。高木とのたくさんの思い出写真を載せてくれている。私はどちらかと言えば物事を穿った目で見る傾向がある人間である。しかしながら、このブログからは牧野の高木に対する尊敬や好意が率直に見て取れる。

②岸本ゆめの(つばきファクトリー)
これは歌唱にまつわるエピソードとなる。ちょっと次の映像の20:15〜を見て欲しい。

話を要約すると、岸本が自分の歌うソロパートについて高木にアドバイスを求めたという話になる。ちなみに、岸本自身も現役ハロメンの中ではトップクラスの歌唱力を持っている。その岸本に頼られるのだから、やはり歌において高木の存在は圧倒的であったということが、このエピソードからも伺い知れる。

今のハロプロの中で歌といえば高木(もしくは小田さくら)であり、全ハロメンからその歌唱力について高い評価を受けていたのである。

③島倉りか(BEYOOOOONDS)
これも歌唱力、もっと言うとパフォーマンスにまつわるエピソードになる。岸本の例と同じように次の映像の14:30〜を見て欲しい。

これは島倉がパフォーマンスの理想像を語るシーンであり、その理想像が高木であったという話である。彼女はハロプロ研修生の発表会でミスを犯し、その失敗の反省として導き出した答えが「高木のパフォーマンスを目指す」ということであったようである。

このように歌だけではなく、高木の総合的なパフォーマンスに対して敬意を表するメンバーもいるのである。

■アイドルと恋愛

ここでは、アイドル活動と恋愛の両立の可能性について、私の個人的な想いとビジネスの観点から主張を述べさせてもらう。

まず、これまでにあった恋愛スキャンダルとその後の処分について有名な事例を見ていく。次に、今回起こった高木の事例を改めて振り返り、その処分の是非について考えてみる。そして、最後にアイドルは恋愛ができるのか?ということについて私なりの考えをまとめたい。

●過去の恋愛スキャンダル
見出しの通り、これまでに起こったハロプロOGの恋愛スキャンダルと、その後彼女たちに下された処分について簡単に振り返る。

矢口真里(モーニング娘。第二期メンバー;三代目リーダー)と藤本美貴(同グループ、第六期メンバー;五代目リーダー)の2人がもっとも有名な例だろう。彼女たちは現役時代にも関わらず、前者は俳優の小栗旬、後者は芸人の庄司智春(品川庄司)と恋愛関係にあったことが判明してしまった。

結果としては既に知られている通り、彼女たちは共にモーニング娘。脱退という結末を迎えることになったのである。

●高木のJuice=Juice活動終了
本記事の冒頭でも述べたように、高木も上で紹介した二人(矢口/藤本)と同じく活動中の身でありながら、ミュージシャンと恋愛関係にあることが判明した。
彼女に対して事務所が下した決断は過去の例と同じで、アイドル活動の終了という処分であった。

結論から言って私は事務所の判断と対応を称賛したい。そう考える理由は次の2点である。

①決断に迷いがなかったこと
②過去の判例と矛盾がなかったこと

①については事務所の体質の良さを感じられた。素早く経営判断が下せるというのは、経営/従業員が一体となってスピード感を持って業務に取り組んでいることが伺えるからである。

②については事務所の方針の一貫性を感じられた。経営がブレずに明確な方針を示すことで、従業員も上位方針に基づいた業務を推進できる。いわゆる「風通しの良さ」があるということだ。

●今回の処分の是非
①私の想い
ここでは今回の処分について私が思うことを素直な気持ちで述べさせてもらう。
まず、結論から言って今回の処分については、経営としては◎、個人的な想いとしては×である。

先の見出しを読んできた皆様からすると、私の個人的な想いが×であるということに、意外性を覚えるかもしれない。

だが、思い出して欲しい。「■高木紗友希のこれまで」の項で、私は彼女の魅力やエピソードについて、かなり熱を入れて書き綴ってきた。なぜ、熱を込めて書いたのか?それは何を隠そう、私のJuice=Juiceの推しは高木紗友希であったからだ。
私は彼女の歌をライブで聴きたかった。今回の活動終了はなくとも、彼女の年齢を考えれば、あと何年も現役のステージに立てるメンバーではなかった。だから彼女が卒業する前に一度Juice=Juiceの単独コンサートに行きたかった。

しかし、今回の件で、その夢は叶わなくなった。はっきり言って悲しいし残念だし彼女にはやめて欲しくなかった。この記事を書いている今でさえも別に恋愛をしたって良いじゃないかとさえ思っている。

②アイドルビジネスの現実
しかしながら、私は一方でアイドルの恋愛解禁をすることがいかにビジネス的に無謀であるかということも理性的に理解している。

なぜ私が無謀であるという主張するのか、それはアイドルに対する「多くの」人の価値観が旧態依然としているからである。そしてその旧態依然とした価値観を前提としてアイドルを抱える事務所の経営、ひいてはアイドルビジネス業界が成立しているからである。

上で言及した経営という視点でこの問題をもう少し考えてみよう。経営を成り立たせるためには必要なものは何か?答えは簡単。それは売り上げを出すことである。事業存続に加えて、成長領域への投資が可能になるだけの十分な売り上げを事務所は出し続けなければならない。

では、売り上げを出すにはどうすれば良いか?そこで我々ファンの懐を頼ることになるである。我々は事務所の提供するモノに対してお金を払うのだ。

ところで、我々ファンは一体何に対してお金を払っているのだろうか?すぐに出てくる例を挙げると、興業チケット/ CD /映像作品などであろう。

ここで、さらに問うてみよう。我々はなぜ上で挙げたような品物にお金を払うのであろうか?それは「感動」したいからである。私たちは感動をお金で買っているのである。それなりのお金を払って手に入れたいものは、単なる紙切れでも金属製のディスクでもないわけだ。いずれも単価あたり数千円は下らないものであり、決して「お安い」ものではない。そこには感動という付加価値が込められている。

さて、これが最後の問いである。では、この感動を決める要因は何であろうか?それは「イメージ、印象」である。このアイドルが発する何とも言葉では形容し難い「何か」に私たちは魅力を感じるのである。

ここで、やっと問題の核心に入ることができる。この世界、もしかすると日本社会においてだけなのかもしれないが、アイドルに対するイメージというのは歪なものである。おそらくほとんどの人が「アイドル」と聞いてイメージするその姿は「純潔な汚れなき処女」である。

アイドルに処女性など求めるのはおかしい、馬鹿げている、前時代的だという意見もあるだろう。正直私もそう思っているし、以前の項でも述べたように恋愛をしていた高木を見逃して欲しかったというのが個人的な本音だ。

だが、現実はそうではない。アイドルビジネスを成り立たせている多くの人々の意識の中には、上で述べたようなアイドルに対する固定観念が染み付いている。そしてその固定観念が染み付いた人たちこそが、多くの資金を出し、このビジネスの存続に大きな貢献をしている。

したがって、アイドルビジネスを生業とする者達は、彼ら/彼女らを裏切れない、手放すわけにはいかない。それゆえに、経営判断としても彼ら/彼女らにある意味迎合する形になっていくのである。そして、今回の高木に対する決断もその例に漏れていないと私は考えている(※3)。

※3. とはいうものの、高木がいわゆる古典的な「疑似恋愛」の対象として見られるメンバーであったかというと必ずしもそうではないと思う。しかし、メンバーごとに個別の事情を持ち出すと、それこそ事務所の方針がブレてしまい経営の体質に悪い意味で響いてしまうだろう。だからこそ過去の例と同じ判断が下されたと考えている。

●アイドルは恋愛ができるか?
結論から言えば、個人的には恋愛OKなアイドルがいてもいいと思う。だが、恋愛OKなアイドルでビジネスが成立するかは甚だ疑問である。

アイドルの恋愛が許される、そんな世界を実現するためには、先の見出しで述べたような固定観念について「果たして本当にそれで良いのか」「それがありたい姿なのか」という議論がより活発に行われる必要がある。そのような議論が進められる中で、この社会に新たな価値観が創造されていくというプロセスを踏む必要があるだろう。

今すぐにでもありたい姿にたどり着ければ、この上ないことであろう。しかしながら、このような価値観のパラダイムシフトには長い時間を要する。そして、このパラダイムシフトを待たずして、ありたい姿だけを前面に押し出したビジネスを展開しようとしても絶対に経営が成り立たない。それは私たちの愛するアイドル達が生計を立てられなくなってしまうということである。

アイドルが自分の恋愛について自由に語る。そんな時代はいつかやってくるかもしれない。だが、それは数年やそこらの話ではないだろうと私は考えている。

■これからのJuice=Juiceに望むこと

ここでは、高木を失ったJuice=Juiceについて、これからこんなヴィジョンを持って活動しても良いのではないかという私の妄想を語る。ここからはおっさんの戯言である。

Juice=Juiceにとって、歌唱の要であった高木を失ってしまったことは大きな損失である。これからのJuice=Juiceに必要なことは何か、そのことについて考えてみたい。

結論から言うと既存のメンバーでは歌唱という点において、高木の穴を埋めることは不可能に近い。このことは、いくつかの楽曲において、もはや高木以外では誰も歌うことのできないようなパートが存在することからも明らかである。「この世界は捨てたもんじゃない」、「CHOICE & CHANCE」のハイトーン部分がその例である。正直、こういった部分は新メンバーに期待するしかないのではと思っている(※4)。

※4. ちなみに2021年2月現在Juice=Juice×つばきファクトリーの合同オーディション募集が行われている。詳細は下記リンクを参照してほしい。
http://www.helloproject.com/news/12756/

しかしながら個人的に、新メンバーによる補強については大きな問題があるのではないかと思っている。

それは

高木の代わりを見つけてくることが現状打破の一手になるのか?

ということである。

Juice=Juiceも長い歴史を持つグループとなってきた。もしかすると同じようなパフォーマンスを見せ続けられることに対して食傷気味であると感じる人も中にはいるかもしれない(※5)。

今のJuice=Juiceというか、これまでのJuice=Juiceのパフォーマンスの特徴は、やはり歌唱に重きを置いたものとなっている。他のハロープロジェクトのグループと比べると比較的ダンスは控えめな印象を受ける。

だからこそ私はあえて提案したい。歌重視からの脱却、完全なる脱却ではなく、歌をベースに、ダンスやその他飛び道具(※6)をアドオンし、多彩な武器を生かしたパフォーマンスを魅せる時代があってもいいのではないかということだ。

例えば、ダンスについて言えば、もっと稲葉愛香の力を使っても良いと思う。段原瑠々や工藤由愛のダンスも魅力的だ。ダンサブルな曲の割合を増やしていったら、ライブにおいてはこれまで以上の躍動感を生み出すことができるだろう。

そして歌で締めるところは締める。歌については金澤朋子、植村あかり、井上玲音、そして段原が役割を果たしてくれるだろう。もちろん松永里愛のさらなる成長/進化にも期待したい。

Juice=Juiceには、モーニング娘。のように長い歴史を持つ伝統と格式あるアイドルグループになって欲しい。長い歴史の中では、各時代ごとに異なる特色があってもいいのではないかというのが私の考えだ。それは結果的に幅広い趣向を持ったファンの心を掴むことに繋がるんじゃないかと信じている。

※5. この辺りは古参のファンに意見を問うてみたい。もっとも、私はまだそんな食傷気味になるような段階にあるファンではないのだが。
※6. 端的にいうと井上玲音のボイスパーカッションのことである。

■さいごに/次回予告

本記事では高木紗友希のこれまでと彼女のアイドル活動としての最後について事実ベースで振り返った。そのうえで、その彼女の最後について私個人の意見を述べさせてもらった。さらには、Juice=Juiceの今後についても戯言ながら想いを綴った。

冗長な表現になってしまっているところもあるかもしれないが、まだ書き慣れていないため寛大な心で受け止めていただければ幸いである。

さて、次回は明るい記事にしたいと思っていて、内容としてはアンジュルムの紹介記事を予定している。できるかぎり彼女達の魅力が伝わるように精一杯の想いを綴っていきたい。

非常に長い記事となったが、ここまで付き合って読んでくれた皆様に感謝申し上げたい。本当にありがとう。それではまた次回の記事で。






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