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コーチの視点から共に考えるビジネスコラム

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「Coach's VIEW」はコーチ・エィのエグゼクティブコーチによるビジネスコラムです。 コーチ・エィ代表取締役の鈴木義幸をはじめ、東京、上海、バンコク拠点在住コーチが、エグ… もっと読む
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#対話

誰が組織風土を変えるのか?

written by 桜井一紀 私たちが組織で働く理由の一つは、個人で活動するよりも、より大きな仕事ができるからにほかなりません。一人ひとり能力を掛け合わせることによって、より高い生産性を発揮し、社会に大きな影響力をもつ仕事をする。そのベースには、組織の中で一緒に考えたり、コラボレーションしたりできるという前提があります。ところが実際のところ、それがなかなか難しいのも現実です。 マシュー・サイドは『多様性の科学』の中で「米国運輸安全委員会によれば、30件以上の墜落事故が、

その未来を選ぶのは誰なのか?

written by 青木美知子 『WHO NOT HOW』という本があります。サブタイトルは、「どうやるか」ではなく「誰とやるか」。(※1) この本の著者は、ダン・サリバンという起業家向けエグゼクティブコーチです。彼は「一人でやる」という考え方から抜け出し「誰かとともにやる」という視点の重要性を提案します。 当社のエグゼクティブ・コーチングにおいても、とても大事にしている考え方です。 「あなたは組織の何を変えたいのか」 「そのためにあなたは何を変えるのか」 「誰とやるのか

「生きて」いる人と出会うには

written by 市毛智雄 ウェルビーイング(well-being)の研究者である石川善樹氏は、企業における「人」について、「ヒューマン・リソース=人的資源」や「ヒューマン・キャピタル=人的資本」である前に、「ヒューマン・ビーイング=人」であるという観点が重要ではないかと説いています。(※) 石川氏によれば、どんな会社も、創業時は社員数も少ないため、お互いが「人」であると認識し、お互いに「どう生きるのか」ということについても考えているといいます。しかし、規模が大きくな

好奇心はどこからやってくるのか

written by 鈴木義幸 先日、弊社に中途入社した社員がいます。彼女は外資系のマーケティング会社のトップを10年以上務めた経験をもち、営業が得意中の得意です。自分の参考にもしたいと思って、彼女に尋ねました。 「これまで営業をやってきた経験から教えてほしいのだけれど、人は何で動くものなの?」 彼女は間髪入れずに答えました。 「人は fear(恐れ)か greed(欲)で動くものではないでしょうか。ですから営業では、そこに働きかけるのが大事だと思います」 多くの経

「問い」の可能性

written by 望月寛 クライアントのAさんは、事業基盤を確立するミッションで社長としてB国に赴任しました。B国には各部門から集められた精鋭たちがすでに送り込まれており、Aさんは、多様なバックグラウンドを活かした議論が展開されていることを期待していました。 しかし実際に赴任して目撃したのは、声の大きなメンバーが主張を通し、他のメンバーは口をつぐむという光景です。その状況に違和感を覚えたAさんが各メンバーの話を聞いてみると、「コンフリクト(対立)が起きるとそのあとが大

対話の質、主観の質

written by 今城直樹 昨今、「対話」という言葉を耳にしたり、目にしたりすることが増えました。そんな中、いったい「対話」とは何なのか、やり方はどういうものなのか、ということに焦点があたります。 コーチ・エィでは、対話を「互いの主観を持ち込み、その違いを顕在化させ、ともに捉え方、考え方を再構築していくプロセス」と定義しており、対話とは何か、何をすることなのかを説明しています。 この定義を踏まえたうえでさらに一歩踏み込み、今度は対話の「質」に目を向けると、実はそこに

なぜ、あなたは部下の話が聞けないのか?

written by 桜井一紀 人の話を聞くのが下手だから、傾聴のスキルを学ぶ。 質問ができないから、質問のスキルを学ぶ。 「弊社のマネージャーは、部下の話を全然聞かないんです。だから、傾聴を中心にコーチングのスキルトレーニングをしてください」 人事部、研修部の担当者からよく聞く話です。 ところが、トレーニング実施後しばらく経ってからどのくらいコーチングが行われているかを調べてみると、ほとんどの場合、継続的に実行している人はごくわずか。 スキルを学んだとしても、その

会社の文化を変えるとは、何を変えることなのか

written by 青木美知子 あなたの会社は、お客様や友人から、どのような会社だ、と言われることが多いですか? 仕事柄、さまざまな業種業界との接点を頂きますが、その会社のありようや雰囲気は、お一人の方と話していてもよく分かりません。でも、訪問して受付の方同士の様子や、守衛さんと社員の関わり、特に、複数が参加するミーティングに参加すると、その会社の様子を一気に感じられるようになります。 目の前にいる二人の間に流れる空気だったり、座ったときの距離感、お互いがどんなふうに

「想定外の世界」のリーダーの役割

written by 市毛智雄 コロナ禍という「想定外の世界」の体験が始まって、3年目に突入しました。対人接触や移動が制限され、以前の当たり前が当たり前でない世界を、私たちは日々体験しています。 「想定外」とは、「事前の予測を超える」という意味です。その観点では、ある人にとって「想定外」でも、別の人にとっては「想定内」ということはあるでしょう。コロナ禍が「想定外」と言われるのは、世界中の多くの人にとって予想を超える事態だったからにほかなりません。 「想定外の世界」は何を

対話の価値とは?

written by 有吉祐介 我々の仕事は、コーチングという手法を通じて「対話」を世の中に広めていくことです。 コーチ・エィでは対話を次のように定義しています。 「それぞれが培ってきた経験や解釈、価値観をもとに『違い』を持ち込み、互いの『違い』を顕在化させながら、新しい『意味』『理解』『知識』を一緒につくり出す、双方向なコミュニケーション」 つまり対話とは、これまで当たり前と思っていた前提を問い直し「新しい解釈・意味づけ」をつくるプロセスといえます。 お客様とのプ

対話を起こす問い、起こさない問い

written by 鈴木義幸 「対話を起こす問い」とは何か? それが今回のコラムのテーマです。 「対話」では違いを大事に扱います。 育ってきた環境も、持っている視点も違う二人が、それぞれの考えを交差させ、ともに新しいものの見方や新しい意味、つまり新しい物語、新しい解釈を創り出していく。それが対話の、言わば醍醐味です。 「違い」を大事にするわけですから、相手に合わせたやりとりをしていては、対話になりません。また、それぞれがただ違う意見を主張するだけでも対話ではありませ

「やりたいこと」はどこからやってくるのか

written by 大山悠 「やりたいことは何ですか?」 「あなたは何がしたい人なんですか?」 こうした質問をクライアントによく問いかけておきながら、私自身はこれらの質問に答えるのが得意ではありません。 「そもそもやりたいことって何だろう?」とも思いますし、「答えにくいな」という感覚もあります。あるいは、答える方法論は頭にいくつかあるけれど、なかなか考えが深まらない感じもあります。 「やらなければならないこと」であればいくらでも出てくるし、そこに紐づく「やりたいこと

「急がば回れ」が機能するとき

written by 長田祐典 「変えなければいけないのは 『変化』に対する捉え方だ。リーダーは変化を『時折、偶発的に起こる混乱』と考えるのではなく、『マネジメントの本質』と捉えるべきだ」 これは、Harvard Business Review 2017.10.26に掲載された論文の一説です(※)。あなたはこの文章をどのように解釈しますか。 私自身は、これを「リーダーは"常に"変化について考え、変化について対話し、変化を起こすことが問われている」というメッセージと捉えて

本音の先に生まれるもの

written by 水野裕子 「私は出世には興味がないので」 「この歳でコーチング受けたって何も変わらないですから」 クライアントの方からこうした言葉が出てくると、私はまだその方との信頼関係を築けていないことのサインだと受け止めています。 なぜわざわざそれを私に伝える必要があるのでしょう。その言葉の背景にある感情や価値観はどのようなものでしょうか。仕事の状況や周囲との関係性はいったいどんな状態なのでしょうか。 「出世に興味がない」は本当かエグゼクティブコーチとなって