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【旅行記】微魔女の微ミョーな旅・22

2.ベトナムー2017年
  

 がっぷり四つで取り組みたい国


 ハノイに着いたのは午後6時近くで、2日前と同じホテルにチェックインしてから疲れを感じる間もなく、ツアーの最終予定になる水上人形劇場へ向かった。
 ホテルの近くにあるホアンキエム湖周辺は観光客相手の土産物屋が並んでいて、人形劇が終わった時間でも店は開いているし人も多い。路地に入らない限り危険はなさそうだと直感し、それから一時間くらい、夫と息子のお土産を物色しながら辺りをうろついた。
 最終日は、夕方の4時半のフライトまで自由時間なので、市内を散策することにしていた。ジェーンが“きっと楽しめるはず”といってリーフレットをくれたベトナム民族博物館へも行ってみる予定だった。
 午後1時半の迎えまで大して時間がないので、ホテルの北側に広がる旧市街だけを散策することにした。やる気満々で出かけたものの、いきなり交通量が多すぎて道路が渡れない。この調子で行くと、予定の半分も消化できそうにないので、計画の練り直しと称してカフェで一息。実はオーストラリアの大味ケーキにいい加減うんざりして、日本風のふわふわ美味しいケーキが食べたい一心でパティシエの資格を取った身なので、“一都市一ケーキ”のミッションでもある。すぐ横のシルクパスホテル直営のカフェで、ベトナム式コーヒーとティラミス風ケーキを注文した。ベトナムのケーキは、さすがにフランス領だったこともあり、味もデコレーションも繊細でクオリティは決して低くないと思う。
 気を取り直して旧市街に入って行ったものの、雑貨屋をくまなく見ているうちに有名なドンスアン市場に辿り着く前に昼になってしまい、ケーキ店と共に外国で必ず押さえる地元のスーパーマーケットへ行った。その後、高級ヨーロピアンブランドが入るショッピングセンターに迷い込み、有名なハノイ36通りも一部を素通りしただけで時間切れになり、のけぞるほどに後ろ髪を引かれる思いでホテルに戻ることになった。この時点で次回の目的地はハノイに決まった。
  
 ハノイがホーチミンとはかなり趣が違うことは、移動中の車から街の様子を眺めているだけで明らかだった。ハノイとホーチミンの人はお互いの街をどう思っているのだろうか。たとえば、シドニーとメルボルンのようなのだろうか?
 オーストラリア最大の都市として周知のシドニーは、そこに住む人も働く人も、いろいろな意味で“第一の都市”としての自負と余裕がある。第二の都市に甘んじているメルボルンは、食の都、芸術の都、ファッションの都……など、都市として太刀打ちできない分、いろいろな付加価値で勝負を挑んでいるような“往生際の悪さ”が感じられる。私は、オーストラリアに来てから、パースを始めに、シドニー、メルボルンと3つの都市に住んできたので、都市の立ち位置もそこに暮らす人たちの意識も“よそ者”としてよくわかるのだ。シドニーにある絶対的な自信とメルボルンの逃れようのない劣等感。 
 ベトナム初心者の私にとってこの国は、もの凄い勢いで発展している真っ只中に見える。街のあちらこちらで建設工事が進んでいて、数年後には完成した建物に合わせて道路やインフラも整備されるのだろう。ホーチミンとハノイは、それぞれに慌ただしいのだが、ハノイは車から見ているだけで写真に撮りたくなるような光景――植民地風な街並み、パステルカラーのテラスハウス、緑の公園、フランス式建築、シクロなど――が広がっている。ホーチミンは、ただがむしゃらに新しいもの、便利なものを取り込んで発展を目指す商業都市、ハノイは自分たちのペースで必要なものを取り入れながら発展を目指す文化都市といった役割の違いがはっきりしている印象を受ける。
 いずれにしても、私はベトナムに対して、人生の半分をかけてとんだ誤解をしていたわけで、残りの人生はがっぷり四つでこの国の魅力に取り組んでいきたいな、と思う微魔女なのであった。

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