見出し画像

【法務受託】担当弁護士間の工夫

0 法律事務所forkの法務受託

法律事務所forkは法務アウトソーシング(「法務受託」)をいち早く実践してきました。2018年の中頃に開始し、事務所内外の弁護士と協力しながら現在では非常に多くの経験を積むことができています。

法務受託の特徴としては以下のものが挙げられます。

①社内の業務量に応じて月ごとに報酬(稼働時間)を調整できること②複数名が担当すること(クオリティとスピードを担保するため「主担当」「サポート」の2名の弁護士が担当しています。)、③契約をいつでも当月限りで任意に解約できることです。特に売上、業務量、業務領域などの変動幅が大きいスタートアップにおいては使いやすいサービスであるといえそうです。

これらの点を除き法務受託とインハウス弁護士の実態は同じです(業務委託全般にいえることですが、雇用契約の場合に必要となる諸経費や手続きコストなどもかかりません。この点も大きなメリットといえそうです。)。というより、同じでなくてはなりません

今回は、「②複数名が担当すること」に関連して、担当弁護士間で行っている工夫(受託に習熟した弁護士がそうでない弁護士に対して行う内部的な助言等)についてご紹介したいと思います。

1 担当者決定

まずは受託導入時の工夫です。素朴な点ですが、仕事を受けた弁護士が会社との相性をみて担当弁護士を決めることはやはり重要になります(そのためには仕事を依頼できる弁護士のプールを確保しておくことが必要となります。)。

業法理解業界知識(例えば日々の打ち合わせの際に他社事例との比較が持ち出される場合は少なくなく、そういった場合に「他社サービスを知っているか」「使ってみたことがあるか」という点などはアウトプットに影響します。)はもちろんですが、自分が働く先の会社や提供サービスに対して情熱が持てるかといった素朴な点が重要になります。人間は有限を生きる生き物なので。

2 法務の役割の確認

次に、法務の役割について簡単に担当弁護士間で認識合わせを行っています。法務の役割は他の事業部門と同様です。「ビジネスを進めること」にあります(多くの場合「数字をつくること」と言い換えられます。)。関わり方が異なるだけで、同じメンバーである以上、法務か法務じゃないかはあまり関係がありません。会社メンバーの役割は、「売上を高める」「コストを下げる」「リスクをコントロールする」「ビジネスの提供価値を拡大する」といった企業活動における根源的ミッションの実現を支援することと言い換えられるでしょう。自分で事業を動かした経験や会社員として働く経験がない場合は「数字をつくること」への解像度がどうしても低くなってしまいますので内部で擦り合わせを行っています。

常に会社メンバーの役割を参照して、自分の各行動が「どの部分に寄与するか」「足を引っ張っていないか」などを考えながら日々の仕事をしていくことになります。特に作業のスピード感については、通常の法律事務所とは大きく異なる(基本的に即日にレスポンスをする必要がある。)ため、弁護士間の擦り合わせが必要な場合が正直とても多いです。

マインドセットの部分になりますが、「リスクを指摘するのではなく、チームの一員としてリスクテイクを支援するのが任務」という認識を持つのも重要です。外部弁護士の任務は多くの場合リスクの指摘にとどまらざるをえず、また、自分のアウトプットがその後どのように利用され、実際にどのようなビジネスとなったかを知らされないこともほとんどです。他方で、法務受託では、洗い出されたリスクを前提に、どのようなリスクテイクをして、どのようなアウトプットにしていくかを一緒に考えていくことになります。

特にリモート環境下ではこのようなマインドセットを持ちづらくなるため、実際の業務の中で「事業を前に進める動き」ができているかについて内部で検討する機会を設けるようにしています。

3 集めるべき社内情報

「集めるべき社内情報」について整理を行っています。会社員経験等がないとこの辺りに土地勘がないケースが多いためです。

法務のアウトプットにおいて、法的知識は当然に必要となりますがこれは前提知識にすぎません。会社特有の事情(ヒストリー)を知らないと適切なアウトプットを出すことはできません。「これまで会社のどこに問題があったか」「監督官庁との関係はどうか」「会社のビジョンやバリューはどの部分を大切にしているか」「どの部分のリスクであればとれるか」「この分野の話は社内の誰に確認をとるべきか」「担当者とどのようなコミュニケーションをすべきか」といった情報です。これらの事情を踏まえずに適切なアウトプットを提供することはできません。

(この意味では法務のノウハウは属人化せざるをえないといえます。会社側としても、どれだけ優秀な弁護士を迎え入れようとヒストリー理解についてはゼロからインプットする必要があります。お互いにとって関係特殊的な投資となるため、長期的に関与する覚悟をもってチームに参画し、迎え入れる必要があります。社員の離職に伴って法務ノウハウが失われる事例は多いですがが、法律事務所というチームで参画するため多くの場合で離脱の心配がないことも法務受託のメリットといえるかもしれません。)。

4 主担当へのサポート弁護士のアシスト

このほか、業務を進める際にサポート弁護士が行うアシストには次のようなものがあります。

まずは、雛形、ガイドライン、過去事例の検討結果を素早く共有することが挙げられます(主担当弁護士から相談を受けてから探すのではなく、サポート弁護士が自ら依頼事項を確認し、使えそうな雛形等があれば速やかに主担当弁護士に連絡することをルールとしています。)。これは一般の法律事務所ともしかしたら変わらないかもしれませんが、複数人で取り組むメリットです。

次に、レビュー前に契約・プロジェクトの獲得目標について事業部側への確認を促すことも多いです。どのような数字を作ろうとしているかによってレビュー内容が変わることも少なくないからです。また、各案件にどの程度の時間をかけるべきかについてもすり合わせが必要となります。このほか、法務側が興味を示さないと事業部側が自ら共有してくれないことの多い情報について早期に興味を示しておくようにサポートすることもあります。

とはいえ、とりとめなくあらゆる情報を集めるとなると徒に工数が拡大してしまうためメリハリをつけて必要な情報をもらうことがもちろん重要になります。要するに経験がものをいう領域といえそうです。

5 まとめ

以上のような工夫を行いながら法務受託を進めています。ただし、基本的にはゴールデンな方法はなく、自分が働く会社に合わせた柔軟な方法をとっていけるかという点が勝負です。これからも弁護士間、法務内、事業部とのコミュニケーションによりさらに改善していきます(このnoteにあるようにやるべきことは極めて素朴で当たり前のことだけです。それをただひたすらやっていくのみです。)。

法律事務所forkでは法務受託を導入してみたい会社さん法務受託で働いてみたいインハウス経験ある弁護士さんを探しています。情報交換だけでもありがたいです。ぜひお気軽にお問い合わせください(TwitterのDMも大歓迎です。)!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?