じゃがいも畑の夢

このエッセイは、私が音楽活動を始めた20歳の頃、とあるライブハウスの店長さんに「何か物販あった方がいいと思うよ」と言われ、作った本に掲載した1つです(今思うと素直で無邪気すぎるし、多分物販ってそういうことじゃないんだけど)。
買ってくれた人たちは古参ファンです。本当にありがとう。
ここに残っていたのは下書きの状態なので少し違うのですが、もう人目に晒されることは無いと思うので、残しておきます。

お許しください。



今、私は大学生で、これまでも小中高と学生をしてきた。その中でいくつかの死に遭遇した。家族であったり、親戚であったり、飼い犬であったり、友達の友達など。そして、私は何度か級友の死も経験した。その子が私とどういう関係だったとか、そういうのを抜きにしても、今の私を形作る中で、とても大きなものになっていると思う。

夢を見た。細かいところなどは覚えていない。人の夢の話なんてなんら面白くないが、記録として残しておきたい。

その日は、友達たちと学校に泊まっていた。小学校・中学校・高校・大学や、その他いろいろな所の友達がごちゃまぜにいた(私の夢はいつもそうだ)。

夜、みんなが寝静まった頃、私は何故か校庭に出ていた。夜の校庭はいくつかの電気に照らされて薄明るい。

なんとなく懐かしい気持ちになりながら眺めていると、なんと、校庭の隅の上空から人が降ってきている。誰だったかは憶えていない
「え!大変!」とそこまで駆け寄り、天空の城ラピュタでシータを受け止めるパズーの如く、両手を前に出してその子が降りてくるのを待った。

ドキドキしながら手を広げている私の頭上あたりまでその子が来た時、突然その子がキラキラと光って消えた。そして、何やらの種たちがフワフワ舞ってきた。私はそれを根拠もなしに「じゃがいもだ!」と確信する(そもそもじゃがいもに種はあるのか)。

「あの子が届けてくれたんだ!地上まで!みんなのためにじゃがいもを!」などと、ドラマや映画のようなセリフを口にしながら、懸命に畑を耕した。そうして校庭の隅に小さな畝(うね)を2つほど作って、じゃがいもの種を埋めた。

ナイター照明と、月明かりに照らされたなんともミニチュアなじゃがいも畑の画は、よく憶えている。

畑を拵えた私は、興奮気味に寝ているみんなの所へ「ちょっと来て!」と起こしに行った。それ以外何も言っていないのに、みんな嬉しそうに飛び跳ねて、「やった〜!やった〜!」と歓声を上げながら校庭へと走る。

この時私は「みんな分かるんだ。感じるんだ。言わなくても、分かるんだ、、!」と感動しながら一緒に走った。


ここで目が覚めた。起きて暫くぼうっとしてから、はっと、気がついた。なんて綺麗な夢だったのだろう。さっきまでいた世界の神秘さ、美しさに、またぼうっとしてしまった。

空の上にいる大切なひとたち。私は空を見上げて心強くなんてなれなかった。同じ空の下にみんないるから何だって言うのだ。私はここで1人じゃないか。そして私の心とは裏腹に空はどんな表情を見せても、何色でも美しい。そんなの非情だ。そう思っていた。

しかし、雲の上にあの子がいると思うと、とても心強い。いつも見ていてくれる。1番遠くて、1番近い。


天国にいる者たちの事を、生きている者が思い出すと、天国でその人に花が降るという話を聞いたことがある。私は誰よりもたくさんの花を、あの子にあげたい。

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