見出し画像

チェルシー×アーセナル 第15節 2022.11.6

試合結果
チェルシー × アーセナル
0-1
得点者
63' ガブリエル(ARS)

スタメン


アスピリクエタの貢献

立ち上がりから保持非保持の局面がはっきりとした入りになった。

ポッターの意図としては、無理にボールを奪いに行くことはせずにマンツーマンで人をつかまえたところからアーセナルのボールの動かし方に合わせて受動的に守備を行うことを狙いとして持っていたように見えた。

まずは、アーセナルの選手の動きにチームを適応させてということを考えていたのだと思う。

アーセナルの保持時から振り返っていこう。

今期のアーセナルのお馴染みの形である。

ガブリエウ、サリバ、ホワイトの3人で最終ラインを作る。その前にはトーマスが立って3人のサポートを行った。ジンチェンコは外をとったり、時にはトーマスの脇に立ったりと変幻自在に動き回る。そして、今期ゴール前に飛び出していくことの増えているジャカはこの試合はより一層ゴールに近い位置でプレーした。サカ、マルティネッリの両WGは大外に張って仕掛けるタスクを担った。神出鬼没のジェズスは偽9番として、中盤でボールを引き取る。

それに対して、チェルシーはマンツーマンを要所で取り入れながら、効果的な守備を行うことができた。

アーセナルのビルドアップで厄介なのは動き回って、守備の基準点をずらすジェズスとジンチェンコである。スターリング、チャロバーはそれぞれこの二人にマンマークで守備をした。

ここで素晴らしい働きをしたのがアスピリクエタである。スターリング、チャロバーはそれぞれ人ベースの守備を行っているためスペースのケアが行えない。そのため、アスピリクエタは大外で張るマルティネッリと背後へ走るジャカの管理の二つのタスクを行った。前に出て行って潰す判断と背後へ蹴られるボールに対応する判断をほとんど完璧にこなした。

前線は、ホワイト、サリバ、トーマス、ガブリエルの4人をマウント、オーバメヤン、ハヴァーツの3人で管理する形となった。トーマスをオーバメヤン、ハヴァーツの二人で隠しつつ、プレスのタイミングをうかがう設計である。プレスのに行くとなったら、マウントが内側に絞ってトーマスを抑えに行った。そのため、全体としてガブリエルの方に圧縮をかけていくことが多かった。

チェルシーは押し込まれている局面においては守備の固さを見せることができた。アーセナルの特徴は両WGがドリブルで貯金を作りつつ相手をサイドに揺さぶり続けることだ。ただ、サイドの対人において両SBが粘り強く対応してここで大きな優位を作らせなかった。特にアスピリクエタは攻守においてこの試合素晴らしいパフォーマンスを発揮してマルティネッリの突破もほとんど許さなかった。また、ククレジャも判定を味方につけつつほとんどサカにまともな突破を許さなかった。大外を狙ってくるペナ角クロスにもよく対応できていた。

失点の原因にもなった機能不全

次はチェルシーの保持局面について。

この話題について語る上で外せないのはサリバの活躍だろう。アーセナルの攻撃的なプレッシングを可能にしていたのはこのフランス人CBであった。サリバは対人、裏対応、空中戦で圧倒的な強さを見せつけチェルシーアタッカー陣にほとんど仕事をさせなかった。

サリバ、ガブリエルの二人がほとんど対人、スピード勝負で負けることがない。このことはアーセナルがハイプレス時にマンツーマンで守備をすることを可能にした。アーセナルのプレスによってチェルシーはほとんどボールをクリーンに前進させることができなかった。

チェルシー側に問題があったとすれば左サイドのタスクの与え方についてである4バック運用で重要なのは幅をとる役割をだれに託すのかということだ。

右サイドの幅は主にスターリングがとってプレーしていた。その一方で左サイドの大外をとる選手が曖昧になっていた。そのため、この試合では特にククレジャがボールを持っているときにプレスに食われてしまう場面が多発した。マウントが消えてしまっていたのも原因の一つはこのことである。マウントは立ち上がりから、中盤で立ち位置を工夫しながらボールを引き出す試みをしていたが、あまりうまくいかなかった。

分かりやすくこの現象が見られたのが失点直前のTシウバのボールロストである。

61分の失点シーンでは、Tシウバがボールを持ち出してパスコースに迷ったときにジェズスから強く寄せられてボールを失っている。この場面では左サイドの幅がとれていなかったことで、アーセナルの選手がマウント、オーバメヤンを潰しやすくなってしまっていた。

61分のボールロスト

雑感

戦前にポッターが描いたプランは守備でしっかり耐久したところから、カウンターで仕留めるのがねらいであったはずである。ハイプレスに人を割かずに少人数で前から奪える形をとったのはそのような理由があるだろう。

そして、守備の局面においてはある程度その目標は達成できた。うまくいかったのはカウンターの局面である。個人同士が孤立気味で効果的にゴールまで迫ることができなかった。アタッカーには跳ね返したボールをゴリゴリ収めてポストになり全体のプッシュアップの時間を作ることが求められていたはずである。ただ、オーバメヤン、ハヴァーツは満足にそのタスクをこなすことができなかった。もちろんサリバ、ガブリエルが強すぎたということもある。ただ、後半のパフォーマンスを見るとブロヤがファーストチョイスでもよいという気はした。

そして、チェルシーとアーセナルで一番大きな差が出たのは攻守におけるトランジションの質であると感じた。アーセナルはネガトラで囲むスピードも速く、プレス回避の質も高い。両者ともに守備が安定している試合においては攻撃の試行回数が単純に多い方がゴール期待値も高くなる。また、失点の直接原因となったCKでもアーセナルの工夫は見られ、ロングスローなどの武器も豊富であった。

チェルシーはこれで2連敗となり、解任ブーストはそろそろ尽きた感はある。ここからがポッターチェルシーの本物であると思うため今後も引き続き観戦していきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?