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創作BL「ディファレント・ライブズ①」ツイノベまとめ



――お前が「わたしを愛していない」ことは知っている。

どちらでもよいのだ、そんなことは。
否、だからこそ。お前が欲しい。
わたしなしでは生きていけないよう、お前を作り変える。
それがわたしの「愛」だ。

「愛」だと?
なにが愛だ。そんなもの、ただの「所有欲」だ。

いや、それとも。
それは「復讐」なのか?
おまえの最愛の者を守れなかった「私への」復讐。

――そう。
愛していたのは。

「貴方」だけ――



皇領アルシングには稀世の将軍がいた。
将軍は第三皇女である妻を何よりも誰よりも愛していた。
そして、皇女が早逝した後も、独り身を貫き続けた。
ふたりの間には息子がひとりあった。

将軍には、腹心の副官がひとり。
その男は若い時分、酒と喧嘩と性交に明け暮れて、捨て鉢に命をすり減らしていた。
そしてある夜、男はついに命の危険にさらされた。

泥にまみれた路地裏で複数の男に暴行されるその男を救ったのが、アルシング稀世の将軍、その人だった。

最初は男も、地味なマントに古びた「つば広帽」を目深にかぶった「その人物」が、絶世の美姫を娶った「かの有名な将軍だ」とは信じられなかった。

男は将軍に心酔する。

この方の傍にいたい。この方の役に立ちたい。
この方を見ていたい。

ただ、見ているだけでいいから――

男の、そんな必死の思いが功を奏したのか。
それとも「才」があったのか。
従者から騎士、近衛兵。団長を任され、遂には将軍の副官に上り詰めた。

無論、高潔の将軍が「媚」や「追従」に惑わされるはずもなく、将軍の人を見る目の確かさを疑うものもいない。
だからこそ誰ひとり、副官の出世ぶりに疑問を抱く者はなかった。

そんな折、皇太子が逝去する。

皇太子に嫡子はなかった。
怪しげな「落とし胤」が担ぎ上げられ、皇帝の兄弟たちも野心を見せ始める。

将軍の妻である降嫁した皇女。その息子にも白羽の矢が立った。

骨肉の後継者争い。
将軍の息子の命も狙われる。
息子をかばい、将軍は凶刃に倒れて命を落とした。



――罠だ。

息子をおとりに、将軍までも殺す気だったのだ、 ヤツらは。 そんなことなど分かっていたはず。
なのになぜ。あの方は、どうしておひとりで向かわれた。
誰も連れぬまま、渦中に飛び込まれたのだ?!

「動く前」に熟考しろ。
「情報」はどれほど集めても集めすぎることはない。

それは「貴方の」口癖だったではないか。
いつだって貴方は私に言っていた――

どうして? 私にひと言もないままに。
なぜ私を、お連れくださらなかったのですか。 なぜ、単身で向かわれた?

見え透いた罠。
それにも気づかぬほど、あの方は冷静さを欠いていたとでも?

よもや慾に惑ったか? 
眼前にチラつく権力に。 自身の子が今や皇太子の座を、そして皇帝の地位を掌中にしつつある、そのことに。

国父の座は目前だった。
だから冷静さを失った。そうなのか?

ああ、そんなことはありえない。
あの方に限ってあるわけがない。

そうではなく、拙速な行動は「愛ゆえ」だとでも?

ならば、なおのこと許せない。
あの方に、そうまで「愛される」なんて「許せない」。

だったらいっそ、「慾に目が眩んで」の方が、ずっとマシだ。

どうして――
なぜ、私は貴方に愛されない。一番に愛されない。

傍にいたはずなのに。
いつだって最も近くに。 戦場で貴方の背を守ってきたのは「私」なのに。なぜ私を頼ってくれなかった。


許せない、貴方が許せない。
私以外の誰かへの愛に殉じて死ぬなんて。
私を残して逝くなんて。

――貴方の隣でなければ。
生きていく意味など、どこにも見出せない。

あの方のいない今、私が将軍となるのは容易だった。
ならば、どうしてくれよう。
「あの方に愛された」息子を。

どうでもいい。
このまま放置すればいいことだ。
今後も当分収まりはしないだろう、様々な謀略の渦の中で、じきに命を落とすだけ。
それだけのこと。

だが彼は、あの方が命と引き換えにして守ったもの。
それを、みすみす見殺しに?

ならばいっそ、「生かしてみよう」か。
それはそれで「たやすい」ことだ。

逆臣どもと手を組むと見せかけて老齢の皇帝に手を回し、讒言を吹き込んで彼を廃嫡させた。

信じた孫に裏切られた。 皇帝の絶望は「憎しみ」に転ずるしかない。

だから、もう誰も彼に「構わない」。
皇帝の怒りを買った彼を、視界に入れることすらするまい。
誰だって命は惜しかろう――

幼き頃から、愛くるしい子だった。

この上もなく美しい母と、それを至上の女神と仰ぐ将軍。
そんな両親からの溢れる愛情を、一身に受けて育てられた。

戦神とも謳われる父を持ちながらも「人を疑うこと」など、まるで知らぬような。
ただただ輝きに満ちた少年。

そんな一片の邪心もないままに成長した青年は、父を殺され、陥れられて裏切られ。
今、すべてを無くしていく――

それでも、最後まで付き従ってくれたわずかな家人を守るため、彼はその身を堕とす。
もうその身体しか、引き換えにするものがなくなったのだ。

②につづく

現将軍と亡き将軍の息子 もう片方の側の想いと物語は――
誰が誰を愛し、誰に復讐を。 誰が誰なしでは生きられないのか。

イラスト:たろたろさま https://www.pixiv.net/users/3524455





















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