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「僕の改革 世界の改革」 第5夜(第1幕 13 ~ 16)


ー13ー

基地に帰ると、僕らはありのままを隊長に報告した。
意外にも、隊長は僕らのことを叱りはしなかった。

「フ~ム。どうやら『やる気レーザー』の効果は証明されたわけだ。さらに、君たちの報告から推測するに、無気力生物たちはお互いに協力関係は結んでいないようだな」

僕は勇気を持って隊長に尋ねてみた。
「どうして今回は怒られないんですか?」
「虎穴に入らずんば虎児を得ず…ってね。君たちがもたらしてくれた情報は、それほど貴重なものだったんだよ。これまで我々は、『無気力生物』たちが、お互いに協力し合う1つの組織のようなものだと思っていたんだ。ところが、君たちの情報では、彼らはそういったものではなく、むしろ一種の『病原体』のようなものだということがわかってきた」
「それで、叱られなかったんですか?」
「そうさ。叱るどころか、君らは立派に仕事を果たしてきたじゃないか!これは、むしろ勲章ものの働きだとさえ言えるものだ!」

そんなものだろうか?
「世界なんて、いい加減なモノだな」と、僕は思った。
「でも、いい加減だからこそ、生きていけるのかも知れない」
そうも思った。
もしも、この世界が、いろんなものでがんじがらめだったら、あまりにも窮屈過ぎて、人々は生きていくのがイヤになってしまうだろう。このくらいのいい加減さ、むしろあった方がいいのだろうな。

「さあ、忙しくなるぞ!」
隊長が言った。
「そうね。これからが本番よ」
リンも言った。
「次の仕事まで休んでいなさい。これからは、ゆっくりとする間もなくなるかも知れない」
隊長はそう言うと、リンと2人で別室へ消えた。

ホーとマンガンも言った。
「君らは、いいコンビ」
「まるで、何年もつき合ってきた恋人のよう」
「お互いに足りない部分を補い合ってる」
「ツーカーの仲」
『そんなこと、ないさ』
…と、僕は否定する。
「そんなこと、あるさ」
「そんなこと、あるある」
『そうかな』と僕。
「そうさ」
「そうなのさ」
2人は、ハモリで答える。

しかし、確かに、僕らはどこか気が合うところがあった。
…というか、もう少し違う感覚だ。

僕はリンを知らない。これは確か。でも、リンは僕のことを知っている…そんな感じ。そんな感覚。
それでいて全然不公平な感じがしない。それぞれがそれぞれに役割が存在する。だからこそ、うまくバランスが取れている。
そういう関係…

『リン』…彼女は、一体、何者なのだろうか?


ー14ー

隊長が言うように、それからは本当に忙しかった。もう目がまわりそうな程だった。
『やる気レーザー』と『無気力レーダー』は量産化され、各隊員の必須アイテムと化した。

僕はリンと組んで、数え切れないほどの人々にレーザーを照射した。しかし、そんな生活に僕はどこか虚しさと疑問を感じていた。
「果たして本当にここに意味はあるのだろうか…?」と。
第一、僕はこんな所で何をやっているのだろう?『彼女』を探す旅はどうなってしまったのだ。
忙しさにかまけて一番大切なことをないがしろにしてしまっていたのではないのか?

「そろそろ、新しい場所を目指して旅立たねば…」
僕は勇気を持って、そのコトをリンに伝えることにした。


ー15ー

「ねえ、リン…」
「なあに?」
「僕は、旅立たなければならないんだ」
「どうして?」
「彼女を探すために」
「あなた、まだそんなコト言ってるの!?」
「まだ…って」
「だって、その人は自分の意志であなたのもとを去ってしまったのでしょ。だったら、帰ってくるハズなんてないじゃない!」
「そんなコト…そんなコト、わかんないじゃないか。わかるハズないじゃないか!」
「わかるわよ!私にはわかるわよ!それに、あなた。その人の名前すら忘れてしまっているじゃないの。それで、どうやってその人のコトを探すっていうのよ!」
「それは…そんなこと、わからないけれど…でも、会えばわかる。それが『彼女』だって。だから、僕は探す。そして見つける。見つけてみせる。彼女のコト、必ず!」
「やめなさいよ。悪いコトは言わないから…」
「やめないよ」
「だったら、提案があるの。とても、いい提案よ」
「何だい?提案って?」
「私が、あなたの彼女になってあげる」
「君が?」
「そう。昔の彼女とは違うかも知れないけど…でも、きっと、別のよさがあると思うの」
「ムリだよ」
「ムリじゃないわよ」
「どうして?」
「どうしてもよ!」

しばらくの沈黙が続く。
それから、リンが口を開いた。
「だったら…だったら、こうしましょ!」
「なに?」
「その彼女が見つかるまでの間…それまでの間だけ、私があなたの彼女でいてあげる」
「見つかるまで?」
「そう。みつかるまで。それじゃ、いけない?」
僕はしばらく考えてから、こう言った。
「わかった…じゃあ、彼女が見つかるまで」
「彼女が見つかるまで…ね」


ー16ー

なんだか、ますますおかしなコトになってきてしまった…
僕は本当に一体、何をしているのだろうか?

でも、これで、ここから出ていくことはできなくなった。
いや、なにも出て行けなくなったわけではないんだ。ただ、僕にその気がなくなっただけ。それだけなんだ。

それに、どうせどこかに探すアテがあるわけでもない。
ならば、ここにこうしていて、仕事でいろんな場所に出かけていたっていいはず。そのどこかに彼女もいるかも知れないじゃないか。そうやって探せばいいさ。

僕は、そんな風に考えるようになっていた。

そして、ゆっくりとしている間もなく、次の指令が出された。

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