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「表面上の肩書き」と「実際の能力」は別物

この時代、世間の人々が考える優秀さは「学歴」とか「資格」とかいったものでした。あるいは「どれだけ有名であるか?」とか「どのくらい貯金や収入があるか?」といったものです。

ところが、青年はそうは考えませんでした。全く無名の人間がムチャクチャにおもしろかったり、とんでもない能力を持ち合わせていたりするのを知っていたからです。表面上の肩書や立場に関係なく「真の実力」みたいなものが存在していて、直感的にそれをかぎ取ることができました。

おそらく、そんな能力を身につけられた理由は、子供の頃から地獄のような世界で生きてきたからでしょう。大人たちが見せる「表面上の姿」「裏に隠されている部分」は別物だと、経験からわかっていたんです。

この時の青年は、明らかに社会に反する生き方をしていました。ろくすっぽ働きもせず、自由気ままに人生を謳歌する。そのような生き方を…

分類するなら「芸術家」「詩人」「旅人」に近かったでしょう。あるいは「山師」とか「盗賊」

だからこそ、誰よりも先に進む必要があったんです。「ルール違反している」というコトを自分でよく理解していたからこそ、他の人たちに負けるわけにいかなかったんです。

…というわけで、誰よりも遊び、誰よりも勉強しました。

近所の古本屋に出かけては、安い本を大量に購入し、片っ端から読んでいきます。レンタルビデオのお店に行って、CDやビデオやDVDを山のように借りてきては、音楽や映画を浴びるように見たり聞いたりしました。

この頃からインターネットは爆発的な進歩を開始します。ネット上にあふれる情報を端から端からむさぼるように喰らっていきました。まるで食事をするかように…

そう!青年にとって、知識や経験は食べ物と同じ!それどころか、現実の食事を削ってでも、情報だけは欠かさず喰らい続けました。


少年時代より異質な環境下で暮らし続けた者は、まともな人間には成長しませんでした。世界は1匹の化け物を生み出したのです。無限に情報を吸収し、成長し続ける化け物を。

それを何と呼べばよいのかわかりません。青年がやっている生き方に相当する役割や職業が存在しないからです。単なる「無職」や「ニート」でもなく、「遊び人」や「ギャンブラー」でもありません。「学生」や「学者」や「知識人」に近かったとも言えますし、「作家」や「役者」や「芸術家」の一種にも見えたかも。

あえて言うなら、それら全てなんです。ありとあらゆる人生や職業を、たった1人の人間が全部こなそうとしちゃったんです!

いいえ、青年自身は知っていました。それを何と呼べばいいのか。だって、子供の頃からずっと頭の中に住んでいた存在なのですから。

そう。その名は…

      「伝説の悪魔」


この瞬間、青年は思い出しました。そして、悟りました。

高校時代のあの日、自分が誰と契約してしまったのかを…

※この時の契約


契約の相手は、未来の自分だったのです!

「なるほどね。だから、自由が保障されていたんだ。『何がどうあろうとも大人になったら自由になれる。それだけは絶対確実な未来だ!』と言われたわけだ。謎が解けたよ…」

そのコトに気づいた青年は、さっそく過去の自分に向かって話しかけました。図鑑に出てくるような「絵に描いたような悪魔の姿」として。あえて映像にノイズまで混ぜて。

そんなコトが可能かどうかはわかりません。「未来の自分」が「過去の自分」に向かってメッセージを送るだなんて。それも音声だけではなく映像データとして。

でも、これって現実に起きた出来事なんです。「24歳の青年」が「高校時代の自分」に向かって話しかけた。「高校時代の自分」は、そのメッセージを受け取り「大人になったら自由をちょうだい!」と訴えかけて契約を結んだ。ここの部分は事実なんです。たとえ、その内容が妄想であったとしても。

そして、青年は少年に向かって最後にこう言います。

「契約成立だ。オレが保証しよう。お前は必ず自由になるよ。大人になったら自由になる。それだけは確実。それ以外の全てが不確かであろうとも、それだけは絶対に確実な未来なのだから」

そう!絶対に確実な未来なんです。単身、東京に出ていき、「理想の女性」を追い求め、その人に出会い、その恋に破れるようなことがあろうとも。「自由」だけは確実に手にすることができる。

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。