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夢の世界の終わり

『僕の改革 世界の改革』は、明らかに青年に影響を与えました。青年は、自らの生み出した物語にとてつもなく大きな影響を受けてしまったのです。

あの物語は、確かに心の傷を癒やしてくれました。でも、同時に「何かを一途に信じる気持ち」も薄れてしまったのです。

それまで空想の世界に没頭していたのに、「空想と現実の狭間」に世界を生み出したため、空想世界に留まる能力が落ちてしまいました。

それはある意味で「進化」だとも言えます。空想世界にこだわる必要がなくなったコトで、現実社会に興味の対象が移り、より現実的な小説が書けるようになったからです。

簡単に言えば「世界を広げたことにより、深めることを放棄した」ということ。


かつて、「世界で一番大切な人」として信じ、信じ過ぎたがあまりに「裏切られた」と感じてしまった『あの人』のコトも、もはやどうでもよくなりかけていました。

「1人の人に固執していては、世界は狭まるばかり。このままでは、さらなる成長は望めない。より多くの様々なタイプの小説を書くために、もっと多くの人々と触れる必要がある」と、青年は考えたのです。

「マスター・オブ・ザ・ゲーム」は、興味の対象に向かって全力を尽くす能力。興味が薄れてしまっては、なんの役にも立ちません。

青年は、わざと『あの人』に嫌われるようなコトをして、2人は疎遠になりました。

この瞬間、少年時代より見ていた「3つの夢」の内、1つを失ってしまいます。つまり「理想の女性」は世界から消滅したのでした。


「この決断が正しかったのか?間違っていたのか?」はわかりません。アレから長い年月が経過した今となってもわからないくらいですから。

いずれにしろ、「理想の女性」は心の世界から失われ、同時に夢の世界も意味をなくしました。少年時代より作り上げてきたあの世界は『あの人』のためにあったのです。

そして、夢の世界が意味をなくせば、「伝説の悪魔」も住む場所を失います。何もかもが連鎖的に消滅していき、終わりを告げていきました。

最後に残されたのは、「3つの願い」の内「究極の作家となり、今後数百年に渡って読み継がれる物語を生み出す」という夢だけでした。


ここから先、青年は非常に中途半端な人生を歩むコトになります。夢の世界に没頭するわけでもなく、かといって現実の世界に適応するわけでもなく、人としても作家としても非常に中途半端な生き方。

それは、ある意味で「応用力が効いている」とも言えたし、より広い興味の対象や知識を与えてもくれました。けれども、心の底から何かを信じることができなくなったのも、また確か。

青年は、「世界の広がり」を求めたために「何か1つに固執する」という能力を失ってしまったのです。

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。