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運命の出会い。理想の女性の条件

初めてその人に出会った時、アイドルみたいにかわいくて、デートに行く時みたいなピシッとした格好をしていました。でも、青年は何も感じませんでした。世の中に山ほどいる「大勢の女性」の1人に過ぎませんでした。

確かにキレイに着飾ってはいるのですが、何か作られている感じがしたからです。「もっと自然にしてればいいのに。それにボランティアの話し合いなのに場違いな服を着ているな」と思いました。

青年は確かに見た目のいい人に惚れやすいところはありましたが、「好きになった人は誰でも美人に見える」という特殊能力の持ち主でもありました。なので、相手は誰でもよかったとも言えるのです。

スタイルも特に気にしないし、太ってるとか痩せてるとかどうでもいいことでした。さすがにお相撲さんみたいに太ってたら困るかもしれませんが、「むしろ、ぽっちゃりしてる方が健康に良さそう」くらいの感覚だったのです。

鈴が鳴るようなかわいい声の人に心ひかれることもありましたが、それだって「好きになっちゃえば、どんな声の人でも美しい声に聞こえてしまう」のです。なので、別に大阪のおばちゃんみたいなしゃべり方のダミ声の人でも構いませんでした。

青年が求めている条件は、もっと別のモノでした。何か他の女性とは決定的に違った部分を持っているとでも表現すればいいのか…言葉にできない特殊な条件がありました。けど、最終的には「勘」なのです。

なので、この時の彼女は条件を満たしていませんでした。せっかくの話し合いの場だというのに、全く発言もしないのです。「自分の意見をハッキリ言うこともできないだなんて、論外!」と考えていたくらい。


それと、もう1つ複雑な事情がありました。

この時の青年が求めてやまなかったのは「理想の女性」だったのです。それが、恋人とか結婚相手かどうかもわかっていません。自分自身でわかっていない存在を他の人たちが理解できるはずもないのです。

ただ1つ。確実なコトがありました。

「お互いがお互いを信頼し、尊敬し、高め合っていける仲」

この頃、必死にノートに書きつけていた文章に、このような1文がよく出てきます。それだけは確実な条件でした。


青年が少年時代より見続けていたイメージは言葉ではなく映像だったのです。それも断片的な映像であり、途中のストーリーは自分で見つけていくしかありません。このコトが事態を余計にややこしくしてしまいましたし、それと同時に物語をおもしろくもしてくれていました。

代表的なイメージをあげておきましょう。

「塔の中の少女」
少女は地元の有名貴族にとらわれていて、高い塔に閉じ込められ、決して出ることを許されない。
満月の夜。気まぐれで空中を飛んでやってきた青年(悪魔)がイタズラで塔の最上階から少女を外に連れ出す。誰もそんな場所から逃げ出すだなんて考えていなかったので、窓には格子がついていない。
2人は手を取り合って、窓の外の世界へと飛んでいく。
「ウェーブの髪の女性」
部屋に入った途端、いきなり髪型を変えた女性に出会い「アッ!」と声を上げて驚く青年。
そのくらい大きな衝撃。
ファンタジーの世界。
魔界は天界と対立関係にあり、伝説の悪魔マディリスは理想の女性であるフィリアと水晶玉を通して会話している。2人は遠く離れ、それぞれの組織に所属しているので、当然敵同士の関係にある。それでいて、ある種の強い信頼でつながっている。
どこかの列車の中(もしかしたら、外国かも?)
青年が紙のノートに何事かを一生懸命書き綴っている。それを横からのぞき込む女性。
「ダメ!今は見ないで!家に帰って完成したら見せてあげるから」と答える青年。

他にもいくつもあるのですが、今回はとりあえずこれだけ紹介しておきます。


いずれにしても、この時の彼女は「ただ見た目がキレイなだけの女性」に過ぎず、青年の興味を引く存在ではありませんでした。

ただ1つ、話し合いが終わったあとに、2人きりになってこう言われたのです。

「木曜日に母子寮で子供たち相手に遊んだり勉強を教えたりするボランティアをやってるんです。毎週でなくてもいいので来てくださいね♪」と。

「初めて会った人にそんなコトを頼むだなんて変な人」と青年は思いました。なので、行く気はサラサラありませんでした。

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。