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時の魔術師

これが、ヘイヨーさんの身につけた「外法・邪法」の正体。

「働かざる者、食うてよし」は、一見するとお金の能力に思えるかも知れません。けれども、錬金術のように無限にお金を生み出せるわけではありません。むしろ、時間に属する能力。

時間を操る魔法。つまり、ヘイヨーさんは(同時に伝説の悪魔は…)「時の魔術師」なのでした。


たとえば、カール・マルクスという人物をご存じでしょうか?

マルクスは、エンゲルスに「こいつは天才だ!」と思わせることに成功します。そうして、エンゲルスはマルクスの生活費一切を援助し始めます。マルクスだけでなく、その家族全員の生活を支え(それも、かなりの贅沢をさせて)エンゲルスは至高の喜びを感じました。いわば「共依存」の関係。

生活の一切の面倒を見てもらって、マルクスは何をやったと思います?

毎日毎日、図書館に通っては、勉強を続けたのです。そうやって、世の中の仕組みを解析し、「資本主義とはなんぞや?」という謎を解き明かしました。

こうして生まれたのが「資本論」という本(この本は、爆発的にヒットし、当時の人々に絶大な影響力を及ぼします。いくつかの国家の仕組みを根底からひっくり返してしまうほどに…)

※ただし、「資本論」は第1部のみをマルクスがひとりで執筆し、第2部と第3部はマルクスの死後、エンゲルスがまともに読める形にまで完成させます(いずれにしても、マルクスひとりでは生まれてこなかった、エンゲルスありきの偉業だったのです)


あるいは、「芸術家とパトロン」の関係はどうでしょうか?

偉大な芸術家は、得てして生活自活能力がありません。創作に没頭するがあまり、お金を稼いだり、身の回りの世話をする能力に欠けているから。

そこで、音楽・絵画・建築・彫刻などなど、才能ある芸術家に資金援助する者が現れます。これを「パトロン」と呼びます。


11歳の秋に地獄の底に叩き込まれ、そこから8年間を無為に過ごしてしまった少年。

この時期の8年といえば、非常に貴重な時間です。本来ならば、仲間と共に過ごしたり、恋をしたりして、人としてまともな人格を形成するために使う時間。大人になってからの時間とは全然違います。

単純計算でも、11歳からの8年間は…

22歳からの16年間。

33歳からの24年間。

44歳からの32年間に匹敵します。

人生の半分近くの時間(それも、最も貴重な時期の)を失った少年は、時間を奪っていった相手(つまり、母親)に呪いを返したのでした。

いわば「呪詛返し」

自らの子供を人形化しようとした母親は、成長した子供に呪いを返され、逆に人形とされます。

無限にも思える時間を手に入れた青年は、ありあまるほどの時間を使い、経験し、学び、遊び、創作に没頭しました。手に入れた経験や知識を結晶化し、あとには、いくつもの美しい物語が残った。

この『ヘイヨーさんの人生』という名の物語も、そうやって誕生したのです。

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。