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地獄の亡者、床下から畳を跳ね上げて飛び出す!

青年が飛び込んでいったアングラ劇団は、4人のコアメンバーを主体として、残りの人たちは都合がつけば参加するというアバウトなものでした。もちろん、毎回のように参加している女優さんもいましたし、たまにしか顔を出さない役者さんなんかもいました。

なので、ほとんどの参加者は「劇団に所属している」というのとはちょっと違ってたんですね。

劇の内容は、ほんとにムチャクチャでした。元々は、キッチリとしたシナリオが用意されていたのですが、その場で応用をきかせて演出がどんどん変わっていくし、疲れ果ててしまってみんな本来のパフォーマンスが発揮できなくなってしまっていたからです。

なぜ、そんなコトになるかというと、「舞台装置の準備が大変過ぎた」からです。たとえば、ある公演では劇場内に鉄パイプを使って、立体的な巨大な足場を作るという計画が立てられました。

お客さんは、客席から上空を見上げながら役者の演技を楽しめるという趣向です。逆を言えば、舞台装置の設営にムチャクチャ体力と気力を使うんです!ガチの現場作業だから!

しかも、人数が足りないものだから、役者が準備を全部やって、音響も演技の合間に行い、与えられる役もひとりでふた役や3役なんてザラです!当然、舞台の合間に衣装も着替えなければなりません。

そのせいで、舞台本番になるとセリフが飛んだり、衣装を間違えたり、曲がかからないということがよくありました。

さらに、「前後に顔が1つずつあるキリン」や「奇形のパンダ」など、巨大なぬいぐるみを用意して、汚れた液体でドロドロになるなどということも頻繁に起こります。

内容的には、SFだったり、ハートフルな家族モノだったり、いろいろなのですが…共通しているのは、どれも強烈なエロやグロシーンが満載なところです!でも、実際に見てみると、コミカルで笑えてしまうのです。

結果、演劇としては完成度の低いものになるのですが、それに反比例して「魂の叫び」はグングン上がっていきます!劇場内は異様な空気包まれ、異空間と化し、演劇というよりも全然違うパフォーマンスとして無限におもしろくなっていくのでした!

きっと、あそこも1つの魔界だったのでしょう。


青年が参加した時には、まだマシな方でした。ちょい役として舞台本番だけ手伝いに行くみたいな形だったこともあり、そこまで体力も使わなかったからです。

…とはいえ、結構大変だったんです!

劇の内容としては、「ある老人が、息子の嫁に欲情してしまい、いろいろとエロいコトをして、地獄に落とされて閻魔大王にお仕置きを受ける」みたいな感じです。

なので、エロいシーンとかグロイシーンもいっぱいあるんです。でも、見てる方はなぜだか笑えるっていうw

青年に与えられた役は「地獄の亡者」のひとりでした。舞台の床下に隠れていて、出番が来たら、舞台上に敷いてある畳を跳ねのけて床下から飛び出してくるみたいな役柄です。

これが超重いんですよ!

みなさん、床下から畳を跳ね上げたことってありますか?

ボディビルで鍛え上げたムキムキマッチョマンならいざ知らず、フツーに生活してる青年が畳1枚を跳ね上げることなんてできゃしないんですッ!

なので、相方の地獄の亡者(古田さんっていう男の人)と一緒に、「よっこらせ」っていう感じでゆっくりと畳を横にずらし、モソモソと床下からはい出していくことしかできませんでした。

ちなみに、この時に地獄の亡者として相方を組んだ古田さんは、かつて新宿のハンバーガ屋さんで一緒に働いていたメガネボクサーを彷彿とさせる雰囲気がありました。

※この時のエピソード


古田さんは青年と同い年くらいの年齢で、決して美形とは言えませんでしたが、メガネをかけた好青年という感じでした。それでいて、異様なオーラをまとってもいました。でないと、こんな劇に出演したりはしませんよね?

実は古田さんについては、ちょっとしたエピソードもあるのですが、またいずれ♪

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