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大阪見物かつ物件を探す

青年はトラックを降りて、しばらく近所を歩き回りました。ところが、ここがどこなのかサッパリわかりません。

そこで、道を歩いている人に尋ねました。

「すみませ~ん!最寄りの駅ってどこですか~?」

すると、親切な通行人が一番近くの駅までの道順を教えてくれました。

道順通り歩いていくと、駅まで到着しました。ここで青年は初めて、立っている場所が大阪の一部だというコトを知りました。

「大阪か~、東京までまだ結構あるな。あんまり距離は稼げなかったけど、さすがにここからまたサービスエリアを見つけてヒッチハイクする気にはなれないな…」

そんな風に独り言をつぶやきました。

それから、ふと思いつきます。

「いや、待てよ。もしかしたら、これも何かの運命かもしれない。東京まで行くのはやめにして、ここに住みつくか?」

そう、青年は家から脱出することが目的であり、必ずしも東京で暮らす必要などなかったのです。作家としての経験を積むためなら、どこに住んでもよいことになります。

とりあえず「梅田」という駅まで行けばいいということがわかりました。

「この梅田というのが、大阪駅のことなのかな?変なの。名前が2つあるだなんて。まあ、福岡と博多の関係みたいなものなのだろう」と勝手に納得しました。


ここで青年は、思いつきます。

「せっかくなので大阪城というのも見てみよう。物件はその辺りで探せばいいや」

そうして、一度梅田まで行き、大勢の人が行き交う中を歩いて電車を乗り換えて、大阪城までたどり着きました。お城の周辺は、平日のせいか人はまばらです。

大阪城を眺め、ブラブラと周りを歩き回るとすぐに飽きてきました。そうして、近くに不動産屋を見つけて、物件の張り紙を眺めて回りました。

「フムフム。なるほど。アチャ~」

青年は、家賃を確認すると、思ったよりもずっと高い金額だというコトがわかりました。それに加えて、敷金・礼金というのがかかるらしく、相当な金額になるのです。

「これだったら、東京に住んでもあまり変わらないんじゃないだろうか?」

…というわけで、当初の予定通り東京に住むことに決めました。ここで大阪に住みついていたら、きっとまた別の人生、別の運命が待っていたのでしょうね。

でも、青年はその道を選択しなかったので、そっちの可能性は永遠に失われてしまいました。

         *

それから、青年はJRの鈍行を乗り継いで東京まで向かいます。

大阪を出発したのが、お昼過ぎでしたので、ギリギリその日の夜には東京駅に到着しました。確か夜の11時くらいだったと思います。

その日は「野宿する!」と決めていましたので、JRの山手線に乗って代々木公園に向かいました。あとから考えると、別に日比谷公園でもよかったんですけどね。そっちの方が近かったし。

でも、青年は物を知らなかったので、「野宿するなら代々木公園だろう!」と決めつけてしまっていました。これも、1つの固定観念ですね。

さすがに大金の入ったカバンをそのまま持ち歩くわけにもいかないので、駅のコインロッカーに入れて鍵を閉めると、深夜の代々木公園を散歩し、手ごろな寝床を探し始めました。

前方を見ると、ちょうどいい大きさの木があります。なんという名前の木か知りませんでしたが、真ん中が地面になっていて、周りを何本かの木が覆っていて、周囲から見えない場所で眠ることができそうです。

「おじゃましま~す」といって、枝葉をかき分けて中に入ると、そこには先客がいました。

きっと、地元のホームレスなのでしょう。

「おじゃましました~」と言って、青年は出ていきました。

「せっかくよさげな寝床を発見したのに。世の中、そんなに甘くはないか…」

と、青年は世間の厳しさを知りました。

そんなわけで、その夜は一睡もできずに代々木公園をブラブラし、夜を明かすしかありませんでした。

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。