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「僕の改革 世界の改革」 第13夜(第2幕 19 ~ 20)

ー19ー

それから、僕はリンと学生服の隊員を連れて、大きなやる気を持った人たちの所へ会いに行くことにした。
リンはともかくとして、学生服の彼はとても行くのを嫌がった。
それを…
「ピクニックみたいなものよ。たまには外にでも出て気分転換でもしないと、気が滅入って仕方がないでしょ!」
そう言って、リンが無理矢理連れ出したのだった。

大木さんに調べてもらった限りでは『大きなやる気を持った人物』は、街から電車に揺られて2時間。バスでさらに30分の位置にいるそうだ。
そこから先は携帯用のやる気レーダーに頼って欲しいということだった。

電車やバスを乗り継いだせいか、リンはとてもカリカリしている。
「まったく、なんでこんなのが入って来たのよ!それも私が留守の間に!」
「仕方がないだろう…それに、最初に誘ったのは僕らの方なんだから」と、僕。
「そうだ。隊長さんの言う通りだ。そんなに嫌なら、今日だって連れ出さなきゃいいのにさ」
学生服君も大木さんに習って、僕のコトを『隊長さん』と呼ぶ。
「なんですって!」
「ナンダよ。やるのか?」
「まあまあ、2人とも。同じ隊の仲間じゃないか」
そう言って、僕は2人をなだめにかかる。
しかし、2人とも全く聞く耳を持たない。
「あんたね、やる気ないにもほどがあるわよ」
「なんのコトだよ」
「さっきから見てたら、タラタラタラタラ歩いて!私、そういうやる気のない態度見てたら、イライラしてくるんのよ!」
「悪かったね。これがオイラのウォーキングスタイルなものなんでね」
「大体、あんた部屋の中でも、グ~タラグ~タラしてばかりで、やる気のカケラも感じられないのよ!」
「まあまあ…せっかく外に出たんだし、気分よく歩いていこうよ♪」と、僕はなだめる。
どうして僕がこんなコトをしなければならないんだ?僕は保育園の先生か?

そんなやり取りをしながらも、ようやく目的の場所に到着した。
新しいやる気レーダーが指し示した先には、1人の老人が座っていた。


ー20ー

2人が黙りこくっていることもあって、僕が代表して老人に話しかける。
「おじいさん、何をやっているんですか?」
「化石を掘っているんじゃよ」
「化石?それが、おじいさんのやる気の原因ですか?」
「やる気?まあ、そうじゃのう。やる気というか、生きていく気力とでもいうか、そういうモノの元にはなっておるのう」
「実はですね…僕らは、おじいさんのやる気を頼ってここまで来たんです。おじいさん、僕らに力を貸してくれませんか?」
そうして、僕はジックリと時間をかけて、これまでの経緯を説明した。

「フ~ム…なるほどな。ワシは、さしずめ『やる気じいさん』といったところか」
「そんな…いや、そうかも知れませんね」と、僕も同意する。
「じゃがのう…もしも、世界がそれを望んでおるのなら、それは仕方のないコトなのかも知れんぞ」
「え?どういうことですか?」
そう言って、リンが話に入ってくる。
「ワシは、ここに生産性を感じておる」
「生産性?」
「そうじゃ、言い換えれば、それは物作りというコトじゃのう」
「物作り…」
「純粋な意味での『物作り』…それができなくなった時、世界は終わるんじゃないかのう」
「そして、世界は今、それを望んでいると?」と、僕は尋ねる。
「そうじゃ」
「人々が生きていく気力を失ったのも、そこに原因があるということですか?」
「ワシはそう思うがのう」
「じゃあ、このまま世界は滅びるしかないっていうのか!」
たまらず学生服君も口を出す。
「そうは言っておらん…現に、こうして気力を失わずに生き残っている者たちもおるじゃろが。ワシは、こうして化石を掘り続ける。じゃから、滅びん。それが、どんなにくだらないモノだとしてもじゃ。ワシは自分の仕事に誇りを持っておるからのう」
「生産性・物作り・誇り…それが、大切なのかな?」と、僕はひとりごとのようにつぶやいた。


それから、僕らは延々とやる気じいさんと話を続けた。
途中、じいさんはコーヒーを入れてくれた。とてもおいしいコーヒーだった。

やる気じいさんが言うには…
世界は失ってしまったのだそうだ。ほんとうに大切な『何か』を。
人々はお金を稼ぐ為に、その何かを売り渡してしまった。お金の代わりに魂を失った。
それは、仕方がないことなのだろう。なぜなら、人は生きていかなければならない。現実に生きていくためにはお金も大切。それを理解した上で選択した人生なのだから。

そして、それと同じように「理解した上」で、その大切な『何か』を守り続けている人々もいる。そういった人々は滅ぶことはないだろう。
そして、自分もそういった人間の1人であるし、これからもあり続ける。たとえ、この世界が滅んだとしても、それでも…

それが、やる気じいさんの言葉だった。

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。