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物語と現実が交錯する時

さて、みなさん。ここから物語はさらに複雑になっていきます。覚悟はいいですか?

これまでのストーリーは、まだシンプルでした。よくある恋愛ストーリーの延長線上に過ぎません。確かに事態はややこしくなってきたし、心の底の深い部分まで到達してしまいました。それでも「こんがらがった糸」を解きほぐすことはできたんです。

でも、ここから先は違います。「真に複雑な物語」に突入していきます。


物語!

そう!この小説を完全に理解するためには「物語」の存在が欠かせません。

青年の頭の中には常に物語が存在していました。少年時代の地獄の日々を体験していたあの頃から。

たとえば、「世界で一番大切な人」「girl into the tower(塔の中の少女)」「ウェーブの髪の女性」「伝説の悪魔」など。

奇妙な偶然かもしれませんが、少年時代より心の世界に抱き続けてきた物語は長い時間をかけて現実化していきました。

それにより、青年はこんな風に考えるようになっていきます。

「そうか。世界にはまず物語が存在している。そうして、現実は物語に即してあとからついてくるものなんだ」と。

それは非常に危険な考え方でした。それと同時にとんでもなく大きな力となっていきます。

だって、そうでしょう?

この考え方を別の言い方に置き換えれば「夢はかなう!信じ続けていれば、いつか必ず!」ということになるのですから。


3月の31日前後、ある出来事が起こりました。そうして、それはあらかじめ青年の物語の中に記されていたものでした。

元々あった物語は、こうです。

遠い昔。現代よりも数百年も過去のお話です。舞台はファンタジーの世界。
ひとりの少年が厳しい戒律で知られる軍隊へと無理やり入隊させられました。少年はメキメキと能力を上げていき、類まれなる戦闘力を身につけます。
でも、この時点ではまだ「人として優秀な部類」に過ぎませんでした。
成長した少年は世界へと飛び出していき青年となり、「ある組織」に入ります。そこでも目覚ましい活躍を果たしますが、ルールを逸脱したやり方で成功しようとしたために、組織を追い出されてしまいます。
それ自体は別に構いませんでした。それよりも「世界で一番大切な人(名前はフィリア)」に裏切られたショックの方が大きかったからです。
そうして、青年は高い高い崖の上から身を投げ、深淵の底へと落ちていきました。
時を同じくして、ひとりの女性が組織に反発します。彼女の名はランシーヌ。伝説の悪魔につき従ったと言われる魔女の名です。
「なぜ、あの人が追い出されなければならないの?あの人は、世界のために真剣に戦ってたんです!判断を撤回してください!」と必死に食い下がりますが、その願いが聞き遂げられることはありませんでした。
深淵へと身を投げた青年は闇の力を身にまとい、崖の底から舞い戻ってきます。伝説の悪魔として覚醒したのです。けれども、戦意は喪失していました。
そうして、戦う意思を失ったマディリスは「世界にとって迷惑な存在」だとして、壺の中へと封印されてしまいました。
それを知ったランシーヌも自ら封じられることを望みます。ふたりは、別の壺の中に封印され、2つの壺は仲よく洞窟の中に安置されることになります。
数百年後…
宇宙の果てから隕石が到来し、洞窟は破壊されます。封印が解けたマディリスはランシーヌが封じられた壺をその場に残し、ひとり世界に復讐に出かけていくのでした。

この物語は、別の物語のラストシーンへとつながっていきます。全然関係ないお話の最後に、いきなり伝説の悪魔として登場してしまうのです。

※この時の物語のラストーシーン


実は、現実の世界でもこれと同じようなコトが起こっていました。

「世界を変えるため!」と称し、青年はボランティアとは全然関係のないセミナー講師のシノハラさんを呼び、講演会を開きます。
この会場を訪れていた保護司さんたちの逆鱗に触れ、話は法務省の監察官にも伝わって、青年は渋谷のボランティア団体を追い出されてしまいます。
あの人は、それを知って法務省に乗り込みます。「どうにか決定を取り消してください!あんなにみんなのためにがんばってた人を追い出すなんてありえません!」と女性監察官に懇願しますが、その訴えが聞き遂げられることはありませんでした。
青年は、あの人からその話を聞いて、感激しました。でも、ショックを受けているのは別のコトなのです。
「君がこっそり浜田君とふたりで会っていることの方がよっぽど心に大きな傷をつけているんだよ」
心の中でそう思いましたが、口には出しませんでした。それが青年なりのやさしさだったからです。
結果、彼は深淵の底へと身を投げることになります…

ここまで読んだ読者のみなさん、何かおかしいと思いません?

「現実と空想をごちゃ混ぜにしている青年の頭がおかしい」と思われるのはもっともですが、その点は置いておいて、物語と現実を比べた時に1つの矛盾点が生じるとは思いませんか?

物語の世界で、「世界で一番大切な人(フィリアと呼ばれていた)」と「魔女ランシーヌ」は別の存在なのです。

ところが、現実の世界では同じ人が演じてしまっているのです。彼女は、物語の世界の登場人物を2役兼ねていたのでしょうか?

「『あの人』は、『フィリア』と『ランシーヌ』どっちなの?」

考えれば考えるほど、青年の頭は混乱していきました…

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。