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エッセイ コピーキャット

 忘れ物の多い子供だった。いつが、ということもなく、ずっと多かった。よく考えると今でも多い。

 教科書を忘れるのは日常茶飯事。なくてもボーッと聞いていればいい、というなぞの腹がすわってしまって、大抵の教科はなんとかなったが、英語だけは違った。毎回、誰かがあてられて、音読させられるのだ。

 英語だけは、けして教科書を忘れないよう注意すればいい。その通りだ。しかし注意するだけで忘れなくなるような生半可な忘れ物常習犯じゃない。忘れるものは忘れる。そこで、書き写すことにした。

 教科書を忘れたことに気がついた時点で、その日の授業分の本文を、休み時間中に必死で書き写す。

 学生時代の休み時間のほとんどを、この謎の写経に費やしたおかげで、わたしは文字を書き写すのがものすごく早い。この早さへの自信がさらに災いして、わたしは何かを『書き写す』ことへの抵抗が、たぶん人より低い。すぐ手で書き写そうとする。

 例えば、卒業論文。
 学内に安価なコピー機があったにもかかわらず、わたしは資料を手で写して集めていた。コピーももちろん使ってはいるが、結局、手で写すのだ。
 資料を読む→必要箇所をコピー→コピーを読み直す→抽出してノートに書き写す。→ノートを読む→いるところだけ、別の紙に書き写す→(繰り返し)
 このような流れであったと思う。
 このため、論文作成の時間のほとんどは、『何かを書き写している時間』で、毎日、手の甲が半分に割れちゃうんじゃないかと思うくらい痛かったのをよく覚えている。

 他にも、高校演劇で、初めて台本を書かなくてはいけなくなった時、初めてお礼の手紙を書かなくちゃいけなくなった時、結婚式のスピーチの原稿を頼まれた時、何かを作り上げるために、わたしは、ただもう、みつけたお手本をひたすらに書き写す。もう習慣になってしまっている。

 わたしがnoteでショートショートを書き始めたときも、どうしたらいいかまったくわからなかった。やっぱり、お手本を探した。他の全てのことでそうするように。で、完全にデジタル情報なくせに、わたしはそれを書き写して覚えた。

 その、書き写し先が、最近長くおやすみをされた。noteはSNSだ。ここにのっている全てのものは、いつだっていきなり消えて、戻ってこなかったりする。少なくともわたしは、いつもそう思っている。

 だから、今のうちに勉強しなおそうと思った。
 つまり、書き写したのである。

 もし、『わたしがお手本にさせていただいた先』がどこかわかった方は、「書き写した」という事実に若干ひくと思う。一つ一つは短いが、量が多いのだ。わたしも途中で後悔したくらい。

 でも、残念ながら、わたしはこれ以外に、何かを学習する方法を知らない。
 今月の、残りの平日を、この学習の成果を試す場所にしたいと思う。上手にできるかどうかわからないけど。

 ここにいてくださってありがとうございます。
 あなたは、わたしの、ずっとお手本でした。

 吸収した成果を試してみたいと思います。できてないかもしれない。でも、今の精一杯です。

 よろしく。

エッセイ No.009

 ……というわけで、明日から「COLD BREW(水出しコーヒー)」というサブタイトルで10+1本、ショートショートを書こうと思います。7月12日(火)から7月27日(水)までの平日にのせる予定です。
 お手本の方がよく使うテーマやモチーフを10個選んで、それをもとに400字制限でお話を書きます。最後の1個はフリー課題です。多分ね。
 これらが吸収できたかどうかは、ものすごく個人的な、わたしの中の話なので、読んでくださる方がいらっしゃいましたら、どうか事情にかかわらず読んで、できることなら、楽しんでいただけたら、とても嬉しいです。

 コピーキャットの本領をお見せいたしますよ!
(ちなみに、まだ一本も書けてないです!)

※この企画はお手本にさせていただいた方ご本人に一応のご連絡をさせていただいてから始めています。ご本人と、たくさんのファンの方の失礼にならないよう、作っていきたいです。