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エッセイ 贅沢【ねこの悪だくみ2024年6月】

 毎月、月初めに計画などを書いています。
 達成できたりできなかったりします。悪しからず。

 本棚を買いました。持っていなかったのか、という感じですが、持っていなかったというのが正直なところです。
 めちゃくちゃ狭い家に住んでいるわけではないんですが、ほとんど家具のない空間に住んでおりまして、収納は作り付けの棚などで済ませていました。はみ出る分は持たない。服は一週間分、食器は一対(含来客用)、布団は二組(含来客用)予備もストックもなしです。「管理ができない」という理由もありますが、もう一つは、お恥ずかしい話なんですが、これがね、自分が死んだ時のためだったりしたんです。しっかりした身寄りがないので、後で片付ける羽目になった誰かが大変にならないように、家具を持たないことにしてたんですよね。

 最近、調べ物がしたいなあ、ということがいくつかあって、やり始めたはいいけれど、狭い棚ではものすごく不便なんです。参考図書を全部書き写してストックしなくちゃいけない。スキャンだと並べて見えなくて不便だし、コピーだとコピー用紙の整理が大変です。時間がものすごくかかります。

 というわけで本棚です。いいね。本を並べて置いておいていいなんて、なんて贅沢なんだろう。資料の比較も格段に楽になるでしょう。本棚を発明した人はきっと天才です。

 調べ物にしてもそう。私は昔から、気になるものを調べるのが好きでした。「それが何の役に立つの?」とうんざりするほど聞かされながら、いつの間にか手元に溜まって言ってしまう謎の本たちをいつもいつも後ろめたく思っていたんです。だから、すぐ手放してしまっていた。(本は読まれる人の手元にあるのが一番いい、と思っているせいでもあります)

 でも、なんかね、ちょっとの間、やってもいいことにしました。本棚置いて、好きなだけ調べ物して。我慢してても、多分これから先「やってもいいよ」なんて許可が誰かから降りるような日は来ないだろうから。それはきっと、小さい頃の自分が「大人になったらこうなるらしい」と思っていたことが、何ひとつ来ることはなかったのに似ています。解体しやすいよう、小さな棚を積み重ねる式の本棚にしました。元気なうちに片付けるから、許してね。(片付ける羽目になるとしたら遠方の甥(現在小学生)だと踏んでいます)

 今月の予定の話など致しましょうか。

 今月もSAND BOX1099を継続する予定です。音声を水上洋甫さん、イラストを悠紀【丸大商店】さんにお願いしています。全編、「遠野物語」のパスティーシュになる予定です。というのも、このお二方、どちらも東北の方なんです。なかなか贅沢なことをしているでしょう。いいだろう。えっへん。

 note外のイベントとしては6月16日に盛岡で開催される「文学フリマ岩手」に参加する予定です。今年は終了後寝込まないのが目標ですね。


 以前、雑誌の映画評で青春映画に対して「今この時が幸せでないのなら、多分僕らは一生幸福にはなれない」という感想が寄せられているのを見たことがあります。「青春が一番幸せな時」という意味ではありません。人生の、その時々の今を能動的に幸福に生きられない人に、天から降るような「いつかの幸福」なんて来ないんだろうな、というような文脈であったように記憶しています。(そう。この雑誌は今手元にないのであります)私はこれは、正しいのではないかと思う。

 やりたいことがあるんだ。だからもう少し続けます。何の役に立つとかは言えないんだけど。おばさんは贅沢者なんです。ごめんね。

エッセイ No.117