140字小説集 三角定規はなぜ2つ(2023年1月のまねきねこ座)
Twitterで毎月開催されている140字小説コンテスト「月々の星々」に参加しています。1月の文字は「定」。本文のどこかに「定」の漢字をいれます。応募数はひとり5本まで。1月の星々の参加記録です。
No.1
「指定席」
同じ店に通い続けてしまうほうの人間です。習慣づくともう、ずっと飽きない。
常連、とお店の方が認識してくださって、いつも座る席を早く片付けてくださる、なんてことも起こったりします。ちょっと恥ずかしい。
でも、それって、自分で作った居場所なんだと思います。実家にいる頃、学生だった頃は与えらた居場所で安全暮らしていたけれど、常連席は自分で作った小さな居場所。ほんのいっとき、椅子一個分だけなんだけど。
No.2
「平行線」
小学生の頃「三角定規ってなんで2個あるんだろう」と思っていました。ただでさえ忘れ物が多い私は持ち物の数を最小限にすることに日夜心血を注いでいたのです。そもそも彼らは筆箱に入らないのです。すぐどっかいってしまう。これ持ってくる意味あるの。せめて一個減らしてほしい。
ある日、先生が「三角定規を二個組み合わせると平行線がひける」とおっしゃいました。なんと。おっしゃるとおり美しくひけます。しかし。しかし私は思ったのです。「分度器と定規を組み合わせてもひける」
かくして三角定規は私のお道具箱から消えました。定規と分度器があればいい。家にしばらくおいてありましたが、ポケットにいれて移動している最中しゃがんで割ってしまいました。鋭い角がふとももに突き刺さってとても痛かったです。ごめんね、三角定規。
No.3
「季節限定」
近所にスターバックスがありまして、通りがかるたびに「季節限定」の文字にそわそわします。お腹が冷えるので食べないのに。
「あれ食べた?」「限定商品!」などと言いながら写真をとってはSNSにアップする若い子達を横目に見て(誰かとお茶を飲む今を大事にしなよう……)とつい思ってしまいます。それからいつもおんなじブラックコーヒーを頼む自分を鑑みて、ああ、でも季節を一番楽しんでるのはあの子達かもなあ、なんて苦笑いしたりするんです。
No.4
「定時起床」
『モーニングルーチン』を見るのが好きです。他の方の生活スタイルに興味があるんです。(ちょっと気持ち悪いんですけど)少しでも書いたりする時間が欲しくていつも自分の時間割についてうんうん考えています。何かいい方法はないものか。
勤め人の悲しさで帰宅すると頭がふらふらです。そこで早朝に書き物をする習慣付をしました。同僚に起床時間を聞かれると、たいてい相手が怪訝な顔をします。そんなに早く起きてどうするの? 無理してない? 楽しいのそれ?
どうだろう。わかんないけど。
でも、明日も早く起きるんです。
No.5
「定点観測」
集合住宅に住み着いた猫が、みんなに違う名前で呼ばれていたという記事を読んだことがあって、なんか、いいなそれと思いました。
散歩コースの河川敷にも野良猫がいて、早朝に餌をやりにくるおじさんがいます。
「ミケ!」「ノラ!」
叫んでいるのですぐわかります。にゃあ、とさっきまでベンチでおばあちゃんになでられていた猫が立ち上がっておじさんのもとに走っていって、「ああ、あれがミケなんだな」って思うんです。
月々の星々への応募作品はnoteでも読めます。
いろんな方が参加しているので、興味のある方はぜひのぞいてみてくださいね。