社長のリシャールを飲み干す

酒の強い弱い関係なく飛ばすジゴ郎は、当然のように毎日潰れる。

自宅マンションに帰ることもなく、店泊をするのが当たり前となり店にはマイ枕まで用意してあった。

その日はたまたま社長に叱咤を受け、気分が悪かった。

そして不味い酒を飲み、ふて寝(5時間)をすると 鍵係の南がいつものようにジゴ郎の帰りを待ってふて寝していた。

南も先日は飲んだようでイビキをかきながら寝ていた。

ジゴ郎は南をたたき起こし、まだ寝惚けて状況の掴めない男に対し

 「おい、ここの社長むかつかね??社長のボトル棚どこ?」

 と尋ねると何の躊躇もなく彼はその場所を教えてくれた。


南にもジゴ郎にそれを教えたらどうなるか分かっていたはずなのに。

ボトル棚につくと、早速ジゴ郎のお目当てのボトルが見つかった。

お目当てはもちのろん

リシャールだ。


このリシャールは350万円以上もする、ホストの最高級ボトルで新人ホストからしたらあこがれのボトルである。

そのリシャールを手に取ると、とりあえずストレートで味見。

酒は金の為にしか飲まないジゴ郎にとって酒の味など分かるわけもなく、一言。

「うん、ブランデー」


「南も飲んでみるか?」


南は飲みたそうではなかった。 

しかし、一杯飲ませるともうエンジンがかかってしまったようで

「もう一杯。」 


そうして見る見るうちにボトルは空となり ものの20分で空けてしまったのである。


この状態になったら二人は無敵状態。


外に出てナンパは当たり前。

バッティングセンターであえて120キロの球に裸で当たったり、存分に楽しんだがその楽しさもあっけなく終止符を打つこととなったのである。

南が歌舞伎町に放置されていたボロい自転車に跨り、ふざけて危険運転をしているところを巡回中のパトカーに不審に思われ御用となった。


それ以降南を見かけていない。


空のリシャールにはウーロン茶を入れたのだが、ボトル棚のライトアップのせいで信じられないほど色が薄く見えて100%バレるので午後の紅茶を投入。

無事任務遂行。

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